ポロダンガリーズ | Room Style Store

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2024/02/12 10:04


アイビー世代の多くはVANを卒業すると本場米国発のJ.プレスやブルックス、あるいはラルフへと移行するのが自然な流れだっと思う。自分も同じ道を辿ったがMade in USAカタログ本が1975年に出版されると心機一転、店に並ぶライセンス品じゃなくて本国と同じもの…それもできればアメリカ製を探すようになっていった。

とはいえ当時青山のブルックス本店で見た米国製の三つ揃えは18万円。大卒の初任給が12万円の頃だから超高根の花だ。結局買えずじまいだったが80年代に入り円高が進むと輸入品が少しずつ入荷し始める。基幹店だった池袋西武のポロショップに今回の主役赤いフラッシャーのポロダンガリーズが並ぶと真っ先に購入した。

見つけた喜びと手に入れた高揚感は今も忘れられない。そこで今回は赤フラッシャーが懐かしいポロダンガリーズについて書いてみようと思う。

※扉写真は当時の赤フラッシャー付デッド品

(1) デッドもの(その1)
当時の赤フラッシャー付きのカバーオール。カーハートの名作「ミシガンチョアコート」の名前からこの手のタイプをチョアコートとも呼ぶらしい。ゆったりとして動きやすいシルエットや汚れから身を守る長い着丈に収納を考えたポケットなどデザインはど定番。素材もキャンバスやデニムが一般的だった。

(2) 赤フラッシャー
赤フラッシャー最初の一文にquality and durability were more important than fashionと書かれている。「ファッションより品質と耐久性に重きを置く」製品づくりはラルフローレンの名言"Not fashion,but style"にも通ずる。何より40年も前のデッド品が今も色褪せないところにポロの真価がある。

(3) 通称白タグ
通称白タグだが正しくは「ポロダンガリーズ」。初代サブブランドのポロウェスタンからポロカントリーを経てRRLという流れが一般的だが実はポロウェスタンの次にポロダンガリーズが存在していたことは知られていない。単なるタグバリエーションとの思い込みで通称白タグが広まったのではと想像している。

(4) 袖口
袖口はアジャスト機能を持たせた2個のタックボタン付き。カーブしたステッチに沿って袖を折り返して外側のボタンで留める。肉厚なダブルカフみたいだが袖先を気にせず自由に作業ができるので腕が短い自分には重宝する。細部のデザインやディテールは元祖カーハートがお手本のようだ。

(5) アクションプリーツ
トリプルステッチで耐久性を高めたアクションプリーツやアームホール周辺。このあたりもカーハートと瓜二つ…80年代のポロはカーハートはもとよりL.L.ビーンのフィールドジャケットやフィルソンのマッキノウクルーザーといった名品をリファインして売れ筋に仕上げるのが上手かった。

(6) キルトライニング
スリーブ(袖筒)内部はキルティング仕上げ。素材のアセテートは絹のような光沢があり保温性に優れる反面摩擦に弱い。ビンテージのポロダンガリーズはこのライニングが傷んでいないかが重要なチェックポイントとなる。因みに今はアセテートより耐久性のあるポリエステルが定番のようだ。

(7) デッドもの(その2)
こちらもデッドのポロダンガリーズ。「ランチフィット」と呼ばれるジーンズは14オンスと比較的重い生地を採用。今から40年前の製品なのでひょっとしたらコーンミルズ社のデニム地を使っているかもしれない。因みに2004年コーンミルズ社はコーンデニムへと会社名が変更されている。

(8) フラッシャー
フラッシャーのweathered for softnessを訳そうと調べるとweathered denimがユーズド加工されたデニムを指すらしい。さしずめ「ソフトな感触のユーズド加工」とでも訳せそうか。他にも「履き込まれた」を意味するwell-wornなんて単語も見つかる。フラッシャーもよく読むと奥が深い。
 
(9) レングス
36インチのレングスは写真に収めるのが大変。昔はポロに限らずLeeなど直輸入ものは裾上げが当たり前。ところが直したジーンズをいざ履くとシルエットが変わったせいで似合わずがっかりしたこともある。幸い今はポロが30と32inch、リーバイス(LVC)が32と34inchの2展開とのこと。足が短い自分には有り難い。

(10) ヒップポケットの意匠①
カウボーイの投げ縄をモチーフにしたようなヒップポケットのステッチ。現行RRLのデニムでも見かける意匠だ。ただしボタンフロントのRRLと違ってポロダンガリーズはジップフロント。当時はビンテージジーンズの流行前でもありボタンフライは面倒という雰囲気だったのかもしれない。

(11) アウトシーム
ある時耳(セルビッジ)なしデニムをロールアップした写真をインスタに載せたら「折り返していいのは耳付きだけ」とコメントを貰った。残念ながら写真のポロダンガリーズはブーム以前の製品。flat-felled seam(折り伏せ縫い)で耐久性を高めた仕上げだと赤フラッシャーに書かれている。

