2024/05/11 05:54

繊研新聞社が2019年に掲載した社説を読むと1988年には輸入比率が8.8%だったレッグウェア(靴下類)も2018年には83.8%に上昇、その結果1200社あった国内企業は251社にまで激減したという。ブランド向けOEMの減少に加え小売業もかつての勢いはなく、年を追う毎に国内依存を減らした結果が輸入比率の増加に表れている。
更に追い打ちをかけたのが2019年末から始まった新型コロナウィルスの感染拡大だった。「人が外出しなくなる=靴下を履かなくなる」というシンプルな構図により経営環境は厳しさを増し、業界は更なる縮小を余儀なくされたという。コロナ過が過ぎた今操業を続ける各社は必死になって生き残り策を模索していると書かれていた。
奇手妙手はないと言われる中自社ブランドや自販力の強化、新商品の開発に力を入たりSNSによる発信に注力したりといった姿勢はインスタグラムでもお馴染みだ。そこで今回は舶来高級ソックスに負けない商品を開発している日本の靴下業界にスポットを当ててみたい。
【先鋒】
(1) ラグソックス対決

先ずはラグソックス対決から。踵から履き口までリブ編みのL.L.ビーンはこれぞラグソックスの王道と言う雰囲気だが対するビームス+はリブなしで今風ショート丈。これがラグソックス?と思ってしまう。因みに本来のラグソックスについては当ブログの過去記事を参照して欲しい。
(2) ボディの違い

L.L.ビーンの上にビームス+を重ねた図。因みにビームス+では丈が長めのバージョンも用意しているが敢えて今回はショート丈の方を選んでいる。素材はL.L.ビーンがアウトドア向けのウール主体なのに対してビームス+は街履き用にコットン主体。どちらもポリウレタン混紡なので伸縮性は十分だ。
【参考資料①】
国産のウールラグソックス

L.L.ビーンの舶来ラグソックスと同じウール素材の国産品といえば写真のハリソンスコッチウールマウンテンソックスが好敵手。雪の降りしきる岩手の山中、抜群の保温力で足を守ってくれた。ただこの手の靴下は押しなべて肉厚だ。日頃薄手のソックスに慣れた人には足が入らないほど靴が窮屈に感じるだろう。
(3) 口ゴム部分

L.L.ビーンは赤い部分にゴム糸がびっしり入っているのに対してビームス+では霜降り部分との境目まで適度に入っている。手で伸ばしてみた感じでは国産の方があたりが柔らかそうだ。しかもこの記事を書いている5月の時点で夏日を記録するほど…ウール素材のL.L.ビーンはその点でも不利だ。
(4) 先縫い部分

裏返してつま先を見た図。筒状に編まれた靴下の口を閉じてつま先に仕上げるには”先縫い”と呼ばれる工程が必要。その際つま先に横一直線の縫い山が出来るがL.L.ビーンでは黒い山が盛り上がっている。試しに履くと足指に当たる感覚があるがビームス+の方は山がフラット気味なのか違和感なし。
(5) 踵のゴアライン

赤丸で囲まれた部分はゴアラインと呼ばれるもの。人の足に沿うよう立体的に仕上げるには欠かせない一手間だが量産品では難しいとか。それでも「足全体を包み込み踵が靴ずれにくい靴下」に仕上げるには欠かせない一手間らしい。ビームス+ではショート丈ながらも踵にしっかり入っている。
(6) L.L.ビーンを試す

足の形が悪いのかコンバースだと靴擦れしやすいのにL.L.ビーンのラグソックスは実に快適といいたいところだが今の季節には暑くて蒸れやすい。この写真の撮影中でさえ足の甲に汗をかくほどだった。因みに靴はコンバースJPのリアクト。ナイキ傘下のコンバース同様クッション性のあるインソールで履き心地は申し分ない。
(7) ビームス+を試す

一方国産のショートラグソックスは同じビームス+がローイングブレザーズとコラボしたトップサイダーと合わせてみた。履き口の黄色いラインとスニーカーのトラ模様が良い感じにマッチしている。温暖化傾向なのか5月に入ると一気に夏がやってくる日本ではコットン素材のショートラグソックスの方が使い道が多そうだ。
【中堅】
(8) レトロストライプ対決

さて次はレトロストライプソックス。火付け役は左のアメリカントレンチだが右側の後発ロトトはインスタグラムで盛んに宣伝しているので目にした靴好きも多いはず。長めの丈や太番手のコットン糸で編まれたボリュームたっぷりな外観はアメリカントレンチより一回り大きい。まるで一昔前のスポーツソックスのようだ。
(9) ボディ部分

ボディはロトトの方が長いがストライプの位置はほぼ同じ。履いた時のストライプの見え方にこだわった結果だろう。素材はアメリカントレンチがコットン68%でロトトが73%とどちらも吸湿性は問題なし。因みに国産のロトトは"一生愛せる消耗品"がモットーだけに品質へのこだわりを特に感じる。
(10) 口ゴム部分

