パリから地方へ(ランス) | Room Style Store

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2023/08/19 04:04


パリ発日帰り旅行人気ランキングの1位はだれもが納得のモン•サン•ミッシェルだがNHKの「旅するためのフランス語」講座でも紹介されたランスはベスト10の中で6位と中々の人気スポットだ。スペルはReims…どう見てもランスとは読めないがランスと発音する。高速鉄道でパリからわずか45分、肩掛けバッグ1つで行ける気軽さが良い。

今回パリに長逗留すると決めた時から予定に入れたランスの日帰り観光。何しろシャンパーニュ地方の中心地、ヴーヴクリコやクリュグにモエなど名高いシャンパン製造者がカーヴを構える街だ。街中のカフェで昼から気軽にグラスシャンパンを楽しむ様子がNHKの講座で紹介された時から「泡もの好き」の行き先は決まったも同然だった。

そこで今回はパリを離れてランスを紹介してみたい。

※扉写真はランス庁舎のサインボード

(1) パリ東駅
冒頭でも書いたがパリからランスに行くならTGV(高速鉄道)が便利。SNCF(フランス国鉄)のサイトでチケットは往復予約済。窓口で並ぶ必要はないが出発間近にならないと何番ホームから出発するのか分からない。番線案内開始まで駅のカフェで休憩。行き交う人々をのんびり眺めるのも悪くない。

(2) ホームへ向かう
番線表示が出たので移動。ランス行きは一番端の30番線だ。改札口で電子チケットのバーコードを読ませてホームに入ると隣にはドイツ高速鉄道ICEが入線中。他所の国の鉄道が乗り入れる様子は日本じゃ味わえないもの、鉄道好きの心が躍る。パリ~フランクフルト間は僅か3時間50分の所要時間とのこと。

(3) 穀倉地帯を行く
パリを出発したTGVはジャガイモ畑の広がる丘陵地帯を軽快に飛ばす。日本は米だがフランス人の主食はパン…と思いきや実はジャガイモという声がある。お隣イギリスも林望先生の著書『イギリスは愉快だ』に「主食という考え方はないが敢えて言うならジャガイモか…」という一文があった。

(4) ランス中央駅
ほどなくランスに到着…一斉に押し寄せる乗客でホームの階段はラッシュアワーの新宿みたいだ。フランスでもバカンスに入り各地で混雑していると昨日TV番組でやっていた。キャリー持ちはランス泊りでリュック背負いは日帰りか…なんて想像しつつ流れに乗るうちいつの間にか駅の外へ出ていた。

(5) フジタ礼拝堂へ
昼に一旦クローズするというので一番遠いフジタ礼拝堂を最初に訪問。写真が日本人画家としてパリで活躍した藤田嗣治(洗礼名はレオナールフジタ)が壁画やステンドグラスをはじめ全てを設計したロマネスク様式の礼拝堂。嗣治氏と君代夫人の遺骨が眠るこの教会はシャンパン会社G.H.マムの敷地内にある。

(6) シャンパンカーヴ①
こちらはフジタ礼拝堂の向かいにあるG.H.マム社のカーヴ。車で訪問したらまずは見学、その後試飲してシャンパンを土産に再び運転して帰る段取りのようだ…「え~それ飲酒運転じゃん!」と思ったら日本の酒気帯びは0.13mgだがフランスは0.25㎎、ワイン1杯程度なら飲酒運転にあたらないとか。

(7) シャンパンカーヴ②
細い通りを入ると右手にもシャンパン工場がある。かの有名なクリュグのカーヴだ。楽天で「ビンテージシャンパン」で検索、値段の高い順に並べるとクリュグが99万円でトップ、かの有名なドンペリは55万でその次だった。残念ながらクリュグは一般旅行客向けのカーヴ見学は受け付けていない。

(8) ランス大聖堂(1)
フジタ礼拝堂から駅の方へ戻る途中にあるランス観光のハイライトがノートルダム大聖堂。歩いて行くとちょうどフライングバットレス(飛び梁)が整然と並ぶ大聖堂の横に到達する。革命や第一次世界大戦で壊滅的な打撃を受けたこの教会も1938年に竣工、現在も一部修復が続いている。

(9) ランス大聖堂(2) 
正面から見た写真。日本人にはパリのノートルダム大聖堂が有名だが高さではランスが3位、長さではランスが1位と見応えは充分だ。2019年の火災以来見学中止が続くパリのノートルダム大聖堂よりランスの大聖堂の方が①内部見学ができる②空いている③写真映えがする…と3拍子揃っている。

(10) 微笑みの天使
”微笑みの天使”(右側)の出迎えを受けて中に入る。歴代の国王(25人)が戴冠式を行ったというランスの大聖堂。最近では第二次世界大戦中の1940年からフランスを占領したのち1945年に降伏したドイツとの和解の場として1962年に当時のドゴール大統領とアデナウアー首相が式典を行った場所でもある。

