2025/08/30 06:18

北海道バイク旅を紹介するブログも今回で3回目、既に2回目でも触れたがここぬかびら温泉に宿を取ったのは全国から観光客を引き寄せる幻想的な鉄道遺構をひと目見ようとしての事。最初の訪問地「幾寅駅」からバイクを飛ばしてチェックイン時刻ギリギリというハードな行程になってでも訪れたかった場所だ。
その名はタウシュベツ川橋梁跡。帯広と十勝三股を結ぶ士幌線の開通により1939年に運用開始されるも糠平ダム建設による新線付け替えで1955年に廃止された不運な橋だった。長さは130㍍、十一連の見事なアーチ橋が定期的にダムの底から姿を現す姿を見ようとツアー申し込みが絶えない隠れた名所だ。
新線に付け替えられた士幌線も1987年に廃止され既に38年が経過、糠平源泉郷にも駅跡が整備されているがタウシュベツ川橋梁跡は見る者を圧倒する。それでは早速見学に行ってみよう。
※扉写真は水位低下で出現したタウシュベツ川橋梁
(1) 早朝の糠平源泉郷

昨夜通った道を少し戻ったところに北海道大雪山系唯一の自然湖である然別湖がある。そこにも写真映えのする観光スポットがあるので時間があれば寄りたかったが昨日はいかんせん時間が足りなかった。それにしても人のいないこと…鬱蒼とした森から突然クマが出てきやしないかと緊張してしまう。
(2) 然別湖の名スポット

こちらがその然別湖の名所。シーズンオフに遊覧船を引き上げるための線路だが映画「千と千尋の神隠し」に出てくる「海原電鉄」のようだと話題になったらしい。アニメの影響で海外からも観光客が訪れるとか。昔ビートルズの聖地アビーロードの横断歩道で写真を撮った自分も同じようなものか…。
(3) 公園内のエゾシカ

ツアーの集合場所に向かおうと公園を横切るとエゾシカが草を喰んでいる。シカの仲間は開けた場所や日当たりの良い林縁を好むそうだ。北海道に限らず人口減少で過疎化が進むと人間が退いた分動物が進出する図式なのだろう。人の気配は少ないが公園の整備は行き届いているのでシカも安心しているようだ。
(4) ツアー集合場所

こちらがツアー集合場所の「ひがし大雪自然ガイドセンター」。この日は総勢13名がワゴン車2台に分乗して出発とのこと。朝方雨が降ったのか路面が濡れていた。昔は梅雨のない北海道と言われたが最近は真夏日もゲリラ豪雨もある。さいわい天気は持ちそうなので膝まであるゴムブーツに履き替えて車に乗り込む。
(5) 林道の開錠

タウシュベツ橋梁に近づくにはゲートを鍵で開ける必要がある。ガイドは鍵を持っているが個人で行きたい人の為に「道の駅かみしほろ」では鍵を貸し出している。1日10組限定、ネット予約だが秒で予約が埋まるらしい。中にはここから歩いて写真のゲートをすり抜ける人もいるそうだが危険だと心配していた。
(6) 注意書き①

駐車場まで舗装されていないのでパンクは日常茶飯事だそうな。一年に何回もパンクするらしい。もし単独で車を乗り入れてパンクしたら…クマに怯えつつタイヤを交換する場面を想像するだけでも冷や汗が出てくる。そんな話を聞きながらワゴン車で進むと案の定歩いている人とすれ違った。なんという度胸だろう。
(7) 注意書き②

昔は林道に(写真の)ゲートがなかったため許可制で近づくことができたらしいが上の注意書きにあるように事故が多発(その殆どはパンク)したためゲートを設置したそうだ。もしも車がスタックしたらJAFに頼んでも電波が通じないしたとえ通じてたとしても最低数時間は待たされるだろう。
(8) 廃線跡に沿って進む

車を停めて糠平湖に向かうこの道こそ士幌線の廃線跡。ここからタウシュベツ橋梁を超えて十勝三股まで線路が伸びていたという。ガイドさん曰く「昔地元の人はタウシュベツ橋梁を歩いて渡っていた」そうだ。確かに1955年の廃止当時は完成後僅か16年、廃止後も落成時と変わらぬ頑丈な橋だったに違いない。
(9) 橋のたもと

ようやく開けたダム湖の淵に出る。最初に見るタウシュベツ橋梁はこんな角度だ。想像以上に傷みが激しい。風化の進んだ橋脚や剥き出しの鉄骨が出ている最上部を見ると「今年が最後」と何年も言われ続けている理由が分かる。水位の変化で水没と出現を毎年繰り返すうちに風化が進んだのだろう。
(10) 湖に降りて撮影

糠平湖に降りて撮影した写真。奥がタウシュベツ川の注ぎ口になる。湖面が凪いでいるのは早朝だけ…5時30分集合の早朝ツアーがあるのもそのためだとか。ラッキーなことにこの日は9時30分過ぎても湖面は穏やか、お陰で綺麗な写真が撮れた。この後すぐ湖面に小波が立ち始めたのでギリギリだったようだ。
(11) 傷みの激しいアーチ橋

小波を立て始めた湖面が遠くに見える。右から数えて6連目が崩壊寸前の部分。アーチ部分が辛うじて残っている。毎年言われているがいよいよ今年が最後だろうとのこと。ガイドさん自身は「個人的には崩壊後の姿を見てみたい」と語っていた。保存方法が検討されたらしいが実現は厳しいようだ。
(12) 川側から写す

