アナトミカ | Room Style Store

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2023/08/07 01:24


本格紳士靴の品揃えならロンドンが一番。そのロンドンに入国したのに並いる靴屋には目もくれずパリへ移動。そしてパリでもフランスの誇るJ.M.ウェストンやジョンロブパリ(製造はイギリス)で買うでもない。靴好きの自分としては異例だが今回パリで訪れるべき店はアナトミカと決めていた。


アナトミカといえばモディファイドラストのオールデンが有名。医療用矯正靴の為に開発された経緯をもつそのラストはアーチフィットで足をホールドする一方つま先や踵はゆとりをもたせている。足に優しいフィットはファンも多く、最近足を怪我して歩けない時期が続いた自分も出戻り組だ。


そこで今回はアナトミカパリ別注モディファイドラストオールデンにスポットを当ててみたい。

※扉写真はアナトミカパリ店の品揃え

(1) 最寄駅
最寄駅はメトロのオテル•ド•ヴィル。地上に出ると立派なパリ市庁舎が出迎えてくれる。2024パリオリンピックに向けて五輪マークも設置済み。1870年に再建された建物だが風格は十分、日本の庁舎だとこうはいかないだろう。ここは4区、お洒落なマレ地区の中心は観光客も多い。

(2) カフェで寛ぐ人々
カフェで寛ぐ人々も心なしかお洒落だ。奥の通り中程に赤い色の店が小さく見える。そこがアナトミカだ。小さな店に厳選されたアイテムが並ぶ様はかつて足繁く通ったミウラアンドサンズやビームスを思い出させる。オープンは1994年とのこと。来年は30周年の節目を迎えることになる。

(3) アナトミカ
今回パリ訪問のメイン、アナトミカの店構え。大抵のブティックは日曜日クローズだがアナトミカは月〜土曜は11時から19時まで、なんと日曜日も15時から19時まで開いている。エブリデイオープンはアナトミカファンには嬉しい対応、店が閉まっていて買い逃すなんてこともない。

(4) AldenとBirkenstock
アナトミカが扱う靴はオールデン(メインはモディファイドラスト)とビルケンシュトックの2種類。靴好きなら靴に対する店の考え方が想像できるだろう。どちらも履き心地に定評がある。店を訪問した時もネットで調べたのだろうか、ビルケンシュトック目当ての客が次々とやってきた。

(5) 採寸
店員さんに「モディファイドラストのオールデンを考えています」と伝えると「普段オールデンのサイズは?」と聞かれ、「バリーで8.5-Dです。」と答えた。靴に興味のない人には「ちょっとなに言ってるか分からない」と思う。すると目の前に見慣れた計測器が出てきた。

(6) 試着(その1)
さて計測結果はというと「アナトミカが勧めるフィットは9-Cです」と出た。「8.5-Dで探しますか?」と聞かれたので「いえ、アナトミカのフィットでお願いします」と返答。在庫チェックの結果「おお〜良いブーツが一型残ってます」と出してきた。皺を入れぬよう注意しながら早速試し履き。


(7) 試着(その2)
紐を結んで貰いながら「こちらはシガーコードバンになります」と嬉しい言葉が…。パリINしてから宿のチェックイントラブルや飼い犬の不始末など嫌な思いもいくつかあった。怪我をした足も心なしか旅の疲れで痛みが出てる。そんな下がり気味の気分が一気に上昇。苦楽はいつも隣り合わせだ。

(8) 反対側の足
右足の次は左足。因みに件のデバイスによる計測結果では右足がやや小さめらしい。左に合わせて9-Cを選んだので今履いている左がフィットすればOKだ。それにしても土踏まずの快適さよ…アーチフィットのおかげかハイアーチ気味の足が隙間なくピタリと収まっている感覚がある。

(9) 履き心地
両方履いて立ってみた図。昔履いていたカーフのジャコブソンモデル(Vチップ)は「ださカッコイイ」靴のようなイメージがあったが今時のモディファイドラストはクールだ。ミリタリーブーツ風のイケメンな面持ちに「これ買います」とカードとパスポートを出して免税の手続きへ突入。