(12) デニムジャケット
通称白タグのデニムジャケット。上のポロ表記がメンズで下のポニーマーク入りラルフローレン表記がレディスもの。これがシャツだとメンズなのにラルフローレンのタグが付くからややこしい。オークションやフリマではレディスものをメンズのカテゴリーに出品してしまうセラーがちらほらいる。

【参考資料①】
〜90年代のタグ〜
どちらも正規品。ラルフローレンタグのマドラスシャツはアウトレット専売品と勘違いするブログもあるがそれほどタグが複雑な証拠…そこで会社は2000年代にCI(コーポレイトアイデンティティ)を行い青地に黄色のPOLOに統一したが評判が良くなかったのか最近昔のタグを次々と復刻させている。

(13) 白タグの類似バージョン
レディスの白タグか?と思いきやダンガリーズの部分がラフウェアに変わっている。NY本店で1990年に購入したがかなりイレギュラーなタグだ。ベリーラルフな鹿の子編みのこのポロシャツ、実は男女兼用だったりして。巷にはラルフのタグ蒐集家もいると聞く。さぞディープな世界に違いない。

(14) カバーオールのコーデ
カバーオールのコーデをオールラルフで組んでみた。ベルトとワークシャツは第一期と第二期のRRL。ネイティブラグのベストがポロレーベルでデニムとカバーオールが今回の主役ポロダンガリーズ。脇役のステットソンフェルトハットにホワイツのセミドレスを従えアメリカンブランドでひとくくり。

(15) 着てみる
撮影場所は東京でも大混乱となった大雪が残る信州。ウエルト靴の限界か撮影中足先が冷たくなる。やはり雪の屋外はビーンブーツ+ミニカイロが最強だ。肝心のカバーオールはウールのライナー付きですこぶる快適。意外なのがコットンのバンダナ。ただ巻いただけなのに思いの外暖かいことを発見。

(16) ポロダンガリーズのデニムパンツ
ポロダンガリーズのジーンズは直輸入ながらお値打ち価格。デパートのインショップに並ぶようになるとあちこちで買い漁った。中でも一番下のブラックデニムは渋谷の「ミウラ&サンズ」で買ったお宝もの。シップスの前身にして伝説のセレクトショップは今も店構えや店内の様子を鮮明に思い出せる。

(17) ヒップポケットの意匠②
こちらは同じポロダンガリーズながらヒップポケットのステッチが横一直線のタイプ。やはりRRLに引き継がれるデザインだ。頑丈で耐久性のあるキャンバス地にユーズド加工を効かせた外観は「ビンテージウェアのような服を作って売る」というラルフローレン氏の構想を具体化したような逸品だ。

(18) デニムジャケットのコーデ
さてお次は(12)で紹介したポロダンガリーズのデニムジャケットのコーデ。ライナーの有無やアメリカ製とNIES製品に分かれるなど古着ショップでも玉石混交だ。トラッカージャケットとも言われ、中には両脇ポケット付きのものもある。国内で購入したがLサイズは大き過ぎたようだ。

【参考資料②】
〜ポロの今季もの〜
こちらはポロ公式オンラインショップより写真を拝借したもの。ポロカントリーバージョンで今季リバイバルさせている。ボトムスのポロチノと合わせて当時のラルフローレン好きにはたまらない雰囲気だ。惜しむらくはアメリカ製ではないところ…価格が高かったとしてもアメリカ製なら買う気満々なのに…。

(19) バンダナまとめ買い
代わりにオンラインショップでまとめ買いしたアメリカ製のバンダナ。今更…とも思うがネクタイをしなくなった今、差し色代わりに何色あっても困らないアイテムだ。インポートものには珍しいリーズナブルな価格が嬉しい。今回は定番の赤を巻いてみたがおいおい他の色も試してみたい。

(20) 着てみる②
朝日が差し込む庭。マイナス4℃と暖冬の東京では味わえない寒さだ。ライトウエィトのワークパンツは思ったより暖かい。むしろセミドレスやその次に履いたレッドウイングが意外と深雪に弱いことを発見。こんなに積もっているなら厚手のウールラグソックスを持参すれば良かったと後悔…。

ポロダンガリーズについて英語や日本語で入力して調べたが中々有力な情報が出てこない。そんな中で大須の古着屋FEEETさんの日記(ブログ)を読むと最初期のサブブランドであるポロウェスタンがGAPとコラボしてできたことや歴代のタグをイラストで紹介するなどかなり深掘りしている。

肝心のポロダンガリーズは「詳細がはっきりしておらず未だ多くの謎が残っている」と結んでいる。発表年でも分かれば良いが始まりが不明なままでは致し方ない。とはいえポロダンガリーズがその後のポロカントリーやRRLに与えた影響について言及するなど当ブログとスタンスは同じだ。

世界一高価なスーパーカーは4億9千万円だがビンテージカーの最高額は184億円、こうしている間にも価値は上昇し続けている。既にビンテージとしての資格は十分なポロダンガリーズ、ラルフフリークの耳目を集めるのも遠くないだろう。

By Jun@Room Style Store