冬のアウター | Room Style Store

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2024/01/14 10:08


毎年恒例の大掃除はクリスマス明けが本番。隅々まで掃除しながら煩悩を振り払い、住まいも心も清らかにしていく。それが済んだら次は正月準備…何事もなかったようにキリストの生誕を祝うクリスマスから神道行事へと模様替えする様子は目下来日中のイタリア人義兄にとって興味津々らしい。

大掃除を終えたら小休止…といきたいが急遽田舎に帰る支度に取り掛かる。暖冬のせいで水回りを落とし忘れていたのに気付いたからだ。せっかくなので新入りアウターやブーツを信州で試すべく衣装箱に詰めて準備完了。下りが30日で上りが2日の渋滞予測を避けながら一路信州へと車を走らせた

そこで今回は冬の信州で新着冬物を試した時の様子を紹介しようと思う。

※扉写真はフィルソンの新着品

(1) マッキノウクルーザー
まずはシアトルから着いたばかりのクルーザージャケットを試す。100%バージンウールの25ozマッキノウウールは防風性も保温力も抜群。昨年の125周年モデルで実証済みなのに今季も復刻限定の白黒チェックを買ってしまった。フィルソンの思惑にまんまと乗せられてしまったようだ。

(2) 曇天の朝
小雪が舞う早朝。外気温は‐7℃、暖冬の東京とは大違いだが冬物を試すには良い機会だ。早速クルーザージャケットを羽織って外へ出てみる。流石はマッキノウウール、寒さを寄せ付けないが素手だと厳しい。フィルソンのレザーグローブなら絵になろうがここは田舎の必需品軍手をポケットに忍ばせた。

(3) 焚き木運び
黙々と焚き木運びを繰り返す。汚れたら洗濯して何度も使える軍手は野外作業の強い味方だ。このあと雪が積もってきたらビーンブーツと交代だが今日はその必要もないだろう。新素材の軽量アウターが主流の今、地厚なフィルソンはすっかり旧世代だが野外で羽織ると雰囲気はすこぶる良い。

(4) 2枚重ね
バックポケット用に生地を2枚重ねたジャケットの背面。お陰で保温力は抜群、作業するうちに汗ばんでくる。これが肩から胸にかけても生地が2枚重なるダブルマッキノウクルーザーならオーバースペック間違いなし。RRLでも白黒マッキノウを出しているがやはり本家の作りと雰囲気は上手だ。

(5) 小雪の舞う空模様
粉雪が肩に落ちては溶けていく。濡れても保温力を発揮するマッキノウウールなら全く問題なし。米本国でも好評らしく、その分日本への入荷が遅れているとか。因みに昔はポツンと一軒家だった我が家も周囲の宅地化が進み猿害も出始めている。冬眠しない猿にいつ遭遇するとも分からない。

(6) インナー
クルーザージャケットの下はキルキール。北アイルランドのKilkeel地方で創業されたニッターとのこと。鹿の子編みの一種”モスステッチ”を全面に配した黒のハイネックは単体で着ても絵になるが白黒マッキノウクルーザーとの相性は抜群。輸入品の割に価格は手頃で着回しの効く隠れた名品だ。

(7) ベックマン
バイク用に購入したものの最近は専ら野外作業に愛用中のベックマン。いつまでも硬さが抜けないので馴染みの靴修理屋がお勧めする「無理やり曲げる荒業」にチャレンジ。まずはステップに足をかけて力を入れながら曲げていくこと数十回…両足行うとスクワットのように汗ばんでくる。

【参考資料】
〜手によるブーツの曲げ〜
部屋に戻って更にトライ。履いたままこれほど曲げるのは難しいが手なら楽勝だ。ふと昔クレバリーで完成した靴をアーチからグイッと曲げたりヒールカップを手で押したりする様子を思い出した。途中アッパーがひび割れないか不安になるが元に戻すと何事もなく皺ひとつ残らない。流石はレッドウイングだ。

(8) シアトルジャックシャツ
お次はフィルソントーキョーのプレセールで買ったシアトルウールジャックシャツ。冬枯れのフィールドに似合う柄は他のブランドには出せない色味。米本国サイトで早々と売り切れなのも納得だ。25zのマッキノウウールと比べて18ozと軽い生地だけに果たして防寒性はどうか気になるところだ。

(9) インナーかアウターか…
まずはアウター代わりに軽く羽織って外へ出てみる。思ったより暖かいし軽い分マッキノウクルーザーより腕が動かしやすい。雲の切れ間から太陽が顔を出すと気温も0℃近くまで上昇。ヒートテックのインナーを着ていることもあるがこれくらいの寒さならアウターとして十分通用しそうだ。

(10) 色合わせ
オンラインカタログによれば色味はアンバー&スプルース。アンバーは琥珀色、暗いオレンジのような色合いでスプルースはモミの葉のような暗い緑を指すそうだ。枯葉色のデニムと赤茶色のアイリッシュセッターにイエローの差し色キャップを被って立つとまるで迷彩色のように木立に溶け込んでいく。

(11) 機能性
パンツにタックインできるよう裾は長めに作られている一方アウターとしての機能を考え胸ポケットにフラップを付けるなど凝った作りのウールジャックシャツ。今なおフィルソンのシアトル本店に隣接するファクトリーで縫製される生粋のメイドインUSAにしてベストセラーだそうだ。

