ハイシャイン(茶靴編) | Room Style Store

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2025/08/03 19:15


7月6日にハイシャイン(黒靴編)を投稿、今回は茶靴の番だ。AIによれば「ワックスで予め下地を作ってからミラーグロスを使うとハイシャインが上手くいく」らしい。一見滑らかなカーフも実は凹凸がある。表面をワックスで均してミラーグロスで磨けば鏡のように光ると指南してくれる。

ただ革の表面をワックスで埋めて下地を作ってしまうとミラーグロスの補色効果は下地に邪魔されてしまうことになる。せっかく茶靴用にミラーグロスのブラウンとダークブラウンをカートに入れたが手持ちのバーガンディだけで充分対応できそうだ。何なら黒を塗っても問題ないかもしれない。

ともあれ今回は茶靴のハイシャインにトライしてみたい。

※写真はハイシャインを終えたキャップトウの靴

【既成靴】
(1) シルバノラッタンジ
まずはイタリアの手縫い靴シルバノラッタンジから。ミレニアムで賑わうミラノのブティックで購入した靴だ。ミラーグロスを塗って水滴を垂らして拭く…これを繰り返すとある時から突然光出す。既に日本から撤退した感のあるラッタンジ…件のミラノ直営店も臨時休業のままなのが気になる。

(2) 片足分終了
この靴は中々の曲者、今まで何度もつま先を光らせようとトライしてきたが上手くいかなかった。ところがミラーグロス投入で右足はあっという間に完成、記録用にと左足との違いを思わず撮ってしまった。ブランキーニと共に角張りノルベで有名になったシルバノラッタンジの面影がコバに残っている。

(3) 仕上がり
茶靴のハイシャイン第一号。バーガンディのミラーグロスで変色しないか気になったが影響なさそうだ。因みにこの靴は黒カーフと濃茶の二型が今もシルバノラッタンジ公式サイトにラインナップされている。ただし値段は示されておらず詳細はコンタクトを…とある。恐らく受注生産なのだろう。

(4) シルバノラッタンジ再び
二足目もシルバノラッタンジ、一足目と同じ革でハイシャインが難しい革だ。下地のおかげかミラーグロス投入でみるみる光り始める。因みにローマ直営店で購入したこの靴はジョンロブプレタが10万円以下だった当時20万円越えという高額靴だった。大枚はたいて日本にキャリーした思い出の靴だ。

(5) 仕上がり
ミラーシャイン第二号完成。だいぶコツが分かってきたようでキャップトゥ以外にもプレーントゥやローファーで試したくなる。それにしても今まで色々なメーカーの靴ケア用品を買ってきたがこれほどはっきりと効果の出るものはなかった。ハイシャインが上手くいかないという声に応えたベスト商品だと思う。

(6) シルバノラッタンジ追加
シルバノラッタンジもこれで三足目、ハイシャインの難しい靴だけに気合が入る。順調に光った右足から左足にチェンジして写真に記録した。因みに三足のシルバノラッタンジは全てセミブローグ…一時ベルルッティ風ラッタンジも手に入れたが全て手放して残ったのがここに紹介したクラシックな三足だ。

(6) 何回塗るか…
ミラーシャインを二回終えた状態。親子穴付近は下地作りの際ワックス膜が乗りにくいせいか中々テカってこない。因みにハイシャインの場合ミラーグロスは3~4回重ね塗りするのが目安だそうな。塗り重ねる回数が多いほど光沢は増すが注意すべきは塗り過ぎ。表面が硬くなり過ぎてひび割れの原因になるらしい。

(7) 完成
シルバノラッタンジ三足目の鏡面磨きが完了。つま先が光るだけで違う靴に見える。写真からも分かると思うがラッタンジの靴はウェルトの目付け(ギザギザ)が目立つ。さながら絵画の額縁のようだ。今時のスマートでコバの張りも少ない靴と比べると野暮ったいかもしれないがクラシックな靴は不滅だ。

(8) ジョンロブパリ
さてイタリア靴を終えたら大所帯のイギリス靴に取り掛かる。手始めにジョンロブパリの名ラスト8695で作られたセイムールから…シルバノラッタンジラと違ってこの靴は比較的ハイシャインがしやすい。それだけ下地も出来ているということだろう。ミラーグロス投入で表面が艶々してきた。

(9) 鏡面磨き完了
ハイシャインを3回終えたつま先。未だ表面が多少凸凹しているのであと何回か塗っても良さそうだ。サフィールのビーズワックスとミラーグロス…いったい何が違うのだろう。調べたら光沢層の形成に欠かせないハードワックスを従来より多く含むらしい。それが鏡のような反射を生む秘訣だとか。

(10) ジョンロブのライバル
ジョンロブセイムールの次はライバル「エドワードグリーン」の定番カドガン登場。1991年購入、中敷きの四角いロゴにメイドバイが入り、ソールのメイドインイングランドがブロック表記の旧グリーンだ。ロンドンのアパートに置いておくと植物鞣しの匂いが部屋中に漂ったことを思い出した。