口ゴム部分はどちらも横に渡したゴムがびっしり並んでいる。ストライプ部分が足下でたるんでは魅力も半減、くっきり見えるようフィッティングはタイトだ。全体的な作りは先発のアメリカントレンチとよく似ているが太番手の糸やつま先と踵の作りなど各部に改良を加えている感じがする。
(11) リブ編み部分(裏側)

裏返してボディ部分を比べてみたところ。白い矢印で示した部分が靴下を足にフィットさせるための糸ゴムだ。アメリカントレンチはややたるませているのに対してロトトでは履く前から適度なテンションが保たれていている。多分履いてみるとその違いがはっきりと分かるに違いない。
(12) フット部分(裏側)

足裏が当たる部分はどちらもロングパイル編み。柔らかな履き心地が持ち味だ。バスタオルに用いられるこの編み方は包まれるような肌触りを味わえる反面引っ掛けやすく毛羽落ちしやすい。ロトトでは”デリケートな商品ゆえに革靴などと合わせるとダメージを受けやすい”と但し書きがあった。
(13) アメリカントレンチを試す

(14) ROTOTOを試す

対するロトトも革靴は避けてスニーカーと合体。アディダスのスタンスミスがほしいところだがここはナイキの薄型テニスシューズで…。ラバーガムソールが如何にもレトロな外観だが弾力性のあるインソール装着とハイテクな一面もある。レトロストライプのソックスには昔顔なスニーカーがしっくりくる。
【大将戦】
(15) アーガイルソックス

先鋒、中堅と2番続いたカジュアル靴下対決、最後はドレスソックスの大将戦となる。舶来勢は米国から英国に替わってパンセレラが、一方国産は靴好きも信頼するハリソン。ともに6Pと呼ばれるダイヤ柄が6個織り込まれたパターンを採用。ギリーシューズを履くなら甲にダイヤ柄が入る靴下が欠かせない。
【参考資料②】
7Pアーガイルソックス

6Pのダイヤ柄を上回る7Pのソックスはコーギーのもの。番手の高い糸で編んでいるためドレスソックスのような艶としなやかさがある。こちらも円安のご時世パンセレラほどではないが1足3,850円とかなりの高値だ。国産の靴下メーカーには6Pで十分だが洒落た配色のアーガイルソックスを期待したい。
(16) ボディを比較

(17) 口ゴム部分

(18) 先縫い部分

つま先の拡大写真。先縫い部分はハリソンの方がフラットな感じだが全体的にほぼ互角の出来栄え。ただし値段は大きく異なる。目下円安ということもあり、パンセレラは4,510円、対するハリソンは1,760円と2.5倍以上の開きがある。値段だけに的を絞れば国産の圧勝だが果たして履き心地や如何に。
(19) 裏返してみた様子

両方とも裏返してみた写真。つま先と踵のゴアラインはどちらも縫い目は平らで長さも充分、立体的な仕上がりが期待できる。注目すべきはパンセレラの足裏部分と甲部分の間に伸びる長い縫い目。ダイヤ柄の先端に接しているので目留めのなのか履き心地に関わるものなのかともかく大きな一手間だ。
(20) パンセレラを試す

ハリソンよりダイヤ柄は大きめだがギリーの甲部分から程よく見えて良い感じだ。肝心の履き心地は手触り同様柔らかくて快適だが大きめの作りのせいか皺が出やすい。靴を履いたら一度パンツの裾をめくって履き口を引っ張りたるみをなくすと柄が綺麗に見える。面倒だがその一手間が欠かせない。
(21) ハリソンを試す

こちらはハリソンを履いたところ。柄の見え方はパンセレラと互角だ。スーピマコットンを使用…とのことだが履いた限りでは特別感はなくコットンビジネスソックスに近い。寧ろ靴に足を入れた時にたるみや皺が出ないのでパンセレラのように引っ張り上げる必要がないのが有難い。
三足千円の外国産ソックスに国産靴下が価格で対抗するのは無理がある。ワゴンセールの売値でさえ一足750円とまるで勝負にならない。ならば「安物買いの銭失い」ではなく高価な舶来ソックスと互角の高品質な靴下を目指そうと奮闘する国産靴下メーカーの意気込みを今回は感じることができた。
さて肝心の勝敗だが先鋒のラグソックスは快適さのビームス国産と思いきや耐久性に難ありでL.L.ビーンの逆転勝ち。中堅のレトロストライプはともにストライプの見え方が秀逸でドロー、最後の大将戦は価格のハリソンと肌触りのパンセレラで再びのドロー。結果は1勝2分けで舶来靴下の勝ちだった。
By Jun@Room Style Store