四国遊山(上巻) | Room Style Store

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2024/03/31 10:12


何十年ぶりかで四国を訪れることになった。その名のとおり4つの県で構成された四国は海と山とが織りなす豊かな自然が特徴、歴史ある名城や神社など必見のスポットも多い。ところが2022年インバウンド客の宿泊動向を見ると最下位は高知県、下位10県に徳島県と香川県が入り、最も健闘している愛媛県がベスト22位だった。

四国は「地味」という地元の声もSNS上では散見されるが、インバウンド客の少なさが「旅情を楽しむ」日本人には絶好の旅行先という側面もある。外国人観光客が増えすぎてインバウンド価格まで出てきたニセコや京都、東京の築地界隈と違って今回の旅行で出会った観光客は皆ゆったりと日本の魅力を満喫していたようだ。

そこで今回は久々の四国旅行の様子を3回に分けて紹介してみたい。

※写真は雨の羽田空港

(1) 空路高松へ
実は今回の旅のメインは国内唯一の定期寝台特急「サンライズ瀬戸」に乗ることだった。ところが一ヵ月前の予約は秒殺で完売。仕方なく空路を選んだが出発日は正に春の嵐、「悪天候で引き返す可能性」がメールで届くなど波乱含みの中定刻遅れで離陸した。一安心もつかの間、最後の最後で高松空港への着陸のやり直しとエンジン全開の急上昇に思わず緊張する。

(2) 高松駅へ
結局高松空港へは2回目で着陸成功。1時間遅れでJR高松駅に着いた。コンコースは観光客で賑わっているが外国人観光客は少ない。上野と同じ頭端式のホームは終着駅の雰囲気が漂い旅への期待を高める。ネット上では高松(香川)と松山(愛媛)のどちらが都会か論争されていたが結果は高松…なるほど駅の雰囲気は中々立派だ。

(3) うどん王国
香川県は全国で一番うどんの消費が多い県。かの有名な「讃岐うどん」の本場とくれば当然か…敢えて朝食を軽めにして飛行機に乗ったので昼時で行列の出来るうどん店に並んだ。「めりけんや」はチェーン店だが地元民も愛用するなど評判は上々、雨にもかかわらず外にまで行列が出来ていた。傘立ての傘の多さが味を物語る。

【参考資料①】
〜メニュー〜
頼んだのは勿論「小」の玉1つ、それもシンプルなかけうどんだ。セルフ式なので注文後はゆでたてのうどんにつゆをかけたどんぶりを受け取ったら次に薬味や天かすを好みで入れる。立派なタヌキうどんの完成だが会計のレジ前に並ぶ「てんぷら」に心動かされる。しかも値段が安いので一つ二つと取って会計に進む客は多い。

(4) セルフサービス
丁度昼時ということもあり「とり天」を選んで会計を済ませ早速うどんを食す。香川うどんの名店2024年で4位に選ばれただけあってうどんも美味いがつゆが良い。讃岐うどんのつゆはイリコや昆布に節類が基本とのこと。中でも昔から使われていたイリコは讃岐うどんのつゆの決め手だとか。因みにイリコと煮干しは同じとのこと。

(5) 高松築港
名物讃岐うどんを味わったら高松駅付近を散策…まずはことでんの始発駅「高松築港」へ向かった。改札口からホームを撮影、左はもと京浜急行の1000系、右は長尾線専用車両。昔から旅行が好きで鉄道旅ばかりしてきたせいか今も駅舎やホーム、車両を見ると自然と吸い寄せられる。乗り鉄でも撮り鉄でもないが鉄分濃い目なのは自覚している。

(6) お堀とことでん
お堀の先に見える艮櫓(うしとらやぐら)は1677年に建てられた由緒ある建築物。1967年に現在の場所に移築されたとのこと。高松城そのものは天守が老巧化のため1884年に解体されて現存しないが濠や石垣が往時を偲ばせる。その前を走り抜けることでんとのツーショットはなかなか絵になるスポットだ。

