2025/09/22 02:37

毎年9月は靴の衣替え。夏の間はサンダルやスニーカーばかり履いていたがそろそろ革靴の出番だ。秋冬へ向けて色味や素材、靴底の厚さを考えながら「これは仕舞って替りにあっちを出して…」とパズルさながら靴を選んでみた。それにしても今夏の暑かったこと…先月はたぶん一度も革靴を履かなかったと思う。
せっかくなので既にブログで紹介済の「一文字の靴」に続いて「ウィングキャップの靴」を手入れした。内羽根や外羽根、レイジーマンにイミテーション、スリッポンなど様々だがつま先のWは共通。綺麗になった靴をサークル状に並べたり整列させたりした様子をインスタグラムに載せたらプチバズりしたようだ。
そこで今回はウィングキャップの靴を中心にアーカイブを兼ねて紹介しようと思う。
※写真は手持ちのウィングキャップ靴30足
(1) プチバズりな投稿

こちらが目下インスタグラムのアカウントでプチバズり中のポスト。8/30の投稿後9/22には「いいね」が1138に到達、閲覧数229271で98.3%がフォロワー以外だという。如何に不特定多数の目に留まったかということになる。Wの切り返しが特徴のウィングキャップはやはり目に付くのか…。
(2) 黒靴グループ

こちらはウィングキャップの中でもビジネス寄りの黒靴グループ。誂え靴と既成靴が混在している。正統派のフルブローグからイミテーションシューレースのレイジーマンまでどれも年月をかけて手元に来た思い入れのある靴ばかりだ。残念ながら服飾のカジュアル化が進み黒靴を履く機会も減ってしまった。
(2) イミテーションブローグ

イミテーションながら最後に注文したウィングキャップがこちら。ワインハイマーの黒革を使ったフォスター&サンのレイジーマンだ。ラスト職人テリームーア氏が木型を削り、当時フォスターで腕を振るっていた松田笑子さんがディレクション、底付けは名アウトワーカー、ジムマコーマック氏の手による秀作だ。
(3) ディテールに凝る①

黒靴をビスポークする場合はアッパーが地味になる分ライニングに凝ったりつま先のメダリオンを自分の好みに指定したりするのが定番。特にライニングはレッドやパープルなど派手にするのが楽しい。つま先の飾り穴はラムズホーンと呼ばれる羊の角をデザイン化したものがお気に入りだった。
(4) 茶靴グループ

アルディラカラーやタンなど夏色靴グループがこちら。そろそろ秋冬用のダークブラウンと交替する時期が近付いている。まだまだ日中は暑いが朝夕の涼しさが戻りいつの間にか日暮れも早くなった。そういえば間もなく秋分、昼と夜の長さが同じということはこれから先どんどん昼が短くなることになる。
(5) ビスポークの外羽根

唯一のビスポーク外羽根ウィングキャップ。つま先が退色しているので一見コンビ靴に見える。ロンドンのフォスター&サン得意のブリーチによるアンティークフィニッシュだ。パティーヌで有名なベルルッティもわざわざ視察に来たという。英国最古の誂え靴屋ながらモダンな側面も併せもつ名店だったがコロナ禍で廃業した。
(6) ディテールに凝る②

つま先はフォスター&サンの中でも特に珍しいもの。ヘンリーマックスウェルのサンプルを参考、ついでに中敷のロゴもマックスウェルでお願いしてある。因みにライニングはレーシンググリーン。以前サビルロウのヘンリープールでオーダーした背広もグリーンのライニングだったからそれに合わせたのだと思う。
(7) 良く似た靴①

ウィングキャップの靴で最も華やかなのがこちらのフルブローグ。英国のチャーチスと仏国のJMウェストンは互いによく似ている。セミスクェアなつま先やパーフォレーション(〇:〇)の親子穴が大きいこと、レースステイ両脇のブローギングが湾曲しているところなどそっくりだ。同じ黒革だったら片足ずつ取り違えても分からないかもしれない。
(8) 赤丸と白丸

レースステイ脇のパーファレーションを比べると赤丸で囲んだチャーチスとJMウェストンは湾曲しながら履き口に沿って収束している。チャーチスの子会社チーニーも同様だ。一方白丸のようにパーフォレーションがまっすぐ履き口にぶつかるタイプがジョンロブパリやクロケット&ジョーンズ、エドワードグリーンも同様だ。
(9) ウイングチップグループ

外羽根のウィングキャップ群。メンクラが名付けたのかアイビー世代は「おかめ靴」と呼んでいた。当時は英国のスラッとしたタイプより米国式のがっちりタイプに憧れたものだ。お金を貯めてリーガルショップで念願のロイヤルインペリアルを買ったことが懐かしい。丸善のチャーチスなんて知らない頃のことだ。
(10) E.グリーンのコードバン靴

外羽根のフルブローグも英国のメーカーが作ると洒落ている。写真はエドワードグリーンのサンドリンガム。スクェアトゥの#606木型を採用していることもあってモダンな顔つきだ。レギュラーラインにはないホーウィンのコードバンを使っており、NYの靴屋が別注したものを取り寄せている。
(11) 一番よく履いたウイングキャップ

