2021/06/20 07:14

いつから服を定価で買わなくなっただろう。どんなものもセールになると知ってから価値観は大いに変わった。多分25年前にビスポークに目覚めたのも変化の一つ。そして今ビンテージクロージングに答えを見出そうとしているのも変化の一つに違いない。
ビンテージウエアには価値の変化がない、いや時を経るごとに価値の上がる骨董品のような趣さえある。中でもジーンズは50年は当たり前、100年経っても綺麗に残っている。数ヶ月、数シーズン後には半額以下で売られているのを見てガックリすることもない。
(1) 66前期を凌ぐBigEの入荷

今回紹介するのは66前期のビッグEシリーズ502、勿論NOS(NewOldStock)だ。今ビンテージジーンズが盛り上がりを見せているが、前回の主役が501XXだったのに対して今回のブームを前に注目されているのがこのビッグEと前々回紹介した66モデルなのだそうだ。
(2) シルエット

66モデルの502(501)は歴代リーバイスの中でも最もテーパードの効いた細身のストレートが特徴。ビンテージリーバイスを履くなら66モデルと言われる所以だ。ブーツもローファーもイケそうなシルエットに加え股上もローライズではなくハイウェスト気味なのが嬉しい。
(3) 紙パッチ

ジーンズを重ねて保管してきたのだろう。藍色がパッチに移ってモデルの型番502-0117が見えない。W30L33の表記だが日本向けに一度洗いが入り、実寸は胴回りが74.5㎝で股下が78.5㎝と既に縮んでいる事が分かる。今ならこのあたりも黄金サイズに入ってきそうだ。
(4)ギャランティ

フラッシャー下のギャランティは110周年…1970年代中頃まで使用されていたものだ。前々回紹介した502がスモールeで100周年ギャランティだったのに対して今回はビッグEでギャランティが110周年。ギャランティと赤タブ表記がクロスしているのもリーバイスらしい。
(5) フロント周り

折り皺はあるが綺麗な状態のデニム地。実は綿製品にも虫食いがあるのご存知だろうか?幸い古いデニムは防虫効果のあるインディゴ染めなので虫食いは一切ない。慌てて自宅の綿製品に防虫カバーをかけた(汗)。
(6) 米国製のシール

(7) 赤タブの裏表

(8)ジッパー

タロンとスコービルが502に採用されたジッパー。タロンの方が多いとのことだが、開閉不良を考慮してプリシュランクした502を日本市場に輸入した個体にスコービルが多いところを見るとウォッシュ後の動作はスコービルの方が良かったのかもしれない。
(9)フラッシャー

フラッシャー表記は前々回同様©︎1966、66モデルの証だ。1971年に赤タブ表記がEからeに変更、本国での502生産中止と日本向けのみプリシュランクとして継続したこと、ギャランティの110周年と併せて考えるとこのジーンズの製造年は1971年と思われる。
(10) シングルステッチ

念のためバックポケット裏をチェック。教科書どおりのシングルステッチだ。66モデルも後期はチェーンステッチになる。1973年までの502には内タグが付かずスレキスタンプなしもあり、ディテールから正確な年代割り出そうとついつい熱が入る。
(11)黒カンとステッチの色移り

隠しリベットがなくなり工業製品としての縫製技術が進歩した証の閂止め。オレンジ色の染みは折り畳んで過ぎた50年の間にステッチから色移りしたもの。ビンテージならではの現象と言えるだろう。
(12) フロントボタン裏とリベット

フロントボタン裏の16番は502の証、チェックポイントもだいぶ覚えてきた。リベットに目をやるとコインポケット下のリベットなど既にサビが出ている。これもビンテージジーンズならではの現象だろう。
(13) セルビッジ

定番のコーンミルズ製耳付デニム。リーバイスでは83年から86年にかけて順次耳なしに置き換えられたが今「耳有り」と「耳なし」では値段が倍近く異なる。当時の製造者はそんなこと思いもしなかっただろう。
(14)コインポケット裏

コインポケット裏は赤耳付。個体差があるらしいが付いていると嬉しい。立派なセルビッジフェチだ。それにしてもビンテージジーンズは何と個体差の多いことか…そこに惹かれてファンになる人も多いと思う。
(15) デニム&ブーツ

さて、靴は何を合わせるか…ローファーもいいがビンテージジーンズならば無骨なブーツが良い。前回のジーンズ流行期はアメカジ寄りだったが、デニムのブーム再来と言われる今、若い人達はどんな着こなしを見せてくれるだろうか。楽しみにしていたい。
(16) コーディネート

ビンテージジーンズを何と合わせるか…一見悩みそうだが結局のところ普段どおりが一番だ。出戻りライダースとしては目下バイク用に合わせてジーンズを履くことが一番多い。50年前のバイクとジーンズで気分だけでも70’sにスリップしたくなる。
Jacket : RRL Jeans 502BigE
Boots : Polo Ralph Lauren
Belt : RRL
T shirts : CAMBER & HOUSTON
(17) ジーンズと白Tシャツ

ビンテージジーンズに合わせるならジェームスディーンではないがシンプルな白Tシャツが一番だとも思う。写真はアメリカ製に拘った白Tシャツ。首元のリブが直ぐにヨレないCAMBERはお薦めだ。HOUSTONは初購入…早速試してみたい。
(18) アクセサリー

ビンテージジーンズのアクセサリーなら何といってもインディアンジュエリー。どれも一点ものが並ぶ中から琴線に触れるものを見つけるのが実に楽しい。ターコイズとシルバーの相性はジーンズとブーツの相性に匹敵すると思う。
(19) ビンテージウエア目指して

購入後3年が経過したライダースジャケット。既にアタリも出てきて良い感じに育っている。将来息子が着てくれたらさらに味の出たビンテージクロージングになるかもしれない。世代を超えて愛用できる…今や物選びの大切な視点だ。
大手百貨店の売り上げは20年比で増加とはいえコロナ前の2019年比では依然減少のまま、厳しい状況に変わりはない。これが小売業では更に深刻で馴染みのジーンズショップも未だ半額セールを続けているが、売れ筋は3000〜4000円代のTシャツなどファストファッションと重なる価格帯を皆選んでいる。
そんな店の片隅に50年以上前のデニムを探し当て、4本も手に入れられたことは奇跡、それがビンテージものへの情熱を更に駆り立てている。できることなら身の周りのものを誂え品とビンテージもので揃え、足りないものだけ既製品を買う…そんな生活をしてみたいと思うのだ。
by Jun@RoomStaff