ガーランドのシャツ(後編) | Room Style Store

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2024/01/21 11:12



新年を迎えたばかりの日本では石川県の地震や羽田空港の事故といった悲しい出来事が立て続けに起きたが、懸命に支え合う被災者の方々や迅速に乗客を誘導したJALの乗務員の行動に勇気を貰った。東日本大震災の時は街頭募金の呼びかけに加わったが今回は積極的に募金することで少しでも役立てて貰えたらと思う。

ネットで石川県へのふるさと納税を調べるついでに新春セールを検索したり初詣の帰りに店舗を覗いたりしたがブラックフライデーのセールで欲しいものを手に入れたせいか食指が動かない。昨年12月に紹介したガーランドのシャツも更に値引きしていたがマイサイズは売り切れ。買い時は間違っていなかったようだ。

何はともあれ今回はガーランドのシャツ(前篇)に続いて後編をお届けしようと思う。

※写真はガーランド製のアイクベーハー

(1) タッターソール
まずはガーランド復活をタグに掲げたアイクベーハー別注「タッターソール」から。最近密かにアイビーブームらしい。昔のような一大ムーブメントとはいかないが、当時を知る世代としてはリアルなVAN特製ブレザーとオウンメイクのブルックスブラザーズ#1レップタイで復活を祝いたい。

(2) ヴァンヂャケット
社名VAN JACKETを敢えてヴァンヂャケットと表記するなど尖っていた当時のVAN。「~すべし」「~ベからず」式の着こなしルールが沢山あってそれを覚えるのが楽しかった。例えば①ブレザーにネクタイを締める際ネクタイピンで留めるべからず~というのもその一つ。いうことでタイピンなしで撮影。

(3) 着こなし(その1)
シャツの着丈は程よくパンツの中でダブつかない。袖丈もジャストだ。久々にキャメルのブレザーを羽織ると当時の素材や縫製技術の限界ゆえか窮屈に感じる。それでも当時は宝物だった。そういえばキャメルのブレザーには②チャコールグレーのパンツを履くべし…なんてルールもあったと思う。

(4) 着こなし(その2)
アイビーなパンツは③パイプドステムが決まりだったがどんな形か分からず極端に裾を絞ってマンボズボンになったこともある。半世紀も前のことなのに記憶は鮮明だ。当時「背筋が寒くなるほど高価」と言われた英国靴も今では洒落たアイビーリボン付のクロケットさえ履ける。良い時代になったものだ。

(5) VANとラルフローレン
ネクタイと靴は共にポロラルフローレン。1970年にラルフローレンと契約を結んだ西武百貨店ポロ事業部がVANにポロラルフローレンのライセンス生産を依頼してきた…と語っていたのは創業者の石津謙介さん。なるほど確かにポロとVANは相性良し。当時の事業部の目利きも素晴らしかったと思う。

(6) VAN繋がり
VAN繋がりでキャメルブレザーからエンブレム付のネイビーブレザーにスイッチ。満を持してサウスウィックのピンクストライプシャツの登場だ。因みにアイビー信者は④ブレザーの素材はフラノ…とインプットされていたと思う。最近英国テイラーに頼んだ「サージ」なんて生地、当時は知る由もなかった。

(7) キャンディーストライプ
アイビールックの肝は⑤ボタンダウンシャツそれも生地は⑥オックスフォードが本命…だった。本場米国でもOCBD(Oxford Cloth Button Down)なんて略語になるほど相性良しはお墨付き。最初は無地、次にキャンディーストライプ、さらにギンガムチェックやタッターソールとステップアップしたものだ。

(8) 1970年代のタグ
アイビー信者のアイコンともいえるVANの3文字。創業者の石津謙介さんは「VANのように単語の最後にN(ん)が付くと売れる…」と仰っていたそうだ。なるほど確かにラルフローレンも最後がN(ん)だ。VANのヒットでアルファベット3文字かつ最後がNで終わる単語を大量に登録した企業があったらしい。

(9) フラノブレザー繋がり
VAN繋がりで登場したフラノブレザーからバトンを受け継いで今度はシップスが商標権を持つ前のリアルサウスウィック製ブレザー登場。シャツもボタンダウンからクラブカラーにチェンジしてみた。因みに襟だけが白いラウンドカラーのシャツはボウタイを合わせるのがアイビー流だとか(これは初耳)。

(10) クラブカラー
アイビー好きが高じてボタンダウンこそ正統と思っていた昔はラウンドカラーを「邪道」扱いしていた。融通が利がなかったのだろう。因みにラウンドカラーのシャツをなぜクラブカラーと呼ぶのか調べたら「英国イートン校の制服で生徒のみ着用を許された」ことからクラブカラーと呼ばれたそうだ。

(11) タッターソールに戻る
一周回って最初のタッターソールとブラックフリースのブレザーで締めくくり。デザイナーのトムブラウンは「TAKE IVY」が愛読書だったとか。着丈短めなのは彼のトレードマークとしてセンターフックベントや3ツボタン段返りなど昔のアイビーファンには感涙もののディテールが嬉しい。

