マドラスの魅力(第2弾) | Room Style Store

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2022/07/06 12:41


アイビー好きにとって柄ものといえば春夏のマドラス、秋冬のタータンだろうか。Wikiで調べると17世紀中頃、英国の東インド会社がタータンをインドのマドラス地方で織らせたものがマドラスの原型だとか。どちらも英国由来、伝統的な柄にして実は親子の間柄だったとは…まるで(駄)洒落のようだ。

肌触りと通気性の良いマドラス(布)で仕立てたシャツがアメリカで大人気となったのが60年代、きっと映画「アメリカングラフィティ」のような世界観だったのだろう。封切映画を見たあとは近くの三峰でマドラス(風)シャツを購入、主人公のカートよろしくコッパンと合わせて着てたことを思い出す。

その後80年代から90年代にかけての渋カジブームで大人気となったマドラス。服飾評論家の遠山周平さんによるとマドラスは30年間隔でヒットするらしい。奇しくも2020年代はちょうどその周期にあたる。そこで前回に続いてパッチマドラスを中心にその魅力を探ってみようと思う。

【1990年代初期:渋カジブーム】
(1) インポートセレクトショップで買う
1990年、渋カジブームに乗って足繁く通ったラブラドルで購入したラルフのマドラスBDシャツ。最初は神宮前交差点に店を構えていたラブラドルが宮下公園近くに移転した頃買ったものだ。たとえマドラスものの元祖がブルックスといえどもお目当てはラルフ、しかも直輸入ものに拘っていた。

(2) 直輸入かライセンスか
パッチマドラスの裏側はロックミシン跡や縦横に縫い目が走るので肌触りは結構ゴワゴワした感じだ。ラルフローレンのブティックでも扱っていたと思うがハミルトンやナイガイによるライセンスものとラブラや後のポートオブローレンスが現地で買い付けたものとは微妙に違っていた。違いはレジスターナンバー(RN41381)のあるなし(写真を参照)。


(3) 共裏
ヨークは背中心を二つに割って仕上げたスプリットヨーク。ラルフローレンがシャツ作りでこだわる部分だ。ヨーク下には半円形の共布が縫い付けられている。着心地をよくするためだろうか…その分ボタンダウンシャツのアイコンともいえる背中のボックスプリーツは省略されている。


(4) 着てみる(その1)
素肌に羽織ると生地裏の凹凸が気になるパッチマドラスはTシャツの上に羽織るのが定石。それにしてもこう暑いと長袖じゃなくて半袖が欲しくなる。時計もレザーからリボンベルトに替えて撮影。手にしたギターは最新のテイラー(Taylor)。1974年設立と若いながらもマーチン、ギブソンと並ぶ3大メーカにまで急成長したメーカーだ。


(5) 着てみる(その2)
時計ベルトをよりアイビーっぽいものに交換。巷で見かけるものは大抵3色までだがこちらは5色、王道のアイビーストライプだ。フリーポートのブルックスブラザーズで買ったものだがもう何本か欲しいのでただいまフリマで物色中…首元のイーグルモチーフのネックレスは珍しいターコイズとシルバーのコンビ。


【1990年代後半:アメカジ全盛】
(6) リバイバルパッチマドラス
1995年、アメリカ人のトムフォードによるグッチのコレクションが大反響を呼び、ファッションはアメリカの時代だった。ラルフ初の海外直営店、ロンドンのオールドボンドStで購入したのが写真のパッチマドラスBD第2弾。背中のボックスプリーツや胸ポケットにポロマークが付くなど前作以上の出来栄えだった。


(7) 着てみる(その1)
長袖のシャツの下はTシャツからポロシャツにチェンジ。ついでに時計も交換してみた。リボンベルトの似合う時計といえばアンティークな機械式時計。J.PressでもRawing Blazersでも昔のオメガやセイコー、IWCなど良質で手ごろな機械式時計がラインナップされている。写真はブライトリングの手巻き。


(8) 着てみる(その2)
アメリカサイズのMだとかなり着丈が長いので試しに裾をタックインしてみたが下がデニムということでタックアウトに変更。多分アメリカの男性だったらボタン全開のタックアウトじゃないだろうか…手にした小物はデッキシューズ。夏になると一番重宝する靴だがネイビーも欲しいとこちらもただいま物色中。

(9) ジップパーカ
ビスポーク関連で頻繁にロンドンに出入りしていた関係でラルフのアイテムも殆どロンドン、それもオールドボンドStの小さな店舗で手に入れていた。こちらは1998年入手のパーカ。なぜか1990年に買った初代パッチマドラスBDと同じ布のパーカが8年も経って並んでいた。胸のポロマークはお約束、腕のポケットや太めのドローストリングが洒落ている。

(10) 着てみる(その1)
白のポロシャツを下に着てタックイン。ベルトが見えるようにして上から羽織ってみる。パッチマドラスもパーカになるとどことなくマリーンのイメージ、時計もダイバータイプに交換してみた。手にしたギターはフェンダーのアメリカ製ストラトキャスター。1995年購入だから間もなく30年経つ。


