多摩のパワースポット | Room Style Store

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2023/12/05 10:16


前々回のブログでは関東のローカル線をバイクで訪ねるのが面白いと書いたが昔から古刹(古い寺)と仏像を巡るのも趣味の一つ。以前当ブログで紹介したあきる野市の大悲願寺は年に一度「木造伝阿弥陀如来三尊像」を無料で公開しているが今年は既に終了。密かに来年こそはとリマインダーに入れている。

残暑が過ぎて涼しくなった頃からデイツーリングを再開。次のお寺参りをと「多摩地区で国宝の仏像がある寺」で検索したら調布の深大寺がヒットした。東京都で唯一、2017年に国宝に指定された「釈迦如来像」が年に一度といわず常時拝観できるとか。早速交通規制のない平日を選び深大寺へ向かった。

そこで今回は週末ともなると参拝客で賑わう深大寺を紹介してみたい。

扉写真はバス停側にある深大寺水車館

(1) 深大寺山門
平日とはいえ参拝客の邪魔にならないよう早朝にバイクを押して山門前に到着。正面には「浮岳山」の山岳号を掲げた山門が一段高く構えていた。1865年の火災の時も焼失をまぬがれた山内で一番古い建造物とのこと。武蔵野では屋敷林として植えられていたケヤキを材料に赤と黒に塗られている。

(2) 参拝
バイクを駐輪場に置いて再び山門に戻り参拝。深大寺の公式サイトによれば「東京に残る江戸時代の建築物の中でも特に優れたものの一つ」とある。「赤く塗られた柱や梁はケヤキで黒く塗られた屋根裏板や垂木がスギで出来ていると」という説明を読みながら実物に接するとなるほどと理解も早い。

(3) 本堂
山門をくぐると正面に見えるのが本堂。大正8年に再建されておりそれまで寄棟造りの茅葺き屋根だったものを瓦葺きにしたそうだ。その後も平成15年には銅板葦瓦帽葺きの屋根にするなど外観を一新し山内一の威容を誇っている。それにしても参拝客の少ない平日はじっくり参拝できて嬉しい。

(4) 匠の技
左右の柱と横を走る梁が交差する部分に彫られた木鼻に注目…正面を向くのは獅子、左右を向くのが象の彫りものと公式サイトにある。屋根下中央の鳳凰や梁の間の龍など『江戸彫り』と呼ばれる建築様式を堪能、こうした木彫刻の始祖は日光東照宮「眠り猫」の作者、左甚五郎とのこと。

(6) 山門を振り返る
本堂から参道を振り返ってみたところ。大勢の客で賑わう休日が嘘のように時が静かに流れていく。京都ではインバウンド客の増加で①市バスに乗れない②食べ歩き③ごみ放置などオーバーツーリズムに伴う様々な問題が生じている。ここ深大寺も少しずつだがインバウンド客の増加が見られるようだ。

(6) 案内板 
山門横の案内板。赤丸が現在地なので境内に見どころが色々あることに気付く。下にあるQRコードをスキャンすれば10言語の案内を読むことも可能、外国人旅行客への対応も万全だ。深大寺は寺社や参道、周囲の茶屋や深大寺そば店など日本を身近に体験できる名所として条件は十分整っていると思う。

(7) 鐘楼
1829年に建てられた鐘楼が焼失した後、明治3年に再建された鐘楼。かつては茅葺の屋根だったものを1954年銅板葺きに改めたそうだ。段になった虹梁には若葉の彫りものが、木鼻(四隅の柱と横梁の交差する部分)には本堂と同じく獅子と象の彫り物が施されている。他の建築物の調和がとれている。

(8) お清めの水
手水舎と書いて「ちょうずや」と読む。参拝前に身のけがれを清めるために用意された施設のことだ。洗い水で手や口を清める簡易な禊(みそぎ)場として参道の途中に配置されているとのこと。古来深大寺周辺は湧き水が豊富なことで知られており、ひょっとしてこの手水も湧き水かもしれない…。

(9) 絵馬
境内にある絵馬掛所。深大寺は厄除けや縁結びにご利益があるといわれる。亀の形をした「えんむすび絵馬」は胴体と甲羅が紐で結ばれており胴部分に書いた願い事の上に甲羅を被せることで願い事や名前などのプライバシーが守られるとか…色も5色用意されており写真で見ると緑と桃に紫が人気のようだ。

(10) 元三大師堂
こちらは奥まった場所にある元三大師堂。元三大師の像が祭られている。幕末の大火で焼失後、本堂より早い1867年に再建されている。天台宗の僧侶であった良源が入滅後に元三大師となり生前霊力と様々な姿に変じて人々を救ったことから「元三大師降魔札」が家々に配られ魔除けとして入口に貼られたそうだ。

(11) 釈迦堂
こちらが国宝の釈迦如来像を祀る釈迦堂。撮影ができないので中の様子を写真で伝えられないのが残念だが訪れる人もなく国宝を心ゆくまで堪能できる。飛鳥時代後期(白鳳期)を代表する仏像として都内寺院唯一しかも東日本最古の国宝仏だそうだ。寄進を募っているが拝観料は設けていない。

