Levi's Vintage Clothing | Room Style Store

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2021/10/24 09:14


丁度海外に駐在していた時に沸き起こった日本のビンテージジーンズブーム。その主役はリーバイス、501XXのレザーパッチ(50年代中期頃のもの)だったと聞く。ブームがピークを迎える1998年、本家リーバイスが「アメリカの工場でアメリカのセルビッジデニムを使ったビンテージ復刻版」をリリース、日本のブームに乗り遅れ、せめてビンテージの雰囲気だけでもと現地のリーバイスブティックで復刻版を買った。


日本と違ってビンテージジーンズブームなどない現地では値が張る復刻版を買う人も少なかったのだろう、サイズも豊富でゆっくり買い物ができた。復刻版はやがてLevis's Vintage Clothing(LVC:リーバイスビンテージクロージング)と名前を変え、1890、1915、1933、(1937)、1944、1947、1954、1955、(1962)、1966、1978(1976)、と少なくとも10型以上発売され、どれも興味をそそられる商品展開だった。


ビンテージをよく知る人から言わせればLVCと真のビンテージは似て非なるものらしいが、企画としては極めて優れていたと思う。そこで今回はジーンズ好きに回帰させてくれたLVCに敬意を表しつつ、ストアの在庫から復刻ビンテージジーンズを紹介してみようと思う。

※扉写真はストア在庫のLVC


【#75 プレLVC時代1996~1998年】
(1) 復刻版55年モデル
501XX バレンシア工場製97年6月バレンシア工場製造55年モデルの501XX。リーバイスのブティックで98年1月に購入したが、他のジーンズとは藍色の濃さやデニム自体が違っていた。股上は深くワタリはかなり太い。何より36一択のレングスは厄介だったが復刻版だからと洗濯後もカットせず折り返して履いてるので余計に足が短く見えてしまう。耳は赤というよりピンクに近く、リアルな66前期ものや80年代の赤耳501と似た雰囲気がある。

(2) ダイヤモンドポイント
アーキュエイトステッチの中央に出来るダイヤモンドポイント。二本針ミシンによって糸がクロスしてできるそうだ。こんな蘊蓄も復刻ビンテージものに興味を持ったお陰か…。この55501XXもリアルビンテージものとの違いがネット上で指摘されているが、僅かな期間稼働していたバレンシア工場産ということでデッド品はもとよりユーズドの人気も高い。


(3) 復刻版1937年モデル
 201XX バレンシア工場製
こちらは(1)と一緒に買った37年モデルの201XX。こちらは97年12月の555即ちバレンシア工場製。実際は37年モデルの501のようで股上は浅めでワタリは細め。履く回数が多かったせいかセルビッジ跡がアウトシームに出始めている。96年から始まった復刻版は98年にリーバイス・ビンテージ・クロージング(LVC)と名称を変更。

(4) バックストラップ
後に出てくるLVCの33年モデルでは尾錠とサスペンダーボタンが付いているのにこの37年モデルではサスペンダーボタンが廃止されている。僅かな期間で大きな変更があったとことがラインナップか分かるというところなどLVCの企画の面白さが良く分かる。アーキュエイトステッチは1本針のためダイヤモンドポイントもなく、同時期に買った(1)の55501XX との差別化もきちんと図られていた。


【#76 LVCの時代1988~現在】
(5) 1933年モデル501XX
LVCの33501。尾錠とサスペンダーボタンが付くワークウェア風のディテールが特徴。未洗い生地は10オンスと軽く、写真でも分かるように履いた時にクリース(しわ)でなくドレープが出る。デザインはタフ、生地はライトという不思議な作りやワタリの広い寸胴型のシルエットも履いてみるとしっくりくる。日本製のLVC33501もあるようだがこちらはアメリカ製。


(6) ディテールにこだわる
33年モデルの特徴はレザーパッチの下の白いNRAラベル。1933年当時のアメリカは大恐慌直後の困難期、全国復興庁が設立され社会が一丸となって経済回復に進んでいた頃…この復興庁の指導に従ってリーバイスも製品を作り、その証として付けられたのがNRAラベルとのこと。因みに日本製の33501には付いていないのでアメリカ製と見分けるヒントになるようだ。