(7) 月見櫓
こちらは月見櫓。参勤交代から戻る藩主が乗る船の到着を望み見たとか…そのため本来の名前は「着見櫓」だったとある。右横には小舟に乗るための水手御門があり、参勤交代に出向く際、そこから小舟に乗って沖合(海)に待つ本船に乗り換え江戸に向かったそうだ。実物を前に説明文を読むと説得力も増すというもの。

(8) 高松駅構内
必見場所の栗林公園を散策とも考えたが雨が激しくて断念。高松駅からJR予讃線~土讃線で高知駅へと向かうことにした。南風リレー号に乗り丸亀で特急南風に乗り継ぎ高知には16時39分に着く。リレー号発車まで時間があったのでトランスフォーマー顔のマリーンライナーを撮影。2階建てグリーン車が組み込まれたJR四国5000系の並びは迫力がある。

(9) 南風リレー号
こちらが南風リレー号。ただの電車に見えるが韋駄天ぶりを発揮する。因みに高知までは切符と特急指定券で一人5,780円だが2名だと回数券割引で合計7,100円。一人当たり3,550円と超お得だ。事前にスマホでネット予約しなくて大正解。おかげで雨による予定変更もスムーズだったしみどりの窓口で賢く切符を買えたし言う事なし。

(10) 丸亀駅
乗換駅の丸亀で特急南風を待つこと暫し。外を覗くも「丸亀製麺」の店は見当たらず。それもそのはず丸亀はおろか「創業者は香川県と関係なし」だとか「本場とは全く味が違う」や「無関係なのに丸亀を名乗っている」など厳しい意見がネットに上がったそうだ。とはいえ丸亀市と運営会社のトリドールとは現在協力関係にあるという。

(11) 特急「南風」
間もなく特急「南風」が入線。車両は最新の制御式振り子機能を備えた2700系だ。カーブ手前から予め車体を内側に傾け遠心力の掛かるカーブを速く安定して通過、直線に戻るとスムーズに車体が立ち上がるという優れもの。車体を傾けて曲がるバイク乗りには馴染みのある動作だ。自由席は満席状態だが指定席は殆どが空席。

(12) 阿波池田駅
途中阿波池田で停車。イベント列車「四国まんなか千年ものがたり号」が入線するとかつて甲子園で名を馳せた「池田高校」の蔦監督をイメージした着ぐるみ「つたはーん」が出迎えるという。特急南風の場合は降り立つ人もまばらで駅はひっそり。架線のない非電化路線は駅がすっきりして見栄えが良い。

(13) クラフトビール
車中で午後のミニ宴会。こちらはクラフトビールのゴールデンマイスター。なんと化粧品で有名なDHCが御殿場にある工場で作ったとか。できれば高松の地ビールを…と思ったがどれも素敵なビン詰めばかり。ドラマ「居酒屋新幹線」のように栓抜きを持参しなかったことを悔やむも最終的に缶のクラフトビールに落ち着いた。

(14) 金陵「濃藍」
一方こちらはビールで喉を潤した後の日本酒。地元香川の酒蔵「西野金陵」の「濃藍」をチョイス。地元の酒米「オオセト」を使用した爽やかな果実香となめらかな口あたりが特徴らしく評判も上々だ。途中予讃線から土讃線に分かれる多度津町のふるさと納税返礼品にも選ばれている。下に見えるのはおつまみがわりのあなご飯(弁当)。

【参考資料②】
〜旅行用バッグ〜
今回の旅行は何とこのデイパック一つだけ。下着と靴下に替えシャツとデニム、あとは部屋着を超コンパクトにまとめて身軽な旅を実践してみた。因みに何の変哲もないカモ柄のリュックだがれっきとしたアメリカ製。名前はドリフター。アメトラ好きはリュックを新調するにもMade in USAに拘る。