(12) 深沙堂
深沙堂と書いてじんじゃどうと読む。背後にはこの地の水源であり深大寺の発祥に関わる泉がある。中に祀られている深沙大王像はどくろの胸飾りを付けた形相凄まじい鎌倉時代の優作とのこと…公式サイトによれば長期間公開されておらず現在も厳重な秘仏らしい。そう聞くと見たくなってしまう。

(13) 参道
こちらは深大寺に沿った石畳。左は湧水が流れる側溝と石造りのベンチが配置されて憩いの場となっている。写真は早朝なので人影もなく茶屋は閉まっていた。時おり犬を連れた地元の人とすれ違ったがバス通りから奥まっているせいか車の音も聞こえず。小鳥の鳴き声が心地よく響いていた。

(14) 昼時
こちらは昼時の様子。茶屋が開くと一気に雰囲気が変わる。まだ残暑厳しい頃とあって子供は半袖に短パン姿…道行く参拝客は端から端までゆったり散策しているようだ。遠くにはベンチに腰掛ける人も見える。ふと見ると親子が何やらお茶屋で注文しているようで思わず近づいてみた。

(15) 厄除け団子
先客が買い物を済ませるのを待って立ち寄ると美味しそうな厄除け団子の写真が…1本120円とお手頃だしお昼時とあってふいに空腹感が襲ってくる。どれにしようか迷うがあずきを注文。オーダーするとその場で軽くあぶってくれる。みたらしや焼き団子なら一層香ばしさが漂うかもしれない。

(16) あずき団子
せっかくなので厄除けあん団子を記念撮影。お茶屋とおもったらこちらは八起という名の蕎麦屋だそうだ。メニューには蕎麦の他にわらびもちもある。ついでに蕎麦を食べようかとも思ったが通りには深大寺そばの名店が並んでいる。取り敢えず団子でエネルギーを補充、端から端まで歩くことにした。

(17) 東門前
山門からバイクを押して東門付近に移動。正月の混雑時は山門から入って東門から出るなど一方通行になるようだ。それにしてもゴミ一つ落ちていない通りや垣根の美しさに感動してしまう。インバウンド客が口を揃えて言う「日本はゴミ一つ落ちていない」とは正にこうした環境を見ての感想だと思う。

(18) 深大寺蕎麦
さて名物の深大寺蕎麦をどこで食べるか散策して決めたのが「一休庵」。「新そば入荷」ののぼりに惹かれたのが理由だ。江戸時代、深大寺の周囲は米作りに不向きだったため小作人が蕎麦を作って献上、寺が蕎麦として来客をもてなしたのが始まりといわれる。湧水が豊富な地の利を生かしたようだ。

(19) 深大寺ビール
バイクでの訪問ならアルコールは厳禁だが湧水を生かした地ビールも捨てがたい。そこで後日バスで再訪、よく冷えた深大寺ビールを堪能した。ピルゼンとミュンヘンの2タイプあり写真はピルゼン。赤提灯でお馴染みホッピーの製造会社が地元の調布工場で作っており、地ビールの草分け的存在だ。

(20) 十割蕎麦
せっかくの新蕎麦なので十割蕎麦を注文。引っ張りに強いグルテン(二八蕎麦の場合二割はグルテンを含むうどん粉)を含まないので破れやすく打つのが難しい。人によっては「ぼそぼそしている」という印象もあるが新蕎麦の風味や香りは普段決して味わえないもの。頼むなら十割蕎麦かそばがきしかないだろう。

(21) 薬味
薬味はネギだけ。本わさびは150円追加だそう…。信州暮らしの身からするとわさびの追加料金に驚く。もっとも信州でも新蕎麦の季節は薬味がネギとわさびだけになる。大根おろしや刻み海苔は「蕎麦の香りが消える」ので付かなくなるのだ。新蕎麦の香りと風味を味わうべくわさびを頼まず食すことにした。

(22) 帰路
帰路に就く前に一番東側にある不動堂に立ち寄った。前方に見える小道を左入ると「不動の瀧」がある。本堂近くの「不動の滝」とは場所も字も違うので要注意だ。龍の口から出る水は東京都の名湧水57選に選ばれたという。山門からかなり離れているので訪れる人も殆どなくやや寂しい。

正式名称は「浮岳山昌楽院深大寺」という深大寺は関東屈指の古刹。湧き水に恵まれ水神信仰の深沙大王が寺の名前の由来となっている。厄除けと縁結びのパワースポットとしての人気に加え元三大師堂の奥にある開山堂には出世開運が、深沙堂に向かう参道には大黒が祀られており商売繁盛のご利益もあるとか。

3月3日と4日には「厄除元三大師大祭」としてだるま市も開かれ、10万人を超える人々が訪れるという深大寺。こうした行事からもパワーを感じる。因みに隣の神代植物公園はかつての寺領、深大寺周辺の駐車場は少ないので神代植物公園の駐車場に停めて武蔵野の森を歩きながら深大寺まで散歩するのも悪くない。

次は雪の降る日かはたまた桜が満開になる頃か…バイクを置いてバスで来たら蕎麦と地酒で一休みと行きたいものだ。

By Jun@Room Style Store