2025/03/03 08:28
三月最初の週末は四月下旬並みの陽気だとか…ぽかぽか陽気はまるで春本番のよう。ブルックスブラザーズの復活で紹介したアメリカ直輸入のブレザーをママのリフォーム店から引き取って登板準備を整えた。なにせ最近はゴールデンウィークが過ぎると一気に夏が来る。ブレザーを着てお洒落するなら三月から五月までの二ケ月が勝負だ。
きっと以前ならコーダ洋服工房で「本切羽の本開きを」とお願いしていたと思う。だけど今回は納期が短くて済む「袖丈詰め」のみを依頼した。なぜならブルックスブラザーズは世界で初めて紳士既製服を販売した衣料品店。袖ボタンが外せて捲ることのできるカスタム仕様はそぐわない。袖丈の補正もできるだけ簡易な仕上がりが理想だ。
そこで今回は下準備をしてリフォーム店に袖の補正を依頼し、修理後に自ら最後の仕上げを行ったブレザーの今を紹介しようと思う。
※扉写真はアメリカ製のブレザーの証し「星条旗のピンバッジ」
(1) 購入時のブレザー

こちらは以前掲載したアメリカから到着したばかりのブレザー。今や数少ないアメリカ製衣料ファクトリーのロチェスターテイラードクロージング製。ファクトリー仕様なのでマシンメイドだがラペルの返りや本格的な作りの袖先はブルックス傘下のサウスウィック時代より出来栄えは上々だ。
(2) 袖先

袖部分は写真のようにボタン穴を模した飾り縫いさえない「開き見せ」仕様。ポールスチュアートやラルフローレンなどNYトラッドも同じ仕様だ。一方サルトの国イタリアの既製服は穴飾り有り、本切羽の本開き仕様さえ今やポピュラーだ。因みにこのブレザーも袖裏の処理はキトンなどクラシコイタリア並みに済んでいる。
(3) 寸法

袖丈を直しに出す前にボタンを外す必要がある。といおうことでまずはどこに付いていたのかメジャーを当ててチェック…袖ボタンは下が袖口から4㎝で上が7㎝、間隔は3㎝とられているようだ。調べてみたところテーラーの世界では袖の最終ボタン(一番下に付くもの)は袖口から4㎝という決まりがあるそうだ。
(4) ボタンの付き方

ついでにボタンの付き方もチェック。身頃から糸を放射状に出して足部分を何針かすくい縫いしている。ひと針しかすくわないと足つきボタンがあちこち向いてしまうので手間のかかる作業だ。外す際うっかりと袖生地を切ってしまわないようボタン外しといえど慎重な作業を心掛けたい。
(5) ボタンを外す

左袖のボタンを2個とも外した状態。これがラルフローレンなどブリティッシュアメリカンスタイルのテーラードものだと袖ボタンが4つも並んでいる。単純に作業時間が倍かかるわけだ。2つボタンのブルックスブラザーズのなんと楽なことよ。ともあれボタン外しは終了…あれ、ボタンが付いていた部分に穴が開いている…。
(6) ボタン外し完了

次に反対側も同様に2個のボタンを外す。写真は両袖ともボタンを外した状態。これで袖丈詰めをママのリフォームに出す準備も整った。ボタンの付いていた場所にはマーカー(チャコ)で印がつけられている。しかも上にくる部分にも下に重なる部分にも付いている。念のため写真に撮っておくことにした。
(6) 裏地の処理

購入者がカスタマイズ(本開き)にできるよう裏地処理が済んでいる袖裏の様子。下端は額縁仕上げになっている。ネットで調べたら①袖裏に余分な生地が残らないことで見た目がすっきりとすることに加え②袖ボタンを外して(本開きならば可能)袖を捲る際スムーズに動作できるといった利点があるようだ。
(7) スチームを当てる

ママのリフォームに出す前に縫い跡に開いた穴にスチームを当ててみる。ウール素材はスチームを当てることで弾性回復力によって元の状態に戻ることが可能だという。しかも吸湿時の繊維の膨潤も回復に寄与するとのこと。袖用のミニアイロン台に乗せてアイロンを軽く当ててながらスチームを噴射してみた。
(8) 縫い跡

針で開いた穴もほとんど目立たなくなったようだ。ブルックスブラザーズタグは面倒なので外さずリフォームに出したら店員さんが「こちらのタグは外して宜しいですか?」と聞く。当然「お願いします」と答えたが中には敢えて付けたままを要望する客も居るとか…そういえば最近も電車内でタグ付きコートを着ている人が居たっけ…不思議だ。
(9) 両袖準備完了

スチームで穴を塞いだ図。ブルックスブラザーズが傘下のサウスウィックに作らせていた時はブラックフリースやオウンメイクなど上級ラインに「本開き仕様」が可能な袖裏処理を施していた。一方店内のオーダー部門はマーチングリーンフィールドが請け負い手縫いのボタン穴などカスタムらしい仕上げを施していたようだ。
(10) ラペルピンを外す

袖丈詰めに出す前に紛失しないよう星条旗のラペルピンを外してママのリフォーム店に持ち込んだ。袖丈を「3㎝詰める」だけお願いすると「ボタン付けや穴飾りの糸はどうされますか?」と聞かれた。「ボタン付けは自分でやるので元と同じ額縁仕上げでお願いします」と伝え伝票を受け取って店を後にした。
〜リフォーム店で受け取り後〜
(11) ボタン位置を決める