同じ外羽根のフルブローグでもこちらはクロケット&ジョーンズのペンブローク。ラルフローレンがコードバン素材に乗せ替えマーロウの名で発注したものだ。英国靴ながらアメリカ靴に似た顔つきは器用なクロケットらしい。ラルフローレンのランウェイショウで登場、深く入る皺が気に入ってしょっちゅう履いていた。
(12) Dウィズ

ラルフやブルックスなどクロケットのアメリカブランド展開品はDウィズが多い。ハーフサイズ上げて9ーDを選んだのでつま先が長い分深い皺が入る。まるでベテラン俳優の顔つきのようだ。当時日本のラルフで売られていたEウィズも買って試したが思ったほど履き皺が入らず拍子抜けした。
(13) ロングウイング

深い履き皺といえばこちらのLWB(ロングウィングブルッチャー)も中々のもの。オールデンの中でもプレーントウと並んで名作と言われる#975だ。オウンメイクのブルックスサックスーツに合うアメトラ靴の代名詞といえよう。靴自体にボリュームがあるのでデニムとの相性も良く汎用性の高さは折り紙付きだ。
(14) 日米履き比べ

オールデンの名靴LWBの隣に並んだ日本が誇るリーガルのロイヤルインペリアル。1985年の購入だからもう40年も経っている。つま先や履き口など隠せない傷はあるが長年履き続けた勲章のようなもの。当時リーガルの中でも一番高い靴だっただけにようやく手に入れた時の喜びは格別だった。
(15) 一番古い靴①

その後リーガルの靴は何足か買ったが最後まで残ったのがこの靴だ。レストレーションプログロムに沿ってオールソールに加えリウェルトも行っているのでアッパー以外はほぼ全て交換されている。価格も当時の定価を上回ってしまったが修理を繰り返して長く履けるグッドイヤーの靴ならとことん付き合いたい。
(16) 一番古い靴②

修理に持ち込んだ際インソックも交換してもらったがスパー(歯車)付きブーツのロゴマークは40年前と違っているそうだ。確かに当時のものを見るとブーツの中にREGALの文字が入っている。修理を依頼したのはリーガルシューズ直営店、担当者が修理前に丁寧に教えてくれた。靴に歴史あり…だ。
(17) 起毛靴グループ

涼しくなると恋しい起毛靴。最近は夏にスエードを履いてもOKと言われるが秋冬こそ本命。ツィードやコーデュロイなど暖かみのあるパンツと相性がすこぶる良い。ただスエード靴はアッパーが柔らかい分ストレスが紐にかかるのかよく切れる。写真下のサンドリンガムもその上のフェアフィールドも紐が傷んでる。
(18) スタグスエード

写真は幻の起毛素材スタグスエードのイミテーションフルブローグ。ジョージクレバリーで誂えたものだ。AI曰く「スタグスエードは成長した雄鹿の裏側を起毛させたものでバックスキンは若い牡鹿の表側を起毛させたもの。スタグスエードはより希少」だそうだ。柔らかくて丈夫な素材は切り返しの少ない靴に向いている。
(18) 毛足

カーフスエードは毛足は短いほど高級とされるがスタグスエードは写真のように毛足が長い。毛足の長い構造が光を複雑に吸収・反射するので見る角度で色が違って見えるとのこと。ベルベットのようなものか。鹿の身体は傷が多く革に鞣しても使えない部分が多いため成長した雄鹿の鞣し革は希少なのだそうな。
(19) コンビ靴

ウィングキャップの靴をポストした際、目に飛び込んでくるのがツートンカラーのスペクテイター。並べた時にこの1足があるだけで一気にバラエティが増えるように見えてくる。もしインスタのウイングキャップの中にこの靴がなかったら「これでコンビ靴があるとさらに良いね」のコメントが入っただろう。
(20) ホワイトバックス

茶白靴のアップ。白い部分は若い牡鹿の銀面(表側)を起毛させたバックスキン。夏の靴だけに太陽光を吸収する起毛素材が正統派だそうな。最近はカーフスエードで代用するが老舗誂え靴店は今も白のバックスキンをストックしていると思う。ホワイトの部分をよく見ると成長の過程で出来た小傷が所々に見られる。
ところで今回ウィングキャップを投稿したインスタグラムにはダッシュボードと呼ばれるツールがある。アカウントのパフォーマンスを分析して改善のヒントを提供してくれるが特に「閲覧数」に着目してみた。これは投稿に興味をもって詳細をタップしてくれた人の数を表している。敢えて見てくれる嬉しい存在なのだ。
しかも今回は「いいね」1000越え、苦労して靴を並べた甲斐があった。このブログも読む人が居るかも…と更新中だがショップサイトBASE付属機能だけにコメント欄はなし。「いいね」の声が届かないのが残念ではある。時折りショップへの質問に意見が届くこともあるが運営側から違反と思われてしまうだろう。
ともあれフォロワーのリクエストに応えて「ローファー」や「外羽根靴」特集も予定中、靴の手入れと並べる作業が暫く続きそうだ。
By Jun@Room Style Store