2022/02/08 16:18

NYトラッド3名店…アメトラ好きはすぐピンとくるだろう。ブルックスブラザーズにポールスチュアートとラルフローレンのことだ。NYのマディソン街を72丁目のラルフから45丁目のPスチュアートを経由して44丁目のブルックスまで歩く…タクシーや地下鉄でのトラブルを避けたいという理由もあったが街を知るには歩くのが一番、アメトラ好きの自分には最高のショッピングコースだった。
実は東京でも最近までラルフ、Pスチュアート、ブルックスと同じ順番で買い物が楽しめた。表参道を歩いて青山通りを左へ…星条旗と日本の国旗が下げられたゴールのブルックス本店が見えるとマンハッタンを歩いてるような気がしたものだ。ところが2020年にPスチュアートとブルックスが相次いでエリアから撤退、最もお気に入りのショッピングコースが消えてしまった。
コロナ禍のご時世ではそれも致し方ない…短時間の買い物やネットの活用が推奨され、店員と談笑しながら買い物を楽しめる状況にはない。そこで今回は”NYトラッド三昧”と題してNYや東京の思い出を織り交ぜつつコロナ禍での調達品を紹介してみたい。
【ラルフローレン】
NYでも東京でもショッピングコースの最初はいつもラルフローレンから…英国スパイス強めのアメトラ直球もさることながらウェスタンやネイティブ、ヴィンテージなど次々繰り出す変化球にNYでも東京でも魅了されっぱなし…売り場面積は大きくないけど店内を見て回るといつの間にか時間が過ぎて財布が軽くなる魔法の店だった。
(1) 古着店で買う

ラルフといえば昔買い逃したもので一番後悔しているのがネイティブラグのアイテム。なにしろ入荷は僅かで買い逃せば次はない…そんな勢いだった。最近一回りして再びラルフブームらしいが柄の鮮やかなネィテイブものはずっと前から人気がある。写真のベストも偶然古着店で発見。昔買い逃した逸品にようやく巡り合えた。
(2) コンチョ

ウェスト部分に付くコンチョ(ボタン)。実はこの形が曲者でネイティブラグはコットン100%。ジャケットに仕立ててボタン穴を開け、コンチョで留めると先端が服地と擦れて傷んでしまう。古着のネイティブものは大抵ボタン穴周辺に難ありだ。このベストは両コンチョを革の細紐で結ぶタイプ…ボタン穴がないおかげで身頃が綺麗なままだった。
(3) Made in USA

ブルックスの傘下だったサウスウィックが廃業する際、商標権を買い取ったSHIPSがNY州にある工場に依頼してアメリカ製を復活させたようだ。新生サウスウィックも将来古着としての価値が高くなるだろう。何しろ写真のベストのようにMade in USAがあるだけでラルフのアイテムも希少性が高くなる。
(4) ラグベストの配色

Serape(セラーぺ)と呼ばれる鮮やかなストライプにオルテガ柄を混ぜて織り上げたラグをショールカラーのベストに仕立てたもの。グラデーションは異なる色の糸を織り交ぜながら徐々に濃淡をつけている。身頃両脇のポケットは実用性というにはあまりにも浅い。単調になりがちなデザインに対するアクセント代わりか…。
【参考資料】

こちらはよく似たファブリックの検索結果。EtsyのSunnySlopeFarmsから写真を拝借したが、ウェスタンやサウスウェスト或いはセラーペで検索するとヒットする。よく言われるネイティブにはオルテガ、チマヨ、ナバホなどさまざまあるらしい。そうしたネイティブとウェスタンやメキシカンが入り混じった独特の文化をサウスウェストスタイルと呼ぶとのこと。
(5) サウスウェストかサンタフェか

サウスウェストスタイルはニューメキシコやアリゾナからユタやネバダと広範囲だが、よく似たサンタフェスタイルはニューメキシコのサンタフェを中心にメキシコ民族衣装とネイティブやカウボーイのスタイルを取り入れたエスニックルックとのこと。歳をとると派手な服が好きになるせいか最近サウスウェスタンやサンタフェスタイルに興味がある。
(6) ビンテージタイ

