2020/09/23 10:18
残暑も峠を越えたと思っていたら、早くも信州の朝夕は10℃を下回って来た。涼しいというよりも肌寒く、朝夕はウールニットやツィードの上着が欲しくなる。以前も書いたが、日本の最北端稚内(北緯45度)よりも北に位置するスコットランドのエジンバラ(北緯55度)では夏でもツィードジャケットを羽織る習慣があるのか街中で何度も見かけた。信州の田舎家もスコットランドとよく似た気候なのでツィードがよく似合うと感じている。
ここで住み慣れた都会から定期的な田舎暮らしを進めていることもあって、衣類も自宅用と田舎用に分けて置くようにしている。が、ここで悩ましいのがツィードの服…冬になれば都会でも重宝するが信州では早くもツィードの季節が到来している。結局は半々に収納することにしたが、秋が深まれば「自宅においておけばよかったのに…」と後悔しそうな気がする。田舎暮らしとジーンズでジーンズが田舎暮らしに欠かせないアイテムだと書いたが、ツィードの服もまた田舎暮らしの必需品なのだ。
そこで今回は信州の田舎家を舞台に着こなしを交えながらツィードの魅力を考えてみようと思う。
(1) ハンツマンのスーツ

ツィード生地の配色はスコットランドの自然から生まれたもの、せっかくなので木立の中で撮影してみた。ツィードの3ピースはフルセットで着ても良いがそれぞれ単品で身に着けられるのが特徴、もし気に入ったツィード生地で上着を作ろうと思ったらウェストコートとパンツをセットにして3ピースをオーダーするのがお薦め…ここでは共布のハンチングを携えているが、同じくとも布で作ったネクタイとブーツをどう組み合わせるか…あれこれ考えるのもまた楽しからずや。
Suits : Huntsman
Cap : Huntsman
Shirt : Turnbull & Asser
Tie : Barneys NY
Chief : RODA
Shoes : Edward Green
Socks : Brooks Brothers
(2) Vゾーン

シャツは同じ英国のターンブルアッサー、ジャケットの袖がガウントレットカフになっているのでがシャツはターンナップではなくボタンが3つのバレルカフタイプをチョイス。ネクタイはバーニーズのもの。シルク&ウールの小紋柄だがツィード生地の格子柄の青に合わせてチョイスしている。チーフはイタリアはRODA。小判なので挿しやすいのが嬉しい。
(3) 3点セット

こちらが3ピーススーツと共布で作った残りの3点セット。ジョージクレバリーの誂えブーツはホーウィン社のコードバンを用いてノルヴェで仕上げたもの、タイとハンチングキャップがハンツマン内製ものになる。まずはベストとタイ、ジャケットとキャップ、パンツとシューズといった無難な組み合わせから入り、徐々にフルセットを目指したいところだ。
(4) SPEZZATOな着こなし

SPEZZATOとはイタリア語で「2つに割れた」を意味するそうで、スーツや三つ揃いなど元々セットアップされたアイテムを単品使いしたり、パンツを履き替えたりしながら着こなしに変化をつけることを指すようだ。ハンツマンの3ピースにデニムを合わせるのもSPEZZATOな着こなしということになる。ハンツマンのように正統派テイラーのジャケットに合わせるならば洗いをかけて幾分色落ちしたデニムがよく合う。ここではタイを格子柄の中の1色、オレンジにしてみた。
Jeans : Big John IVY slim
Tie : Liverano & Liverano
(5) SPEZZATOな着こなし(その2)

ここでは初めてビスポークしたドネガルツィードの3ピースにRRLのデニムを合わせてみた。スーツはロンドンのサックビルStに店があった頃のFallan&Harvey、今はサビルロウのDavies & Sonの傘下になっている。田舎暮らしに相応しいジーンズとツィードの着こなしだがネクタイを締めれば麓のレストランでランチと洒落ても悪くない。
Suit : Fallan & Harvey
Shirt : Hackett
Tie : Polo Ralph Lauren
Denim : RRL
Socks : Brooks Brothers
Shoes : Chukka(CrockettJones)
Bag : Ralph Lauren
(5) Vゾーン(その2)

こちらは旧HACKETTのタッターソールシャツ。生地は正統派?のネル素材で昔のものらしくゆったりと作られているのが特徴。これに履き込んだ色落ち感がポイント高し…のRRLデニムを合わせ、ネクタイも同じポロのクレストタイを、ついでにバッグもドレスゴードン柄のラルフをチョイス、アングロアメリカンな着こなしになっている。因みに靴はポールセン&スコーンのアンラインドチャッカ、クロケットが製造を引き受けている。ポールセン&スコーンの名は既にないが販売店のニュー&リングウッドはまだ健在だ。
(6) Weekend Tweed