(10) ショップバッグ
店を出たら地下鉄でアパートへ。ヴィトンやエルメスの紙袋は目立ちやすいがアナトミカは目立たない。寧ろ荷物に気を取られて貴重品が疎かになる方が怖い。地下鉄が不安でタクシーに乗ったら酷い運転手だったという声も多い。街の中や人通りの少ない場所はロンドンより一段と緊張する。

(11) 靴クリームのサービス
サービスで付けてくれたオールデン純正のクリーム。コードバン専用ではないが「濃茶と薄茶のどちらにしますか?」と聞かれた。シガーコードバン本来の色ならブラウンだろうか。ただ今後色が抜けることを考えて「薄茶のタンを」お願いした。きめ細やかな接客に満足の1日だった。

(12) 箱の中を覗く
箱を開けて中を点検。自宅のシュークローゼットにはブーツが沢山並んでいる。いくら履き心地が足に優しいとはいえ更に買い足すとは…インスタグラムで知り合ったNYの友人はThat’s how it goes.(世の中はそういうもの)と良き理解者だ。ともあれ貴重な1足に出会えたことに祝杯を上げた。

(14) ピエールに会いにいく
アナトミカでブーツを買った時に日本人の店員さんから「8月からはオーナーのピエールが店番に立つ」と聞いてバリを離れる前日再び訪問。運良く本人によるフィッテングも体験することになった。クレバリーの靴を見て褒めるも「小さすぎます」と言いながら例の計測器で再び採寸が始まった。

(15) 9.5-Cと9-Dを探す。
採寸結果は9.5-Cか9-D。在庫帳から該当する靴を調べるピエール。昔ジョンロブ(パリ)で靴を注文したら「1足目が小さかったので次は大きくと伝えたたらもっと小さくて履けない靴が出来てきた」そうだ。既成靴から誂え靴まで様々な経験を経てモディファイドラストに到達したのだろう。

(17) 在庫あり
こちらが在庫ありの3型。価格は1040€と昔よりグッと値段が上がっている。尤も1€を160円で換算するとコンビニのサンドゥイッチが1つ900円だから飲食に関しては日本の4〜5倍の高物価。それに比べれば靴の値段は高関税のかかる日本より比較的安定している方かもしれない。

(18) 試着(左足)
甲高の自分には外羽根が開き気味。計測器では甲のフィットは測れないからね…と話すピエール。前回のブーツ購入時と違ってピエールは大きめの左足から試着を始める。フィッターのやり方は色々…と最初に対応した店員を気遣う姿勢はオーナーならでは。さて9.5-Cの履き心地や如何に。

(19) 試着(右足)
続いて右足を入れるとプシュッといい感じで空気が抜けていく。丸みのある独特のつま先とくびれたウェストに大きめの踵…朴訥とした外観はヤコブソンモデルを履いていた昔を思い出させる。当時は黒のカーフ素材だったが今なら自分だけの皺が入るコードバンを履きこなしてみたい。

(20) 丸紐とポリッシュ
「丸紐も入れておくよ」とカラー8のワックスと一緒に箱にしまうピエール。免税手続きを待つ間にお年を召したご婦人がビルケンシュトックを求めて入店。真摯に接客するピエールの姿が印象に残る。その様子は老若男女を問わず様々な客が来るアナトミカパリ店の魅力を映し出していた。

アキレス腱を痛めて歩けない時期が続いた6月。腫れが引くとビーチサンダルからナイキのワッフル、ニューバランスと履ける靴も進化したが旅行直前まで革靴を履ける状態になかった。使わないまま筋肉が退化して関節も動きが鈍ったのか今回の旅行でも時々足が痛むし何より疲れやすい。

元々ハイアーチ気味の足に怪我したことでアキレス腱を庇うように踵で着地、腱を伸ばさぬよう歩いていたらすっかりバランスを崩したようだ。革靴とは無縁の世界も考えた矢先に思い出したのがオールデンのフットバランスシステム、ピエールが見出したモディファイドラストの靴だった。

さてこの後はジョンロブロンドンで注文革靴の最終フィッテングが控えている。足に優しい靴を知り尽くしたピエールも認めるジョンロブロンドンではどんなフィッティングが待っているのだろう。

By Jun@ Room Style Store