(11) 片足分終了
ハイシャインを終えた右足を左足と比べてみた。実はこのカドガンも今まで鏡面磨きに苦労した靴だ。その分下地はできていたのだろう、ミラーグロスを塗り始めると直ぐに光沢層が出来てきた。キャップ付根のクラックが気になるが既成靴の寿命は30年、購入後33年が過ぎているのでなるほどな…とも思う。

(12) 名ラスト202
旧エドワードグリーンの名ラスト202はつま先の丸みが特徴、当時はエッグトゥと呼んでいたと思う。ハイシャインでコロンとしたつま先がより強調されたようだ。因みに202ラストの所有権は旧エドワードグリーンを買収したジョンロブにある。今もノーザンプトンのファクトリーに眠っているに違いない。

【ビスポーク靴】
(13) ボノーラ
既成靴は一旦終了、今度は茶色のビスポーク靴にチャレンジしてみる。まずはフィレンツェのボノーラで誂えたキャップトゥにミラーグロスを塗っていく。ワックスが広がらなくなって指に抵抗を感じたら水滴を垂らして磨くと直ぐに光り始めてきた。やはり良い革はハイシャインの仕上がりも違う。

(14) パンチドキャップトゥ
ハイシャインで大ぶりなキャップと一文字に入った親子穴(パンチング)が一気に引き立つ。オールドアバウトによれば(写真の)パンチドキャップトゥは「ストレートチップのフォーマルな印象を保ちつつ、つま先の穴飾りによって程よい華やかさを加えることができる」のが魅力と書いている。

(15) ジョンロブパリビスポーク
次はジョンロブパリのビスポークから…かつてフォスター&サンに在籍していた松田さんが「流石にジョンロブパリは良い仕事していますね」と褒めた靴だ。アッパー素材については確認していないがエルメス傘下だけに良い革を使っているに違いない、ミラーグロスを塗り始めた途端に光沢が出てくる。

(16) ソフトチゼルトウ
ジョージクレバリーのような極端なチゼルトゥではないがつま先のふくらみ部分を軽くノミでそぎ落としたようなシェイプ。ソフトチゼルと呼ばれるものだ。アッパー自体が良く磨かれて光っているせいかつま先との差はあまり感じられない。因みにシルバノラッタンジ同様コバが結構張っている。

(17) コージスズキ
イタリア、フランスと来てお次は日本の誂え靴。日本のビスポーク靴職人鈴木幸次さんに注文した一足目がこちらのイミテーションキャップトゥになる。一枚革のつま先に飾りステッチと穴飾りを入れてセミブローグ風に見せかけたもの。アッパーはデュプイ、ミラーグロスを塗ると直ぐ光ってくる。やはり良い革だ。

(18) 仕上がり
つま先部分に革の重なりがないのでがハイシャインは飾りステッチまでということになる。ミラーグロスを親子穴に沿って塗っては水拭きを繰り返す。親子穴はあまり光らなかったがメダリオンは良い感じに光っている。当時イタリア帰りの若手ビスポーク職人としてスピーゴラを立ち上げた初期の作品だ。

(19) フォスター&サン
イタリア、フランス、日本と来て最後はイギリスのビスポーク靴で締めくくり…選んだのはフォスター&サンのセミブローグ。菱形の穴開けを多用したデザインということもあってハイシャインが上手く行かなかったがミラーグロスであっという間に完成。アノネイだったかイルチアだったか忘れたがこれも良い革だ。

(20) 蠍座の靴
ハイシャインで光るキャップに浮かび上がる蠍。ベルルッティのタトゥーより凝った作りだ。因みにこの蠍は手渡した原図から松田さんが試作、菱形ポンチで仕上げたもの。後に松田さんから「お客様が蠍のメダリオンをご希望」と問い合わせがあり結局受けたらしい。原画を提供しただけに残念だ。

(21) 磨き終えた靴
磨き終えた靴は9足。一足あたり30分かかっている。因みにプロのシューシャイナーは通常の靴磨きに加えてハイシャインやクリーニングに染み抜き・染め替えまである。靴磨きも1時間コースが用意されているらしい。素人は30分でも大変なのにプロは1時間もかけると聞いて光り方が違うのも納得だ。

ところでプロのシューシャイナーに頼むと料金はいくらなのだろう。調べてみたところ今回のようなハイシャインを依頼すると3000円~4000円くらいが相場らしい。中には達人に磨いてもらうと7000円というメニューまである。お気に入りの靴、大切な靴になら決して高くないと思う人も居よう。

一方靴磨きという職業についてAIは「革靴を履く機会の減少に伴い靴磨きの需要が減少する可能性がある」ことや「靴磨きを提供する店舗や個人の増加により価格競争が起こる可能性」を指摘している。ミラーグロスを例に「セルフケア用品の普及・充実で靴磨きを頼む機会が減る」可能性にも触れていた。

実は左右の色の差を解消すべく靴磨きに出したことが一回ある。他にも「トゥスチール装着」で足繁く通っていたお店でついでに靴を磨いて貰ったことがある。AIも言及していたが「靴磨きだけでなく修理やメンテナンスなど幅広いサービスを提供すること」が職業としての靴磨きの可能性を明示している。

By Jun`Room Style Store