その名もWeekend Tweedという名の生地(ホーランド&シェリー)を使ったジャケットはお馴染みのFallan & Harvey特製。ポケットがウィンザー公ゆかりのムーンポケットになっていたり当時の狭い3ボタンの雰囲気をそのまま残したりして少々アバンギャルドなデザインになっているのがまた楽しい。グレーのトラウザーに履き替えればそのままオフィスワークでも通用しそうなジャケットだ。
Jacket : Fallan & Harvey
Shirt : Polo Ralph Luren
Tie : Kamakura Shirt
Pants : Incotex
Shoes : Ghillie(CrockettJones)
(7) Vゾーン(その3)

ツィードの表面はざっくりとした織りが特徴、軽めの生地ということもあってブレザーのように軽快に羽織れる。Vゾーンが狭いので合わせるシャツは小ぶりな襟のタイプが欲しいところ。ポロのドレスシャツはたいてい襟が小さいのでフィットする。襟が小さくなるとディンプルが小さくなるネクタイが必須、芯地の薄いウールタイを探していたところピッタリな1本を鎌倉シャツで見つけた。生地はスコットランド製、日本で縫製している逸品だ。
Chief : KENT
Gloves : MEROLA
(8) イタリアのツィードジャケット

英国贔屓といわれるフィレンツェ、名店リヴェラーノの当主アントニオさんもスーツやジャケットを作る時よく英国製の生地を薦める。写真のジャケットも「古いスコットランド製のツィード生地がある…」とのことで是非と作って貰ったもの。一目見ただけで英国製とは違う佇まいが分かるだろう。フィレンツェの伝統的な仕立て「サルトリアフィオレンティーナ」と呼ばれるものだ。
Jacket : Liverano & Liverano
Shirt : Luigi Borrelli
Tie : Polo ralph Lauren
Chief : Seaward & Stearn
Pants : G.T.A
Boots : Chukka(CrockettJones)
(9) Vゾーン(その4)

2000年頃フィレンツェにあるリヴェラーノのアトリエを訪れていた頃はシャツの棚にルイジボレッリとのダブルネームがずらりと並んでいた。時には完成したジャケットにシャツをプレゼントしてくれたこともある。そんなこともあってかリヴェラーノを着る時は大抵ボレッリのシャツを合わせている。ネクタイはパンツのからし色を拾った格子柄を探して引っ張り出してきたポロのビンテージタイ。英国製のチーフとの愛称も良く英米伊のミックスコーデも丸く収まったようだ。
(10) 番外編ツィードのコート(その1)

ツィードジャケットの代わりにツィードのカーコートを着てみた。写真はGrenfellの英国製ツィードコート、取り外しのできるウールライニング付きでポールスチュアートが別注したものだ。写真(5)のウェストコートとジャケットの代わりにコートを羽織ってみた図。ツィードの上着は都会でもOKだがやはり自然の中でこそ引き立つ。
(11)番外編ツィードのコート(その2)

グレンフェルの通常ラインはコーデュロイか又は共布の襟のようだが、そこは別注名人ポールスチュアートらしくレザーになっているところが憎い。Aラインでウェストが絞られたシルエットは着手を格好よく見せる効果があるようだ。ベルトはこれまた昔懐かしマルベリーのメッシュベルト(初期の英国製)。
ロンドンのテイラーでもイタリアのサルトでも随分と仕事用のスーツをオーダーしてきたが今思えばシティスーツはほどほどに、もっとツィードスーツやジャケットをオーダーしてくればよかったと思う。仕事着はやがて着る機会がうんと減る一方、ツィードもの(ドスキンのブレザーなども…)はいつまでも着られるだけでなく、時が経てば経つほど着る機会が増えたり生地の風合いや着心地も良くなってきたりということに改めて気づいた。
そう考えるとテイラーやサルトで頼むべきはシティスーツよりもカントリースーツ(ツィードやコーデュロイなど)ということになる。近いうちに名古屋でハンツマンのシニアカッターだったロバートベイリーを呼んでトランクショウを開こうと考えている。ハンツマン譲りの完璧な柄合わせや、一方では一つボタンのハンツマンスタイルにとらわれないレンジの広い英国調ツィードジャケットを手にする機会なので興味のある方はぜひ当Room Style Storeにコンタクトしてみて欲しい。きっとインベストメントクロージングに出会えると思う。
by Jun