(7) 44501XX(大戦モデル)
記念すべき初LVCの日本製44501XX。1944年モデルということで第二次世界大戦下の「無駄を省き簡素化した製品作り」がディテールに盛り込まれ今も当時も人気がある。カイハラ製と言われるデニムは軽くてソフト、先に買ったバレンシア工場製と比べて頼りない感じがしたが、改めて履いてみると結構いい感じ、コロナ禍のデイリーウェアとしても使えそうだ。ショップで裾上げしてもらっているのでレングスはジャストサイズ。


(8) ペンキステッチ
44年モデルといえば簡素化されたリベットやドーナツボタン…それより一番の見どころはペンキ塗りのアーキュエイトステッチだろう。ミシンで縫う工程を省いてペンキ(正確にはシルクスクリーンによるプリント)でステッチを再現するなんてストーリー性が有り過ぎる。蘊蓄好きには堪らない。しかも本物と違って洗濯しても消えずに残っているので長く楽しめるところも良い。


(9) 47501XX
戦争が終わった1947年をモデルイヤーにした47501XX。LVCの中でも最も人気があるそうだ。終戦から今に続く「アメリカの時代」を象徴するスマートで洒落たシルエット。細めのストレートが人気の秘訣だろうか…。人気の47モデルをリジットから育てられる楽しみ、それも二度と手に入らないホワイトオークデニムとあればこのジーンズの希少性も高まろう。

(10) ホワイトオーク製
アメリカのコーンデニム社で唯一残ったホワイトオーク工場が年末で閉鎖されるとの情報が流れた2017年秋、ホワイトオーク産コーンデニム使用のアメリカ製LVCを一気に探し始めた。写真の47年モデルをはじめマイサイズを探して買いに走ったことを思い出す。知り合いのデニム好きはテラソンやRRLに食指が動いていたが自分は専らLevi’s一択…昔はLee派だったのにいつの間にか宗旨替えしていた。



(11) 1962年モデル 551ZXX
1954年発売の501ZXXは初ジッパー採用とはいえ洗うと縮む生地のためジッパーがよく壊れたらしい。そこで防縮加工の施されたプリシュランクデニムを開発し1961年に551ZXXとして販売。翌年の1962年をモデルイヤーとしたのが写真のLVC551ZXX。505の前身と言われるだけあって履いた感じも505に近いし脱ぎ履きが楽だし個人的には一推しだ。考えてみればジーンズもビスポークスーツも既成パンツもボタンフライばかり、ジッパーモデルを推すのも無理はないか…。


(12) 505の前身
センターバックのベルトループはオフセットされて縫い付けられているのが特徴。こうしたディテールの違いに弱い…プリシュランクとはいえ最大3%縮むらしいがそれでもbuy your exact size「(防縮加工済だから)ジャストサイズを買え」と書かれている。確かRRLのリジットジーンズは「90日間洗わずに履く」よう推奨している。さてこの551ZXX、最初に90日履き込むか早めに洗うか…迷うところだ。


(13) 1967年モデル 505
前年に誕生した505に因んで翌1967年をモデルイヤーとした67505。こちらはトルコ製でアメリカ製より価格が抑えめなので試しに買ってみた。履いた感じは正に現行505。股上は浅くレングスも32インチと短足に優しい長さ。最大3%縮むとなれば洗濯後は1インチ縮んでジャストな長さも期待できる。14ozのデニムを使用、本来のワークウェアらしいジーンズ特有のゴワゴワ感も良い感じだ。


(14) 505-0217の意味
パッチの505-0217とは02がプリシュランクを、17がリジットを示すとのこと。以前紹介したビッグEの502-0117に書かれていた0117とは防縮加工なし(シュリンクトゥフィット)で未洗いの意味。日本向けの502は実際洗いをかけて縮ませていたとはいえパッチの0117を消すわけにもいかずそのまま日本に輸出したのだろう。この67505はトルコ製と書いたが生地はコーンデニムを使用しているようだ。コーンデニムが既になくなった今、LVCの生地は日本製、後で紹介するMade in the USAラインはインド製らしい…。


