ブーツのスタメン入れ替え | Room Style Store

Blog

2023/11/16 01:02


世界最強のサッカーリーグといえばイギリスのプレミアリーグとスペインのラ•リーガにイタリアのセリエAがトップ3、ドイツのブンデスリーガとフランスのプレミア•アンが後に続きトップ5を形成している。因みに日本のJリーグは選手の海外移籍もあり昨年より順位を一つ落として目下27位とのこと。

11月1日付の当ブログ「ブーツのスタメン」で26足のブーツから11足のスタメンを発表したばかりだがマイバースデーを迎え実力派の2足が仲間入り。急遽スタメンを一部入れ替えることになった。抜擢されたのは目下世界サッカーリーグランキング10位をキープ中のMLS擁するアメリカ出身のブーツだ。

そこで今回は長靴の季節に相応しい新顔を紹介しようと思う。

※扉写真は新加入の面々

(1) ホワイツ
まずはキングオブブーツの異名をもつホワイツから。ドレス靴のキングがジョンロブ(英)ならばワークブーツのキングはアメリカ最古の「ホワイツ」と言われる。1915年創業、グッドイヤーが主流のアメリカンワークブーツ界でハンドソーンを頑なに守るのがホワイツなのだ。

(2) ハンドソーン
インソール(革)に接着した人工リブに機械でウェルトを縫い合わせるグッドイヤーに対して手仕事でリブを削り出し、手縫いでウェルトとアッパーを縫うのがハンドソーン。原理は似ているが手の掛け方が違う。そしてジョンロブ同様ホワイツのルーツもブーツのオーダーメイドだそうだ。

(3) 手仕事
赤丸部分を見ると手縫いでウェルトとアッパーを掬い縫いしている様子が分かる。ホワイツのセミドレスはコバステッチがシングルとダブルの2種類あって、不思議なことに店内では隣のクロムエクセルダブルステッチよりこちらの方が値段が高い。アッパーに水牛革を用いているからだろうか。

(4) フォワードかミッドフィルダーか…
横から見ると踝から履き口のS字カーブが目を引くセミドレス。靴底内部のアーチサポートのおかげで足先と踵で支えていた体重を足裏全体で支えられるようになり体幹が安定、結果として疲れにくくなるとのこと。そのタフさはフォワードでもミッドフィルダーもよし…ブーツスタメンの新戦力に相応しい。

(5) ドレッシーなソール
ソールはオールラバーのビブラム269とQUABAUG(カバーグ)ヒールのコンビネーション。269の耐久性は他のビブラムよりやや劣るものの綺麗めなブーツには最適とのこと。ところでセミドレスの由来だが、5インチという高すぎないハイトのおかげか医者や弁護士が仕事で履いていたから…だとか。

(6) キックオフ前のアップ(その1)
ショップで長時間試し履きしたせいか新品の割には艶が足りない。まずは靴紐を外してシューツリーを入れる。履いた後の型崩れを防ぐだけでなくクリームやワックスを塗る時にも便利この上ない。保湿効果のあるコロニル1909はダークブラウンと迷ったが比較してバーガンディをチョイス。

(7) キックオフ前のアップ(その2)
バーガンディの1909を塗布している様子。スタメン入りしたこのセミドレス、選手録で調べると「ブラックチェリー」というのが正式な色名称らしい。塗るそばからクリームがどんどんアッパーに浸透してゆく。水分も油分もだいぶ抜けていたようだ。さながらキックオフ前のアップのようだ。

(8) キックオフ前のアップ(その3)
続いて油分多めのオールデンカラー8コードバン用を塗布。この夏パリのアナトミカで貰ったものだがオールデン以外にもどんどん使っている。この分じゃすぐ空になりそうだと念のため近場で買える場所を検索…ラコタ(丸の内など)で取扱有りと判明…ただし値段は1,870円と中々のもの。

(9) 水分・油分補給後
キックオフ前のアップ終了。好みでつま先を鏡面磨きにしてしまうのも有りか。トリッカーズやクロケットなどノーザンプトンの老舗ブーツメーカーより作りは大らかだが「ホワイツのブーツを履くと他のブーツに戻れない…」と言う店員のセールストークと推しにスタメン入りした。

(10) 紐を通す
さあキックオフと紐を締めたところ。蝋引きシューレースは紐を外すのも通すのも、締めるのも緩めるのも面倒だ。とはいえセミドレスに相応しいのはゴツい革紐ではなく艶のある平紐だろう。5インチのハイトは機敏な動作も難なくこなす。都会から大自然までどこに居ても絵になるブーツだ。

(11) 乾拭き後
乾拭き後の姿。実は試着時に右足の第2フック裏側が当たって痛かったので店内のワークショップでつぶして貰った。お陰で履き心地は改善、ワークブーツのオーダーメイドを受けるホワイツならこんなパーソナルサービスもお手のものだ。昨年秋から55,000円も値上げしたがそれだけの価値がある。

