2024/10/06 11:00

プレシャスを辞書で調べると【希少な、貴重な、高価な】という意味がある。以前から年代物の衣類を扱うビンテージルーム開設を進めていることは既に当ブログで紹介済み。とはいえビンテージには年数が足りないものの「希少な品々」も扱いたい。となるとビンテージに代わる言葉が必要になろう。
そこで思いついたのがプレシャスという単語だった。男性服飾誌Men's Precious(メンズプレシャス)でお馴染みだが、雑誌は2年前に定期刊行を終了したとのこと。今やファッション誌は絶滅危惧らしい。好きな雑誌だっただけに残念だが愛読書への感謝を込めてプレシャスを使わせて貰うことにした。
そこで今回はビンテージルーム改めプレシャスルームの開設間近の様子を改めて紹介しようと思う。
※扉写真は商品のラインナップ一例
【商品番号C-01】
(1) 80年代ポロコート

開設準備をお伝えしたブログでも真っ先に紹介したのがこちらのトップコート。最近はebayで探しても状態の良いビンテージポロに中々出会えない。特に80~90年代中期までのポロのビンテージものは価格もうなぎ登りだ。比較的最近のアイテムでさえレアものだとかなり高額で取引されている。
(2) ディテール①

手縫いのブランドタグやハンガータグのMADE INU.S.A.に加えACTWU付きのインテリア。銀色のチケットは95年まで付けられていたもので2024年時点で既に30年経過しているという証。ビンテージものかどうかの分水嶺となってくる。軽くて薄いコートが主流の今とは真逆だがそこがビンテージものの魅力でもある。
(3) ディテール②

ポロコートといえばドラマチックなバックスタイルが見せ場。ボタン留めのバックベルトで締まったウェストから延びるドレープや歩く度に深く切れ込んだセンターベントが微かに捲れる様はチェスターフィールドコートよりも断然格好良い。ガウントレットカフやポストポケットなど凝ったディテールも魅力だ。
【商品番号C-02】
(4) 米国製ポロコート

こちらは2019年に復刻したアメリカ製のポロコート。ロチェスタークロージング(ヒッキーフリーマン)製で生地は英国ジョシュアエリスの100%キャメルヘア。アメリカ本国サイトでは2498㌦(約372,000円)、日本の公式サイトでは418,000円…ただし米本国サイトは在庫が大きめのみ。送料と関税を考えれば日本で買う方が良い。
(5) ディテール①

ACTWUチケットの後継となるWorkers Unitedが記されたタグ(左下)。アパレル、繊維、クリーニング、流通を含むアメリカとカナダにまたがる労働組合名のようだ。写真のポロコートは2018年に50周年を迎えたラルフローレン社の目玉商品の一つ。ネット配信されたファッションショウで初登場、翌2019年に発売された。
(6) ディテール②

80年代製のポロコートとほぼ変わらないディテールで登場した復刻版。段返りのラペルは先端が肩線に届かんばかりの勢いだ。イタリアのサルトが仕立てる上衿の垂れたポロコートも悪くないがポロのポロコートはこのピークドラペルが肝、ビンテージマニアがグローリアス(美しい)と表現するのも納得だ。
【商品番号C-03】
(7) イタリア製ポロコート

こちらは2020年代のポロコート。イタリー製でネイビーの地厚なウールを用いている。1991年のカタログでも登場しておりこちらも復刻版と言えなくもない。デザインは同じながらゴージャスな雰囲気のキャメルに対してネイビーはコンサバな印象だ。大きく見えるボタンだがキャメル版と全く同じサイズ…単なる目の錯覚か。
(8) ディテール①

イタリア製なので(5)で見られたワーカーズユナイテッド入りのタグはなし。旧ロゴの復刻版に対してこちらは新ロゴだ。因みに日本サイトは38Sと40Rに42Rの3サイズのみだが本国サイトではなんと32~54までの12サイズ展開。しかもショートとレギュラーにロングまで3パターンもある。力の入れようが違う。
(9) ディテール②

エルニーニョ現象の影響もあり今年の夏も9月いっぱい続き10月に入りようやく涼しくなり始めた。ウールの地厚なコートの出番はさらに先、日中の気温が気温が10℃から6℃になる頃まで待つようだ。となると都内でポロコートの出番が回ってくるのは12月から3月までの3ヵ月くらいだろうか。
【レストア中】
(10) バーバリー

ポロ製品ではないが目下レストア中の95年製ビンテージのバーバリーカシミアコートを紹介…懐かしのプローサム(騎士の旗に記された文字)にメイドインイングランドが入ったタグと100%カシミアのタグ。軽くてソフトなイタリアもののカシミアコートと比べると地厚で密な生地が如何にも英国製らしい。
【商品番号S-01】
(11) ツイードスーツ

こちらも既に紹介済みの94年秋冬物のツイードスーツ。地球温暖化が進み冬が短くなったせいだろうか、ツイードスーツ自体取り扱うショップが殆どない。現行RRLのセットアップツイードスーツは希少といえるがこちらは更に希少なビンテージもの。しかもデザインが非常に珍しいアメリカ製とくれば注目度も高い。
(12) ディテール

ポロタグは手縫い、ACTWUチケットは縦長の珍しいタイプ。写真では分からないが組下(トラウザーズ)にはサスペンダーボタンが付けられている。既製服としては強めのウェストサプレッションや5つ釦の段返り、ハイゴージなどかなり攻めたデザインが目を引く。生地はハリスツイードだろうか…。
【商品番号S-02】
(13) ストライプスーツ