今度はタウシュベツ川下側から水鏡に映るアーチ橋を撮影してみた。「カメラをグッと湖面に近づけると撮れます」とガイドさんのアドバイスを元に早速トライ、中々いい写真が撮れた。橋脚部分のヤセも気になる。落成時は滑らかな表面だっただろうに浸水と蒸発、凍結と乾燥を繰り返す中で表面はザラザラになっている。
(13) 次の目的地

お次は「日本一寒いりくべつ」の駅跡を訪問。まるで現役のような景色が広がっている。1987年池北線が国鉄からJR北海道に移管されると廃止が打診されるも地元は1989年第三セクター「ふるさと銀河線」として再出発、当初は話題となったが結局経営は改善せず2006年に廃止、さらに19年も経っているのだ。
(14) 残る線路

廃線後の線路は撤去されることが多いがふるさと銀河線は隣の川上駅まで線路が残っているそうだ。NPO組織により線路を走れる状態に回復し、保存車両による乗車体験や運転体験を行うなど様々なイベントを組んでいる様子が待合室のポスターからも分かる。北海道のローカル鉄道を味わえる場所として注目度は高い。
(15) 遠軽駅

ふるさと銀河鉄道りくべつで過ごした後は今宵の宿泊地遠軽を目指す。昨年11月に車で訪れて以来九ヶ月ぶりだ。駅近ホテルにチェックインしてシャワーを浴びたら着替えて駅へ向かう。入場券を買ってまずは新しい列車「快速きたみ」の網走行きを撮影、旭川から終点の網走まで4時間半超えのロングラン快速だ。
(16) 瞰望岩

遠く瞰望岩を臨む遠軽駅。今年三月のダイヤ改正で特急「大雪」の運転を取りやめるなど地元にとっても寂しく感じられるニュースが続く石北本線。旭川と網走を結ぶ主要路線ながら旭川方面は一日7本、うち特急が四本で快速が一本、鈍行で行こうとすると14時台の普通列車旭川行き1本のみという凄まじさだ。
(17) 復活した駅そば

遠軽駅といえば往年の「かにめし」弁当に続き駅そばも復活するなど明るい話題もある。特に遠軽駅の「北一そば」はクラウドファンディングの成否が気になっていたが今年4月に営業を再開したそうだ。生憎この日は「午後休業」だったがジビエそばが人気だとか。ただし値段は駅そばの概念を覆す一杯1300円だが。
(18) ホテルサンシャイン

こちらが今宵の宿「ホテルサンシャイン」。寂しくなった駅付近にあってこのホテルの存在は頼もしい。前回は復活した「かにめし」を味わいに立ち寄ったが今回は宿泊だ。古いタイプのホテルなので大浴場(温泉)はないが一階にはレストランが併設されている。その気になれば夕食も朝食も不自由することはない。
(19) ロビー

ゆったりとしたロビー。地元の寄り合いや会議などで利用されるせいか宿泊客は多くないが人の気配が感じられてなぜかホッとする空間だ。因みに窓の外に薄っすら見える白いライトが我が愛車。写真は翌朝の出発前だが昨夜の雨で路面もバイクも濡れていた。今日も雨の予想が70%とのこと。
(20) 客室

出発前の部屋。コーヒーやペットボトルの水など滞在中は不自由なく過ごせた。廊下で隣の部屋のご夫婦と顔を合わせたので挨拶。近所に飲食店がなくて昨夜は近くのコンビニで食料を買って部屋で夕食を済ませたとか。自分はホテルの受付で教わった居酒屋で夕食を済ませたが確かに自力では飲食店を見つけ辛い。
(21) 駐車(駐輪)場

荷物カバーを被せてレインウェアを着たら準備完了。今朝のニュースでは道内で一時停止無視による衝突やシカを轢いたりと激しい事例が報告されていた。しかも今日は雨降り…このバイク、路面が濡れているのに普段どおりクラッチを繋ぐとリアタイヤが空転してしまうのだ。今日も安全運転で目的地を目指したい。
ところでライダーにとって北海道をバイクで走るのが人気なのはなぜか…とAIに聞いてみると①最果て感と冒険心②壮大な自然と絶景③バイクで走りやすい道④北海道ならではのグルメ⑤気候と時期⑥海外旅行のような非日常感を挙げていた。多くのライダーにとって北海道は「バイクの聖地」なのだそうな。
因みに北海道まで①自走派②フェリー派③交通機関で現地入り後レンタルバイク派の三択で一番人気なのはフェリー派だという。①の自走派は時間と体力が必要になるし③のレンタル派は手頃な反面費用がかさむのがネックだとか。②のフェリー派は疲労が蓄積せず慣れた愛車で走れる点が支持されたのだろう。
愛車のハーレーのXL1200Xは燃費がリッターあたり20㌖、満タンで7.9リットルしか入らない。ガス欠になっては大変なので毎朝その日の給油地をスマホに入力してから出発している。それが功を奏したのか2時間毎の給油=こまめな休憩で疲労度も全然違う。何より東京と違って涼しいのが嬉しい。
今日の宿泊先はびふか温泉…アイヌ語を漢字に当てはめたのだろうが「美深」と書くとロマンを感じる。
By Jun@Room Style Store