(12) アメリカ製への拘り
調べたらフィルソン(日本)のアイテム260点中97アイテムがアメリカ製。トートとガムブーツだけのL.L.ビーンや本国サイトにアクセスできないウールリッチ、アメリカ製品なしのエディバウアーと比べてフィルソンの拘りがよく分かる。因みに写真の装いもブランドは違えどオールアメリカンだ。

(13) RRLのシャツジャケット
ここでフィルソンからRRLにバトンタッチしてみる。同じシャツジャケットでもこちらはキルティング使い。詰め物はプリマロフトと同素材のポリエステルファイバーとフィルソンよりモダンだ。肩の切り返しや身頃と袖のスナップボタンなどウェスタンテイスト強めなところが如何にもRRLらしい。

(14) キャップ
こちらが差し色変わりに被ったキャップ。ウールフェルトの起毛感が温もりを感じさせる。帽子の素材は季節に合わせるのがコツ、ストローハットが夏に合うように秋冬はツイードやフェルトにスエードあたりが旬だろう。確かについこの前まで被っていたコットンのキャップでさえ寒々しく感じる。

(15) 防寒性
キルトシャツの下は半袖のTシャツ。コットン100%だからさぞ寒いか…と思いきやキルティングの効果は中々のもの。ダウンほどではないがかなり暖かい。アウターとして着るなら腕を動かしやすい一重仕立てのウールジャックシャツに分があるがRRLは両脇にハンドウォーマーがあるのが強みだ。

(16) エンジニアブーツ
我が家で最もタフなチペワのスチールトウを田舎で試す。足入れはそれなりに窮屈だが履いてしまうと足首部分はゆとりがある。最初は歩くと踵が浮いてマメができた。踵にパッドを貼って貰おうと靴修理屋に持ち込んだものの「直ぐに剝がれてしまう」とのことで断念した経緯がある。

(17) 靴修理屋さんの見解
靴修理屋の店主によれば「本来なら甲のバックル部分で足首をしっかり留めれば踵の浮きもある程度防げるはずですが、見たところベルトが薄いので伸びてしまうかもしれません。」とのこと。因みにブーツ上部の小さなバックルとストラップも作りは華奢、デザイン上の飾りに近いか。

(18) ブーツ本来の機能
一方でチペワの機能を実感できるのがスチールトウ。「万が一足に衝撃が加わっても大丈夫」と思うと安心して作業できる。ブロック運びやチェーンソーに薪割りなど油断すると危ない仕事でもここいちばんで踏ん張りが効くのが嬉しい。バイク乗りにエンジニアブーツが人気なのも頷ける。

(19) マッキノウベスト
再びフィルソンに戻って今度はパッチカスタムを終えたマッキノウウールベスト。冬の田舎暮らしで一番重宝するタートルネックと次に重宝するベストの強力タッグだ。タートルはどうも首下がチクチクして…という場合はハイネックのアンダーウェアがお薦め。暖かさも倍増で肌触りも良い。

(20) ホワイツ(その1)
足元はホワイツ。キングオブブーツと呼ばれるも好みが分かれるのがインソールのアーチイーズ(隆起)。ここがフィットするかどうかが運命の分かれ目…土踏まずに合わなかったり偏平足だったりすると痛くて履けないほどだとか。ホワイツは店で試着してから買えと言われるのも納得だ。

(21)ホワイツ(その2)
シャンクがスチールのチペワに対してレザーのセミドレスは「強制曲げ」の効果てきめん、今やすっかり馴染んでいる。水牛のアッパーはカーフより厚くて丈夫なのにソフトで曲げ皺も残らない優れもの。耐水性や耐久性に優れたシボ革はドレス靴のようにつま先を鏡面磨きすることもできる。

(22) 完成形(前面)
話を再びマッキノウウールベストに戻して拡大写真を掲載。フィルソン中目黒で購入したこのベストはいきなりパッチカスタムに投入。その後は更にイベント参加を重ね、遂にパッチを貼れないところまで行きついた。あとは左胸の空き場所にピンバッヂや缶バッジを増やすくらいか。

(23) 完成形(背面)
特等席のFILSON銃弾パッチが全体を引き締めている背中側。昼になって晴れ間が広がるとセーターにベスト一枚でも暑いほどだ。前ボタンを外して近所の蕎麦屋まで片道40分の散歩に出かけた。途中誰一人すれ違わない不思議、皆車で移動してるのか歩くのが億劫なのかそれとも過疎なのか…。

田舎暮らしの様子を見て知り合いの服飾仲間から「アメリカンアウトドアスタイルが合いますね」との感想を貰った。英国調ハリスツイードやバブアーを愛用する姿でも紹介すれば印象も違っただろうが伝説のカタログ「Made In USA」に影響を受けた世代としては何よりの褒め言葉だ。

もちろんアイビーやアメトラなど雑誌メンズクラブから受けた影響も外せない。当時ファッション誌といえばメンクラしかなかった時代…隅から隅まで熟読したものだ。まさか田舎暮らしをするとは思いもしなかったがいざ現実となると1976年11月号「ヘビアイ党宣言」が鮮やかに蘇る。

ヘビアイ=ヘビーデューティーアイビーは和製英語かつ造語だがアイビー小僧だった自分には今なおバイブルのような存在だ。

By Jun@Room Style Store