ここでようやくアングロアメリカンなラルフらしいアイテムを…幅広タイで商売を始めたMrローレンに敬意を表してゲットしたのは裏地のないビンテージタイ。ウールタイの風合いを残しつつ裏地を省いてるのでディンプルが小さくまとまる。そういえばラルフのネクタイもアメリカ製は遠い昔…今はイタリー製だ。
(7) ツィードジャケットとの相性

試しに結んでみた図。襟が小ぶりなラルフのBDシャツでもディンプルが大きくなり過ぎないのは助かる。それにシルクものだと光沢があるのでネクタイが浮きがちだがウール素材だと互いに馴染む。最近はネクタイをする機会も殆どないがツィードジャケットを着る時はシャツとネクタイが一番、そんな時重宝するタイとして選んだ。
【ポールスチュアート】
英国スパイス強めのラルフ、生粋の米国調ブルックスに対してPスチュアートは粋という言葉が相応しい。NYや銀座、表参道どの店のショーウィンドウも見事なディスプレイだった。ライトグレーのスーツに鮮やかなネクタイを締め濃茶のブローグを履いたマネキン…カタログと合わせて随分着こなしの参考にさせてもらった。
(8) 名靴をラインナップに加える

ポールスチュアートで手に入れたのは久々の英国靴。靴の中にはあまりにも履き心地が良くて今のうちに「後釜を買っておこうか…」と思わせる名靴があるが、実はこのブーツもその一つ、名前はずばり「CHUKKA(チャッカ)」だ。初代から数えて3代目のはずが2代目が人手に渡り控えは空席のまま…ようやく後継が決まったという訳だ。
(9) ポールセン&スコーンの継承者

(10) 色で選ぶ

靴の色はアースグリーンと洒落たネーミング、色違いでスナッフ(かぎたばこ)スェードもあるが初代と同じ色なのでグリーンを選択。昔なら買わない色だったと思う。自分のキーカラーがグリーンと知ってからはOpie WayのスニーカーもFilsonのマッキノウトラウザーズもグリーン系。色の好みも次第に変わるものだ。
(11) 試着してみる①

ハンツマンのツィードスーツとドッキング。チャッカブーツは秋冬限定、しかも起毛革のスエードとなればここはツィードと行きたいところ。足入れすると初めてポールセン&スコーンを履いた時の感動が蘇る。製造はクロケットジョーンズ、シングルとはいえソールは硬めだがアンクル部分の快適さは巷のチャッカブーツを凌駕する。
(12) 試着してみる②

クロケットの中で唯一Dウィズなのが名ラストの呼び声も高いLast 200。アメリカのブランドはDウィズ別注が多いがクロケットはEウィズが標準だ。訳すと「球根状のトゥに細身のウェストライン」が特徴のこのブーツ…クロケットが自社ECサイトを開設するまで長い間ノーザンプトンのBodileysかPediwearでしか手に入らなかった靴だ。
(13) ポケットスクエア①

ポールスチュアートといえばネクタイと並んでポケットスクェアも趣味が良い。特に上は正方形を4分割、それぞれに柄を印刷したもの。1枚で4通りの差し方ができるポケットスクェアというのが売り。ちろん全部見せでも破綻しないよう柄と色の相性を考えている。素材は薄手のコットン/シルク。春夏のスーツやジャケットに合いそうだ。
(14) ポケットスクエア②