待つこと八日間、元と同じ額縁仕上げで戻ってきたので週末のひと時を利用してボタン付けにチャレンジしてみた。まずはボタンを付ける位置を確認してマーカーで印を付けていく。上袖の縁から1㎝で下のボタンは袖口から4㎝、上のボタンは7㎝の場所に印をつけた状態で写真を撮ってみた。
(12) 下袖のボタン位置

次に袖先をぴたりと重ねる。上袖の印をマチ針で射抜き下袖に印を付ける。左側が終わったら今度は右側も同じ作業を繰り返す。これでボタン付けの準備が完了。既製服はマシンが中心だがこの作業は手仕事でないと無理そう。カスタムが得意なロチェスターテイラードクロージングらしい一手間だ。
(13) 左袖のボタン付け

左側からボタン付けにチャレンジ。ボタン糸が理想だが細い場合は糸の端を玉結びして二本どりにすると良いとのこと。まず①ボタン付けの中心(マーク位置)を小さく一針すくい②ボタンの足に糸を通して縫い始めに針先を持ってくる③次に裏地にはみ出ないよう袖裏をすくって④ボタンの足を3~4回くぐらせ最後に⑤玉止めする。
(14) 仕上がり

左袖が終わったところ。足の付け根を幅広く縛るのが結構難しい。糸が途中で引っ掛かったので一度やり直している。出来栄えも上々で一旦休憩。これなら「本開き仕様」にカスタマイズする時もボタン穴を開けるだけでOKだ。もっとも一度ボタン穴を開けてしまうと二度と袖口から袖丈の再修正が不可能なので要注意だが。
(15) 右袖のボタン付け

こちらは右袖。金ボタンのゴールデンフリースが正しい向きか確認しながら縫うのは大変だ。ボタンの向きが気に入らなくて一度やり直している。特に二本どりのボタン付けは糸が捻れがち、一針ごとに確かめると時間が掛かる。とはいえDIYや手芸は脳の血行促進や活性化に良いとか…身体と脳を鍛えるのが健康の秘訣らしい。
(16) 仕上がり

右袖も仕上がりを確認…工場出荷時とほぼ変わらぬ仕上がりに満足。因みにブルックスブラザーズアメリカ本国のサイトでアメリカ製のスーツやブレザー、ジャケットを検索すると結構充実している。ネクタイは目下イタリー製だが日本のブルックスブラザーズにアメリカ製のタイが入荷するらしい。
(17) 仕上がり後

袖先からボタンを留めたシャツのカフが覗いている…良い感じの仕上がりだ。海外ブランドの店員さんによれば購入後に一番直しの多い部分はやはり袖丈だという。腕が短いのは自分だけかと思ったがそうでもないらしい。日本人はリーチが短かい上に前肩なためアメリカ規格の既製服は直しが必要になるとのこと。
(18) 6ボタンのBDシャツ

因みにシャツは日本のブルックスブラザーズでも展開しているクラシックな前ボタン6つのBDシャツ。こちらは以前日本のデパートで復刻したアメリカ製だが今は日本製が用意されている。ネクタイを締めているが本来はノータイで第一ボタンを外した時の襟の開き具合やロールが絶妙なのだそうな。
(19) ビフォーアフター①

袖丈詰めの前後を比べてみたところ。左はシャツのカフボタンを外して伸ばした状態で撮影。手首が見えていない。袖丈を詰めた後は手首でしっかり留めたシャツのカフが見えている。日本のブルックスブラザーズで扱っている直輸入ブレザーは日本向けの企画で作られているのかどうか…一度確かめてみたい。
(20) 袖先の仕上がり

袖先の見え方を比較。補正前と変わらない雰囲気に仕上がっている。寧ろ工場出荷時(ビフォー)は袖先が重なる部分の下側がちらりと見えていたものが補正後(アフター)は面一になってすっきりしている。袖丈を詰めて額縁仕上げにしてもらうと工賃は税込で4950円、手縫いで袖丈詰めと本切羽(本開き)仕様だと15400円とのことだ。
ところで縫製元の名門ロチェスタークロージングだが一昨年に世界有数のカスタムクロージングマニュファクチャラー、トムジェームスに買収されていた。他にも手縫いスーツで有名なOXXford Clothingや英国のホーランド&シェリーなど名ブランドを傘下に収めている企業だ。一方ヒッキーフリーマンは新たにメキシコに工場を設立したと報道されていた。
そのヒッキーフリーマンレーベルを所有するのがブルックスブラザーズの親会社オーセンティックブランズというから話はややこしい。日本のブルックスブラザーズでは「ヒッキーフリーマンに作らせたブレザー」とアナウンスしているが正しくはヒッキーフリーマンのファクトリーだったロチェスターテイラーリングカンパニーに作らせた…となるだろうか。
三月最初の週初めは雨のスタート、週の中頃には寒の戻りがあるとはいえ中旬には新しいブレザーもいよいよデビュー、せっかくだから春の鎌倉でも楽しもうか…そんな気持ちになっている。
By Jun@Room Style Store