(11) 中に入る
長さで第1位を誇るランスの大聖堂。中に入るとその奥行きが実感できる。特徴的なバラ窓やステンドグラス、ひんやりとした堂内にパイプオルガンの音色が響いていた。80年代は冷房が普及していなかった夏のフランス、日射病になりかけてパリ郊外シャルトルの大聖堂で涼んだことを思い出す。40年以上前の話だ。

(12) シャガール作
ランス大聖堂の目玉といえばシャガールによる三翼のステンドグラス。13世紀に旧約聖書と新約聖書、更にランスゆかりの聖者や賢者を題材にシャガールが地元のステンドグラス職人と共に作り上げた傑作だ。左翼は旧約聖書が、正面はイエスキリストが、右翼は史実を中心にジャンヌダルクなどが描かれている。

(13) 祭壇
歴代の国王が戴冠式を行ったランスの大聖堂。ここで聖なる王としてフランスに君臨することが許されたとある。中でも1337年11月1日に始まったフランスとイギリスとの百年戦争でジャンヌダルクとフランス軍の活躍によりイングランド連合軍を撤退させたシャルル7世が戴冠式を行った話が有名だ。

(14) パイプオルガン
教会内横の小さなパイプオルガン。今も実際に使われているそうだ。パイプオルガンの歴史は古く何と紀元前3世紀のギリシャまで遡る。鍵盤を弾くとパイプに空気が送られて音が出る仕組みらしい。常に同じ音を安定して出し続けられるのが特徴、都内では新宿区の東京オペラシティが名高い。

【参考資料①】
ゴシック様式の特徴は「より高く、より光を」だそうだ。天井は先の尖ったアーチで高さを強調、視線を上に向けさせる効果がある。頂上部分でクロスしたアーチの梁にはリブが付けられ横からの採光によって印影がはっきりと浮かび上がる。遥か先まで続く様は見る者に畏敬の念を抱かせる。

(15) ランチ
大聖堂見学の後は日帰りツアーのメイン、ランチタイムだ。さっそくカフェ飯とグラスシャンパンを注文。パテのディッシュプレートと奥にはフォアグラのプレートも見える。頼んだグラスシャンパンは店のオリジナル。ボリューム満点のパテとチーズに付け合わせのサラダとポテトが食欲を満たしてくれる。

(16) 駅に戻る
ランチ後は目抜通りをぶらぶら駅に戻る。列車が着いたのか観光客で賑わっていた。この日の最高気温は23℃前後、相変わらずスマホには東京の情報「熱中症に注意」のプッシュ通信が入ってくる。この日のランスは晴れ間が広がると夏の日差しを感じたが湿度が低いのでとても過ごしやすかった。

(17) いこいの広場
駅前の公園は芝生が広がり手入れが行き届いている。晴れた空に高い雲、季節は既に秋の気配だ。緯度が高いだけに山火事や干ばつが続く南欧や連日真夏日の日本とはだいぶ違う。さて銅像の主はというとジャンバティストコルベール。ルイ14世の財務総監で政府と癒着していた金融業者を摘発、赤字解消に尽力した…とある。

(18) ウェストン新店舗
パリに戻ったらシャンゼリゼまで地下鉄で移動。帰りは歩いてアパートに戻ることにした。目当ては新店舗のJ.M.ウェストン本店。凱旋門を背に左側にあった旧店舗から数ブロック下った右側に移転していた。店に一歩踏み入れた途端、ドアマンや店員の視線が自分の履いている靴に集まるのが分かる。

(19) ソルド
この日も靴屋詣での定番、ジョージクレバリーのワニ革ローファーで突入。掴みは抜群、店員が「良い靴だね、どこの?」と聞くので「シュムジュール(誂え)、ジョージクレバリー」と答える。すかさずスマホで検索する店員…靴の素性が分かると態度もコロリと変わる。写真はSALE対象のモミ革180と641。

(20) 定番品
セール品を眺めた後は定番品をチェック。アリゲーターは4000€越えとさらにお値段アップ。リザードの方がお買い得感がある。1750€の定価から免税分15%が戻ると1487.5€。1€=160円として約238,000円。日本の価格が309,000円だから超物価高のパリで買ってもなお日本国内よりお得だ。

ランスの魅力は冒頭でも書いたがTGVでわずか45分で到着すること。しかも①シャンパンや美味しい料理がある②フランスの三大大聖堂の一つランスのノートルダム大聖堂を擁する③バカンスのシーズンでもパリのように混雑していない。パリから日帰りバスツアーもあるが片道だけで3時間はかかる。

そのTGVだが新幹線より車内は狭い。写真(2)からも分かると思うがボディ自体を小ぶりにしたためだろう。また乗り心地も進行方向と逆の席が半分あり方向転換できないのが気になる。区間によっては揺れも多い。とはいえ緑豊かな丘陵地帯を駆け抜ける車窓はトンネルの多い新幹線より開放感がある。

歳を取ったせいか昔のように一日毎に宿を変えて各地を転々とするより一か所に長期滞在、日帰りであちこちを巡る方が性に合う。さて次はどこを根城にしようか…

By Jun@Room Style Store