(12) 初下ろし
早速実践投入。この日はRRLのデニムとネイティブ柄のブランケットカーディガンにホワイツのコンボで街に繰り出した。もっともホワイツを買った日に着ていたのはサルトリオのジャケット…クラシコイタリアとの相性も悪くなかった。半日ほど歩き回ったが足馴染みもよく快適な初日を終了。

(13) チペワ
お次は高身長の紐なしブーツ。スタメン中唯一のエンジニアブーツはグッドイヤー製法のタフガイ。1901年創業のチペワはウィスコンシン州チペワフォールズにファクトリーを構える。同じ州内のミルウォーキーに工場があるハーレーダヴィッドソン乗りの足元はチペワの黒エンジニアがお約束だとか。

(14) タンカラー
色むらのあるオイルドレザーはしっとりとした感触。タンレネゲイドと呼ばれる一番人気の色目だそうだ。レッドウィングのオロレガシーに近い色味だがもっとオイリーでもっちりとしている。革には細かな傷や質感の違い、左右差などがあるが自然な風合いを大切にしている証だそうだ。

(15) 鉄壁の守備
85年の長きに渡ってスチールトウセーフティブーツを作り続けていると書かれたタグ下には「インシュレーテッドトウプロテクション」のマークが…。スチールトウキャップのおかげで安全性も向上、文字どおり鉄壁のディフェンダー役を任せられる。我が屋では唯一のスチールトウブーツだ。

(16) 11インチの長身
11インチのハイトは足入れが難しそうかと思いきやチペワのEウィズは結構ゆとりがある。試し履きした時も最初は踵が浮き気味だったが店内を歩き回るうちに革も馴染みソールも徐々に反りグセがついて踵の浮きも解消、これなら快適な履き心地を期待できそうと結局ホワイツとの2足買いに至った。

(17) ビブラムソール①
黄色のメーカータグが付くソールは一目で分かるビブラム社のもの。セリアA擁するイタリアの靴底メーカーとして世界中にクライアントを持ち最近はトレーニングシューズ界にも進出している。因みに英語読みはヴァイブラムだ。写真のソールはビブラム700、同じ素材でリソールする修理店も結構ある。

(18) ビブラムソール②
横から見た図。黒いソールの中に見える茶色の粒はコルクチップ。混ぜることで軽量化しつつグリップ力も向上するらしい。昔は茶色しかなかったが最近は写真のように黒バージョンもある。耐久性に優れたソールとしてリペアショップではレッドウィングやウルヴァリンなどの靴底交換に用いている。

(19) 注意書き
何気なく見過ごしがちな警告書が箱にひっそり。書かれている「カリフォルニア州プロポジション65警告」を読んでみる。どうやらこのブーツにはガンや妊娠障害を引き起こす物質が含まれているようだ。具体的には分からないが思い当たるとすれば原皮を鞣す時に使うクロムあたりか。

(20) 完売品を手に入れる
ネットでは完売のタンレネゲイドだが店舗にはまだ在庫があるのに驚く。もう一型のコードバン色エンジニアは既にマイサイズ完売だったが人気色のタンレネゲイドにも拘らず8から9までのサイズ違いを全て試着できた。最近はネット通販ばかりだったが店で買うのも思わぬ出会いがあって良いものだ。

(21) ハンドクラフテッド
単なるメイドインUSAではない…という意気を感じるブランドタグ。youtubeで工場の紹介動画を見ると英国既成靴と同じグッドイヤー製法を採用。シャンクはスチール製だがフィラーがコルクではなくフェルトなのは意外だった。機械を使って工員が靴に仕上げていく様はハンドクラフテッドが相応しい。

(22) 初下ろし
甲部分のベルトは「飾り」という声もあるが慣れるまでは履く時に一旦外すと足入れが楽だったりする。ネット上ではオイルドグレインレザーの甲のベルトは「伸びやすいので要注意」だとか。写真はジャパンデニムの重鎮フルカウントにRRLのネイティブ柄カーディガンとの組み合わせ。

両ブーツとの出会いは銀座のスタンプタウン。ABCマートの3階だが1階や2階とは別世界、レッドウイングとダナーやチペワにホワイツなどアメリカンブーツが並ぶ様は圧巻だ。ブーツを探すバイカーやワークブーツ好きにはたまらない空間だろう。ここでホワイツのカスタムメイドもできるとか。

試しにスタイルや金具、レザーやコンビなど好みで選ぶと値段は軽く20万円を超えてしまう。セミドレスを超えて高級ドレス靴なみの価格だ。スタンプタウンを出て帰り際に英国靴販売の老舗ロイドフットウエアに立ち寄ったが「英国靴の値段が高過ぎて…」と円安による価格上昇を嘆いていた。

インポートものは価格が高すぎて買い付けられないというアパレル関係者の声も聞く。舶来ものは手が届かない世界になってしまうのかはたまた少しは円高に戻るのか…アメリカ行きを控えて大いに気になるところだ。

By Jun@Room Style Store