(12) ドレスゴードン
今回のガーランドシャツ特集、オックスフォードシャツを一通り試したらお次はシャギーツイル。ネルシャツに似た起毛感は秋冬に相応しいが信州なら夏場以外ずっと着られそうだ。柄はタータンの中でブラックウォッチと並んで人気のドレスゴードン。ツイードジャケットとの相性は言わずもがな。

(13) 共柄の起毛ネクタイ
シャツと共布のネクタイも展開しているシップスだがここは共柄のピュアカシミアタイで。まだアメリカ製だった90年代初めにNYのポロショップで購入したものだ。カシミアといってもマフラーのように首元を暖かくする効果がある訳じゃないがVゾーンに温もりを感じさせてくれるのが魅力だろうか。

(14) 着こなし(その1)
3つボタンのようで2つボタンのツイードジャケットはブルックスブラザーズのオウンメイク。1985年製のスペシャルオーダー品は他にはない仕様がてんこ盛り。袖も本開きの本切羽になっている。古いジャケットに合わせて時計もアップルウォッチから手巻きのフライバッククロノに替えてみた。

(15) 着こなし(その2)
ジャケットに⑦決してデニムを履いてはいけない。アイビーが流行った1970年代、アイビーリーグではデニムが禁止だったようだ。従ってアイビー的にはチノパンが必然となる。選んだのはツイードに負けない地厚な10オンスチノ。⑧尾錠があればなお良いが⑨プレーンフロントはアイビーの鉄則、プリーツ入りのパンツは「邪道」だったのだ。

(16) ロングウィングブルッチャー
オールデンLWB(Long Wing Blucher)を投入。このところスニーカーばかり履いているせいか足がなまってやけにソールが硬く感じる。特にダブルソールだと履いた瞬間から硬さがズンと頭の天辺まで来る。解決方法はソフトな中敷きをいれて最初付いていた半敷を剥がすとちょうど塩梅が良いそうだ。

【参考資料①】
〜新旧ネクタイ〜
滅多に締めることがなくなったものの着道楽が決して捨てないのがネクタイ。いざとなれば知人や友人に譲ることさえある。写真はそうした断捨離の危機を乗り越え現存するネクタイばかり。因みにボタンダウンシャツにネクタイを締める時は⑩プレーンノットに結ぶべし…なんてルールもあったと思う。

(17) シャンブレー(その1)
いよいよガーランドシャツ特集の最後を飾るシャンブレー。綾織りのダンガリーやデニムと似た風合いながら平織りのシャンブレーは日本製の生地をアメリカのファクトリーに持ち込んで完成させたとのこと。新品は糊が効いていて首元がざらつくのでデニム同様一度洗って手掛けアイロン後に再度試したい。

(18) シャンブレー(その2)
オンオフどちらでも着回しの効くシャンブレーシャツ、中でも人気の襟はボタンダウンだそうだ。確かに写真のようにネクタイを締めてもブレザーやカーディガンあるいはベストの下にノータイで着ても絵になる。因みにシップスのサイトでサウスウィックの在庫を見るとこのシャツは既に完売とのこと。

(19) 着こなし(その1)
襟のボタンを外したシャンブレーシャツの上に共布ベストを挟んでRRLのツイードジャケットを羽織った図。最近はセットアップ販売が主流のようで全て単体で販売されていたが3つ揃えると「J,V,P,JP,JV,VP,JVP」と7通りの着方を楽しめる。因みにJ,V,Pはそれぞれジャケット、ヴェスト、パンツを指す。

(20) 着こなし(その2)
アイビー的にはクリースなしのパンツなんて有り得ないがプレッピーの時代になるとチノパンにクリースなしが当たり前になっていった。因みにスーツはビジネスアイテムだと思われがちだが起源は農民の作業着、貴族がラウンジで着ていた丈の短いラウンジジャケットも実はスコットランドのワークウェアだったとか。

今回はガーランドのシャツを試すつもりが我が家で一番古いVANのジャケットを出してきたせいかアイビー時代の着こなしルールまで思い出してしまった。ブログの中でも①~⑩まで番号を振ってみたがアイビールックをマスターするにはそれこそ頭の先からつま先までもっと沢山のルールがあったと思う。

ボタンダウンシャツ一つにしても「ボタンは襟先の小さなものから身頃まで全て四つ穴で縫い付けはクロス留め」「背中にはボックスプリーツとロッカーループが付いている」など細部への拘りが徹底していた。後にルイジボレッリの手縫いシャツのボタンが鳥足掛けだったのを見て違和感を覚えたものだ。

何はともあれ今回の特集で一番嬉しかったことはコロナ禍で閉鎖という苦難を乗り越えガーランドが順調に復活したことに尽きる。往年のアイビーファンとしては一時潰えたかに思えたアメリカ製シャツに再び火が灯ったことを心から祝いたい。

By Jun@Room Style Store