モディファイドオールデン(下巻) | Room Style Store

Blog

2023/10/16 16:05


数ある革靴の中でも「モディファイドオールデンしか履かない」という靴好き仲間がいる。そんな彼の悩みはシューツリー選び。脱いだ靴に残る湿気を取り除き、履き皺を伸ばして本来の形に戻す役割を担っているだけに靴に合わないツリーだと「型崩れしないか」と気がきでないらしい。

オールデンに限らず本格靴は「履いたまま放置すると履き皺が裂けたり湿気でカビや匂いが発生したりする」と彼は言う。履き皺を伸ばして反った革底を復元するなら軽量のプラスチックツリーでも良さそうだが「防湿・防カビ」には木製、それもレッドシダーのツリーが一番効果的だそうだ。

そこで今回はそんな彼のためにモディファイドオールデン用ツリーのベストバイを探そうと思う。

(1) モディファイドラストの特徴
上からは分からないモディファイドオールデンを底側から見た写真。バナナシェイプと呼ばれる内振りラストや絞り込まれたアーチにウェスト、幅広のつま先と踵や特製ラバーヒールなど他のオールデンと一目で違いが分かる。昔は履き心地は良いがデザインが今一つだったのに最近では見事に洗練されている。

(2) RESH発売モディファイドラスト専用ツリー(高級版)
モディファイドラスト専用ツリー探しのスタートはここから…アナトミカパリ推奨のオールデン純正を基準に検索するとRESHとノーザンプトンのスプリングライン社が共同で開発した英国製ツリーの評判が良い。素材はレッドシダーより上質なニス塗りメイプル。値段も高級に相応しい24,750円…残念ながら完売で買えず。

(3) RESH発売モデイファイド専用ツリー(普及版)
そこでRESHが追加販売したモデイファイドラスト専用ツリーがこちら。素材はレッドシダーで中国生産、しかも価格は9,800円とオールデン純正と変わらない。ようやく在庫切れから再入荷、ポチろうと思うもRESH開発品は全てDウィズ専用。アナトミカ別注のCウィズには合いそうもない…結局購入を断念。

(4) スレイプニルのツリーモディファイドラスト専用ではないが相性のいいツリーとしてスレイプニルを勧めるサイト(ブログお手入れレシピ)を発見。アッパーに掛かる圧を上手く逃がす先割れ型のつま先ながらも6,600円という低価格。オールデン純正で指摘された甲の厚み(高さ)も十分、これなら他の靴にも使えそうだ。

(5) 対応表
お手入れレシピではスレイプニルの対応表を掲載しているので参考になる。ところがアナトミカパリで買い求めたモディファイドオールデンの9-Cと9.5-Cは対応表に載っておらず。日本展開のモディファイドラストはDウィズが主流なのだろう。コスパの良いツリーだけに残念だったが購入は見送り…。

(6) 先割れ型を選ぶ
RESH開発のモディファイドラスト専用以外を探すとなると先が変形してCウイズのアッパー内部にフィットする先割れ型が候補になる。足の小指側が稼働するスレイプニルタイプ(左端)と先割れ二分割タイプ(中央と右側)を用意してみた。アナトミカパリ推しのオールデン純正に近いのは一番右になる。

(7) ツインチューブよりシングルチューブ
裏側にするとバナナシェイプのモディファイドラストに合うのは右側と判明。首振り機能のおかげでバナナシェイプのくの字形も難なくこなす。首振り機能のないシングルチューブ(中央)は無理に入れると靴が変形しかねない。ツインチューブ(左側)はくの字に変形できないのでモディファイドオールデンには不向きだ。

(8 モディファイドオールデンとの相性
オールデン純正によく似たツリーを試しにモディファイドオールデンに乗せてみた写真。後側(踵部分)は余るが前側(つま先部分)は内振りシェイプに沿っている。アナトミカでは「ツリーをつま先に入れたら最初に指で奥まで押し込んでから踵を入れるとよりフィットする」と説明していた。

(9) オールデン純正
こちらが基準となるオールデン純正ツリー。RESHやスレイプニルより寸足らずでボリューム不足に感じる。とはいえこれ一型でモディファイドからバリーやアバディーンなど様々なラストに対応し、靴のデザインもロングウイングからペニーローファーまでカバーするのだから無難な形もやむを得ない。

(10) オールデン純正と手持ちのツリー比較
オールデン純正とよく似た手持ちのレッドシダーツリーはロチェスター社のオリジナル。実はオールデン純正もこのロチェスター社が手掛けている。寸法や値段は違うが基本構造はほぼ同じ。オールデンのプレートが付いた純正(左)は踵が幅広く、ロチェスターオリジナル(右)はつま先部分が大きくて長い。