(15) 特急「南風」交換
途中土佐山田駅で珍しく6分間の停車。列車交換のためだが高知方面からやってきたのはなんと南風。同じ特急同士の交換は絵になる。ホームですれ違いざまを撮影。ぎりぎり重ならずに上手く撮影できたので満足…。乗客はホームに降りてストレッチをするなど思い思いの時間を過ごしていた。

(16) 後免駅
四国は珍しい名前の駅が多い。こちらは後免(ごめん)駅。「ごめんなさい」の御免とは字が異なるがここから奈半利(なはり)まで第三セクターの土佐くろしお鉄道が運営する阿佐線の始発駅でもある。ごめん・なはり線と呼ばれるが「ごな線」と略されることもあるとか。響きが「ごめんなはれ(=失礼しますの意)」に聞こえて心が和む。

(17) 高知到着
さて本日の終点、高知に到着。駅前に巨大な三人の銅像が並ぶ。幕末に活躍した土佐藩の三英傑で正しくは「三志士像」と呼ばれているそうな。左から武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎と並ぶ。あまりに大きくて全て写真に入らなさそうなので坂本龍馬を中心に木立ちの間から写真撮影。

(18) 市電を満喫
午前中春の嵐で高松空港への離陸をやり直したほどの悪天候はどこへやら、青空の広がる夕方の高知市内。高知名物色々あれど土佐電気鉄道の路面電車もその一つ。昔は「とでん(土電)」と読んでいたそうだが都電と混同しないよう若い世代は「とさでん」と呼ぶようになりつつあるとか。

(19) ひろめ市場
ホテルにチェックインしたら歩いて「ひろめ市場」へと繰り出した。高知最強のグルメスポット、食の魅力満載と心躍るキャッチフレーズが並ぶ。テーブル席を囲むように食事どころやおつまみからデザートにドリンクまでなんでも揃うフードコートスタイルが売り。夕方5時過ぎだというのに席を探すのに苦労する。

(20) 高知の酒
まずはおすすめの高知の酒を手配する。司牡丹酒造の「自由は土佐の山間より」という名の端麗にして超辛口、切れ味抜群の日本酒がお薦めだとか。料理の美味しさが倍増するらしい。お猪口を二つ貰ってテーブルに着いたら次はおつまみを探す。高知に来てカツオのタタキを食べずに帰られない。

(21) カツオのタタキ
高知ならではの食べ方といえば「塩タタキ」。カツオのタタキを塩とスライスしたニンニクにわさびを添えて口に入れると驚きの美味さ。味のしっかりとしたカツオを引き立てる最強の薬味だ。古くから土佐の漁師に伝わる食べ方だそうだが間もなく4月、既に初ガツオのシーズン到来らしく至福の味を堪能した。

インバウンド客の動向は「日本語の壁」があるためアクセスのしやすさが鍵、高松空港や松山空港は国際線も運行しているが東アジアの国(上海・台北・ソウル)に限定されている。高知空港は国際線ターミナルがなく週2便チャーター機が台湾から、徳島空港はLCCが韓国から乗り入れているのみ。隣国のインバウンド客をちらほら見かけただけなのも合点がいく。

地元住民が路線バスに乗れない京都市や人口4000人の町に40万人もの観光客が訪れる同じ京都府の伊根町にとどまらずオーバーツーリズムは各地で問題となっている。幸い高松空港から高知まで初日の旅は混乱と無縁の快適な旅だった。オーバーツーリズムのない穴場を求める日本人が増えているそうだが実際自分もインバウンド客と無縁の地を選んだ節がある。

この6月から国際観光都市ベネチアは住民の要望もあり観光客の受入制限が始まるそうだ。団体客の制限や拡声器の使用禁止、入場料の徴収などらしい。初日で四国の魅力にすっかり魅せられたが今や情報化の時代、アクセスし辛さや言葉の壁を跳ねのけても四国を目指すインバウンド客は増えるに違いない…そうなる前に次はバイクで一周などと思い始めている。

By Jun@Room Style Store