4通りの楽しみ方ができるポケットスクェアの実力拝見…スーツとシャツにネクタイはどれも同じ、ポケットスクェアの見える部分だけを軽く摘みながらパフで差す。他の部分が見えてしまうので指を使って上手く整えながら仕上げる。ペイズリーや赤のドットを見せる時はネクタイも赤が少し入ったものにすると良いかもしれない。
【ブルックスブラザーズ】
NYでも東京でも買い物の締めくくりはブルックスブラザーズ。世界最古の紳士用品店だけあってマストアイテムは色々あれど一番はオリジナルポロカラーBDシャツだろう。ポロの競技中にシャツの襟がはためかないようボタンで留めたという話はあまりにも有名だ。ブルックスでは何はさておいてもBDシャツは外せない。
(15) 消えゆくアメリカの象徴

ブルックスのアメリカ製BDシャツも終焉が近い。経営再建後も日本のECサイトではアメリカ製BDシャツが存在しているが順次日本製に、本国は既にベトナム製に切り替えが完了したようだ。アメリカ製でないブルックスのBDシャツは買いか?答えは顧客が出すだろうがせめてシャツだけは米国製を貫いて欲しい…というのが正直な感想だ。
(16) ドレスシャツとの違い

最終期のブルックスアメリカ製BDシャツ。ブルックスブラザーズジャパンではアメリカ製のドレスシャツをオンラインで販売中だがスポーツシャツは既に在庫なしのようだ。ガウントレットボタンやアジャスタブルカフにドレスシャツよりも地厚なオックスフォード地…むしろこちらをドレスシャツにしたいくらい出来が良い。
(17) スポーツシャツの着こなし

BDシャツをノーネクタイで着るならローイングブレザーズのジャケットがぴったり。ブルックスのようにかしこまった感じがない分気兼ねなくラフに着こなせる。写真はタータンチェックの上着にブルックスのBDスポーツシャツをインした図。腰にリボンベルトを巻いて素足風ソックスにローファーを履けば気分は春だ。
(18) パッカリングの味わい

BDシャツの魅力はなんといっても洗い立て…今までは糊の効いたシャツを着ていたが、今は洗いざらしで袖の擦り切れた昔のブルックスBDシャツを気兼ねなく愛用できる。写真の新品BDシャツも最初から襟や前立て袖先にパッカリングが出ている。ジーンズじゃないけれど1度洗いをかけて着たいくらいだ。
(19) 襟のロール

タグに書かれたシグネチャーロールドカラー…BDシャツの本家だけに他のBDシャツでは敵わないレジェンドやレガシーを感じる。ブルックスのシャツを請け負っていたノースキャロライナのガーランドシャツファクトリーは復活したが新生ブルックスはシャツの供給契約を結ばなかったとのこと。さてブルックスジャパンは如何に…
(20) 30年の違い

上下のシャツの間には30年の開きがある。それほど長持ちするシャツだから「今のうちに後継のシャツを一生分買う」のも悪くない。人はなくなると急に欲しくなるがあるうちは気にかけないからだ。とはいえこれだけ長持ちするならもう一生分のシャツはあるような気もする。それでもMade in USAを見かけるとつい買うのが悪い癖…。
最新の渡航情報によればアメリカは日本の感染警戒水準をレベル3(感染リスクの高い地域)に指定している。昨年末の感染者数激減から一転オミクロン株の感染拡大にあって状況は思わしくないがそれでもアメリカ側は渡航者の受け入れを認めている。現地の感染状況と日本の国内状況が好転すれば思い切って今年の秋ごろアメリカを訪問する予定だ。
その時はラルフローレンからポールスチュアートを経由してブルックスブラザーズまで久々に歩いてみようと思う。ブルックスの品揃えは変わり、Pスチュアートも日系商社の子会社になって雰囲気が変わったと聞く。ラルフローレンが一人気を吐いて業績を回復したようだが、ひょっとして昔のようなワクワクする気持ちは起きないかもしれない。
その前に蔓延防止特別措置が解除されたら表参道から青山通りを赤坂方面まで歩いて再び渋谷方面に戻るのはどうだろう…昔の定番ショッピングコースからすると随分距離が延びたがラルフにPスチュアートとブルックスの全制覇が可能だ…。
By Jun@RoomStyleStore