(11) 純正との違い
オールデン純正の課題である「甲部分の厚み」を解消したのがロチェスターオリジナル。写真を見ても分かるが甲に接する部分が高いので履き皺を上手く伸ばしてくれそうだ。価格で比較するとオールデン純正が9,790円でロチェスターオリジナルが6,600円。Aldenのプレートが付かないだけで一気に値段が安くなる。

(12) ロチェスターオリジナル
いつの間にかシュークローゼットに入り込んでいたロチェスターオリジナル。残念ながら旧型らしく新型とはシェイプが違う。フリマサイトやオークションで旧型を検索すると多少は見かけるが球数は少ない。さりとて現行品もMサイズは在庫切れ…買いたいものが買えないもどかしさが募る。

(13) ロチェスター旧型を確かめる
旧型ロチェスターオリジナルをくの字に変形させて横に置いてみる。踵部分は見るからに緩そうだがつま先部分は内振りラストに合わせてピタリとフィットしそうだ。RESHのモディファイド専用ツリーのようにアイレットの一番上までカバーするのは無理にしても甲の皺を伸ばすには十分とみた。

(14) 入れてみたところ
ロチェスターオリジナルを入れてみたところ。靴のキャップ部分から甲にかけて手で押してみるとツリーがピタリとフィットしている感覚が指から伝わってくる。ただ先割れ二分割型の場合「分割部分の段差でクリームが塗りにくかったり乾拭きするのも面倒」というユーザーの声もある。

(15) 甲部分のおさまり
写真は靴の中の様子。フィットは良好、羽根部分もしっかり持ち上げられている。これならモディファイドオールデンだけでなく定番オールデンや英国製のクロケットにも使えそうだ。モディファイドラストに特化したツリーだと他の靴に合わないのが難点だがロチェスターオリジナルは靴数の多い自分には助かる。

(16) ロチェスター新型を追加
モディファイドオールデンが2足一気に増えたのでロチェスターのツリー追加を試みるも新型はサイズ切れ。ようやくオンライン古着ショップで中古を購入できたので早速新旧の比較…左が新型で右が旧型だ。こうしてみると旧型のつま先に新型の踵が理想か。フィットでいえばロチェスター旧>ロチェスター新>オールデン純正になりそう。

(17) ローファーとの相性
汎用性が高いロチェスターのツリーがローファーに合うかチェック。用意したのはオールデンの中で希少性ナンバーワンのアンラインドローファー。新型ツリー(左)の踵がパンパンなのに驚く。これでは踵が緩んでしまいそうだ。柔らかなアンラインドローファーには旧型(右)の方が無難か…。

(18) モディファイドオールデンとの相性
本題に戻ってモディファイドオールデンに新型を入れてみる。踵のフィット感は良好、オールデン純正と変わらない。用意した靴はパリのアナトミカで買ったものだが最初は色の左右差が激しかった個体。試行錯誤の上色の左右差をうまく解消できた。詳しくはこちらの記事を参照されたい。

(19) ロチェスター新旧比較
ロチェスターの新旧を片足ずつ入れた写真。旧型(左)より新型(右)の方が踵には合うとはいえ外から見えない内側からは旧型のツリーがしっかり羽根を押し上げている。RESH特製やスレイプニルなど殆どのツリーを試せなかったがモディファイドオールデン用ツリーのベストバイはロチェスター旧型という結論に達した。

(20) マイモディファイドオールデン
ようやくCウィズのモディファイドオールデン2足にツリーが入った。この間日本輸入元のラコタ丸の内店でモディファイドラスト用のツリーを相談したこともある。真面目に探すと友人ではないが確かに悩ましい。モディファイドオールデンの所有者は各々苦労してマイベストなツリーを見出したのだろう。

足を痛めたことで「快適な靴」を真剣に考えたこの夏。次回はモディファイドオールデンの本場アメリカへ行こうと計画中。NYのモールデッドシュー(店)はモディファイドラスト別注で有名だがコネチカット州のシューマート(店)でファクトリーセカンドからモディファイドオールデンを探すのもスリルがある。

フライト検索ついでにツリーも調べたらロチェスターは現地で21.53$。円安なのに3,000円強と日本の半額だ。オールデン純正は40.00$だから6,000円強、それでも国内の9,800円より安い。モディファイドオールデン命の友人に「ついでにツリーを買ってこようか?」と聞いたら彼は既にRESHを愛用中だった。

いずれにせよアメリカ行きが決まればモディファイドオールデン(続編)を当ブログで紹介したいと思う。

By Jun@Room Style Store