(15) 1978年モデル 501XX
レッドタブに小文字の℮が付けられたのが1978年、その年をモデルイヤーとしたのがLVC78501。いわゆる66後期時代のリーバイスをモデルにしている。シルエットは緩やかなテーパード。レングスは34インチだが裾が細い分折り返しも長くなる。写真でも分かるが赤耳の脇割りにクセが付いていない。最初が肝心、アイロンでしっかりとクセをつけたいところだ。


(16) 66後期モデル
リアルな1978年製の501は66後期、1977年~1980年までの製品が該当する。シルエットもワークウェアからカジュアルウェアへと進化、洗練されたスタイルにビンテージ特有の色落ちも楽しめる人気の高い年代。それを復刻したのが写真のLVC78501。当時のコーンミルズデニムはコーンデニムと名前を変えたが黄金タッグは当時と同じ。


【#77 ポストLVC2017年~現在】
(17) ホワイトオークセルビッジ501
リーバイスがLVCとは別ラインでMsde in the USAと名付けた米国産ジーンズを発売、中でもホワイトオーク産コーンデニムを使用した限定501は最後の傑作と言われている。アメリカ産セルビッジデニムを使ってアメリカで生産されたリアルなMade in the USAものの終着点としての価値は高い。今風の程よいストレートフィットでサイズ33-32も洗濯後は31-31とジャストフィットが期待できる。


(18) ラストドロップ
赤タブはスモール℮。80年代初期の赤耳501に近い雰囲気がある。「同じアメリカ製のLVCよりも出来が良い」「レザーパッチのツーホースがイラスト風でイケてない」と賛否両論の声もあるがLVCというスペシャル企画ではなく、あくまでレギュラーモデルの派生品というのは見逃せないポイント。「コーンデニム+アメリカ縫製+501」のラストドロップという特別感はかなり強力だ。


(19) アメリカ製プレミアム501
2018年、コーンデニムから他社産(インド産とのこと…)のセルビッジデニムに切り替わったMade in the USAシリーズ。(18)よりワンサイズダウンしているので結構タイトに感じる。デニムの藍色はホワイトオーク産よりも青みが強いようだが生地感は殆ど変わらない。洗いをかけて履き込んでいって初めて進化が分かれるところだろう。

(20) ディテールの変化
フラッシャーは(18)のコーンデニム501と同じ。赤タブはラージEに変更され昔風のツーホースレザーパッチが付けられるなど不評を挽回している様子も伺える。ホワイトオークの内タグがなくなり新たにプレミアムという内タグを付けたものの、何がプレミアムなのか見えてこないもどかしさがある。コーンデニムなき後LVCや501プレミアムはどうなっていくのだろう。


リーバイスの歴史を見ると1853年から長く続いた「リーバイス自社工場+アメリカ製生地」体制は2003年最後のバレンシア工場閉鎖によって「アメリカ国内委託工場+アメリカ製生地」へと大きく変わり、ホワイトオーク工場廃業の2018年からは「アメリカ国内委託工場+他国産生地」へと激変している。リーバイスはアメリカの製造業にも拘らずアメリカに工場を持たない企業という訳だ。

もっとも日本も似たようなもので自動車生産の50%以上は海外産だしバイクも日本メーカーによる海外生産品が逆輸入されるのが日常だ。モノづくりはグローバル、自国だけで生産し続けるのは不可能に近い。それでも人は「なくなってしまう」と言われると残り僅かな可能性に賭けてみたくなるもの。最近まで存在していたホワイトオークデニムを使ったアメリカ製LVCでさえ希少性が増してきている。


先日はデニムファンの知人と「テラソンがまだコーンデニム版の在庫を持っているらしい。」「今期RRLにアメリカ製生地でUSメイドのデニムがある…」なんて物欲話をした。欲しい服は見つからないがジーンズは別腹、過去を知る楽しみ、履く楽しみ、育てる楽しみ、新しい1本に出会う楽しみ…まだま暫くはジーンズから目が離せそうもない。

追記
プレLVC時代のデニムを#75、LVCを#76、ポストLVCを#77として永世定番に追加

By Jun @Room Style Store