(11) 着てみる(その2)
指の隙間から見えるのはエリッククラプトンのサイン。そう、ただのストラトキャスターじゃなくてECモデルになる。クラプトンといえば伝説のバンド「クリーム」…ということでパーカの下にクリーム色のポロシャツをイン。因みに楽器店で2001年製ECモデルを見たら結構な値が付いていた…。


【プレッピーブーム再来】
(12) 3パッチポケット
時代はグッと最近になって2010~2020年代。定期的にプレッピーな着こなしが流行るようで、200周年を迎えたブルックスが元祖マドラスチェックのスーツやジャケットを相次いで出した2018年は大盛り上がりだった。ラルフもパッチマドラスのジャケットで対抗、珍しい段返りの三つボタン仕様で華を添えていた。


(13) 着てみる(その1)
共布ベストもセットで購入。一緒に着ると派手かと思いきや上着から見える分量が少ないせいかそれほどでもない。下はデニムにシャツは白無地、ネクタイも無地ニットタイと他に柄ものはなし…。トムジェームスのケン青木さんによればパッチマドラスの上着を着るなら他は無地にすべし…とのこと。手にした傘は名門ブリッグ。


(14) 着てみる(その2)
よくいわれるベストの一番下は「外すのがルール」。一番下のボタンとボタン穴が縦のラインから外れて外側に付く場合はルールどおりだが、写真のように縦一列に並ぶアイビースタイルのヴェストでは異なるようだ。特にローライズデニムだと下が見えてしまうので留めた方が良さそうだ。

(15) ベスト単体で着るなら…
ジャケットと共布のベストは便利でお薦めアイテム。単体で着るならネクタイを外してリラックスムードも悪くない。時計は逆にリボンベルトからレザーベルトに交換。因みに写真のテイラーギターだがマイク内蔵でジャックをボディ側のストラップピンに差し込む洒落た作り…昔のオベーションとはだいぶ違う。

(16) ジャケットと合わせて
試しにベストの一番下を外すとネクタイの剣先が見えている。やはり留めた方が良いだろう。因みにロンドンのテイラーで3つ揃えを頼むとウェストコート(ベスト)のボタンが縦一列に並ぶのはデイヴィス&サンとハンツマン、ヘンリープールは一番下が外側に開く。確かハンツマンのロバートは「一番下は外しても留めても構わない…」と言っていた。


(17) マドラス柄のシャツ
ここでストアからマドラスチェックのシャツを紹介。下はグレーベースの控えめな柄ながら本場インド産マドラス生地を使ったインディビジュアライズドシャツのボタンダウン。上は台襟のダイヤモンドステッチが光るアイクベーハーのボタンダウン。インデビジュアライズドシャツより小ぶりな襟が特徴だ。


【最新のパッチマドラスパンツ】
(18) ベルトとコーデ(その1)
ここからはパッチマドラスのパンツコーデ。といってもパンツ+ベルト+ウォッチベルトの組み合わせだ。大体マルチカラーのパッチマドラスは何色のアイテムを持ってきても合う。まずはグリーンのコットンベルトにグリーンベースのアイビーリボンベルトの時計を合わせてみた。手軽なお洒落だが見栄えは中々のものだ。

(19) ベルトとコーデ(その2)
次は腰のベルトをイエローストライプに替えて腕時計のベルトもブルーとイエローのストライプと交換。こちらも悪くない組み合わせだ。腕時計用のリボンベルトというとスマートターンアウトが有名どころ。サスペンダーやマフラーなどはイギリス製だが肝心の時計ベルトは中国製と少々がっかり…。


(20) パッチマドラスの帽子
週明けの月曜日は空いている都内のデパートを中心に買い物へ。ポロコーナーで今季もののパッチマドラスキャップをゲット。マドラスが結構流行っているように感じたが、単にマドラス好きな自分が目ざとく見つけてしまうだけかもしれない。帽体部分は向こう側が透けて見えるくらい薄手の生地だけにきっと涼しいと思う。

元フェアファックスの慶伊道彦さんはご自身のyoutubeアカウントで「組み合わせは陰と陽」が基本、「パッチマドラス(陽)に合わせる他のアイテムは極力目立たない(陰)ものを。」と話している。下に合わせるパンツはカーキのチノパンが一番、またはネイビーのコッパンもよし。柄ものならばシアサッカーは許容範囲とのこと。

青山のブルックスブラザーズが移転して行きづらくなった代わりに昔よく行ったセレクトショップがアイビーやプレッピー、アメトラものに力を入れ始めている。ビームス+がラルフやRRLを店頭に並べたりシップスがサウスウィックを独自展開したりと嬉しい限りだ。もちろんパッチマドラスのアイテムもちゃんと揃えている。

90年代のNYトラッドから30年近いビスポークの世界を探求して今再び基本のアイビーに、暫くはアメリカがキーワードになると思う。

By Jun@Room Style Store