こちらは最近レストアを終えた1992年製ストライプスーツ。ミディアムグレーのフランネル生地は秋冬ものの王道、正統派の黒靴で着こなしたいもの。首に吸い付くような上衿(鎌えり)とゴージラインの下がったラペルが特徴、クラシコイタリアの流行以来ハイゴージを見慣れたせいか新鮮に感じられる。
(14) ディテール①

ポロのジャケットはフラップ裏を共布で仕上げるのが特徴、お台場仕上げにも似て贅沢に生地を使っている証だろうか。ACTWUチケットは定番の横長タイプ。32年を経過したビンテージものだけに印字が薄くなりかけている。NYのポロ本店で購入したものを日本のポロショップで特別に直して貰った。
(15) ディテール②

左上はウォッチポケット付きの組下。フォワード2プリーツがグレートギャツビー(ロバートレッドフォード主演)のニックを思い出させる。コスチュームをラルフローレンが監修しただけあって必見の映画だ。左下はソフトに返ったラペル。三つ釦段返りの本家ブルックスブラザーズにはない美しさが光る。
【商品番号S-03】
(16) 英国製スーツ#01

ここで一旦アメリカ製から離れ1994年にローンチしたラルフローレンパープルレーベルを紹介。既製服の最高峰をコンセプトに重衣料はナンバー6と呼ばれるトップランクの既成紳士服メーカー、チェスターバリーが担当したことで話題となった。こちらは1999年にロンドンの旧ポロショップで購入したもの。もちろんチェスターバリー製だ。
(17) ディテール

細部を見ると身頃のボタン穴はハンドメイド(左上)、左のラペル裏にはフラワーホールが付いており(右下)、サビルロウ顔負けのクオリティだ。組下はベルトループなしでサイドアジャスター付き。もちろん腰裏にはブレイシーズボタンが付く(左下)。英国製らしくチェンジポケット付きなのがまた良い(右上)。
【商品番号S-04】
(18) 英国製スーツ#02

こちらもチェスターバリー製のストライプスーツ。色は王道のネイビー、春夏物のパープルのラインが間に入るオルタネートストライプはブランド名に相応しい。ナチュラルショルダーを見慣れた目にはパッドが入ったサビルロウ式の肩線が目を引く。組下はオックスフォードバグ風のゆったりとしたワタリが特徴。
(19)ディテール①

ポロ銀座があった時代に直しを入れているのでボタン穴は手縫い。東京縫製が担当していた(左下)。4つ釦も重ねなしの等間隔(右下)とラルフローレンの世界観が表れている。ラペルのゴージラインは手縫いによる「はしご掛け」と呼ばれる技法で縫われている。継ぎ目が波立たず体に沿った美しいラインに仕上がるそうだ。
(20) ディテール②

チェスターバリーのスーツやジャケットに付くタグ(左上)。組下のサイドアジャスターに付くボタン穴も手縫いなのに驚く。流石はチェエスターバリーだ。薄くてプラスチックのようなボタンは牛乳から作るカゼインボタンと呼ばれるもの。アンダーソンシェパードが好んで用いるタイプだ。
【商品番号J-01】
(21) ツイードジャケット

ここからはジャケットを紹介。こちらは特に生地が素晴らしいツイードジャケット。3パッチポケットながらフラップ付きというのがクラシコイタリアとの相違点。ゴージラインがやや低めなことから80年代末~90年代初期の製品か。遠目には2色のヘリンボーンに見えるが実際は多くの色が使われている。
(22) ディテール

手縫いのタグはお約束(左上)。一方でハンガータグはMADI IN U.S.A.の文字が端に寄っている(左下)。よく見ると生地に織り込まれた糸は少なくとも4~5色はあると見た。開き見せの袖先に切羽を継ぎ足して本開き仕様にカスタマイズしているのも見どころの一つ(右上)。胸のパッチポケットのカーブが絶妙だ(右下)。
【商品番号J-02】
(23) ツイードジャケット

写真はラッセルツイードと呼ばれる独特の格子柄を用いた2つ釦のジャケット。袖山はナチュラルショルダーだがパッドは張り出し気味に厚めのものが入っている。アングロアメリカンなポロらしくチェンジポケット付きながら当時流行っていたジョルジョアルマーニスタイルを少々取り入れたのだろうか…。
(24) ディテール①

ケアインストラクションの裏に刻印されたACTWUチケット(左・右下)。よく見るとウール70%にアルパカが30%のツイードのようだ。調べてみるとハリスツイードでアルパカ混のツイードを発見、どうりで肌触りが柔らかいと思った。アメリカ製ポロ製品末期らしく手縫いだったタグもミシンに変更されている(左上)。
(25) ディテール②

サイズは40Rと大きめ。使用感のない袖部分(右上下)や多少毛羽立ちがあるものの染みや汚れのない表地(左下)など状態は良好。後ろ身頃はサイドベッツで切れ込みはパープルレーベルの上着よりもやや深い(左上)。裏地にも擦れや染みが一切ないグレートコンディションな一着と言えよう。
ドイツを代表するフォルクスワーゲンがドイツ国内の工場を閉鎖するとの報道がなされた。エネルギー源の価格高騰が原因だそうだがドイツ製のドイツ車は希少になりつつあるとか。一方ラルフローレンはアメリカのブランドだが自社工場を持たず常に商品化を委託してきた。アメリカ製に固執する必要は全くない。
ところが2008年からオリンピックアメリカ選手団のコスチュームを担当してきたラルフローレンは2012年の衣装が中国製と反発を買った。次の2016年オリンピックではアメリカ製に代えたそうだがアメリカ議会が「米国製を着るべき…」というほどだからアメリカ製のポロ製品を望むファンはさぞ喜んだに違いない。
そう考えると80年代から90年代のポロショップはアメリカ製が豊富でよかったなとしみじみ思う。
By Jun@Room Style Store