2021/09/18 23:42

秋の訪れとともに「そろそろブーツの季節だな…」と思い立ったが吉日、涼しくなった週末は靴の衣替えを行った。クローゼットのブーツを「まず米国製、続けて英国製…」と順番にケアしては並べていく。最近やけに米国製のブーツが増えた。それにアッパーやソールの手入れは短靴より手間がかかる。…結局時間切れで英国製のブーツは次週までお預けとなってしまった。
最近はデニムばかり履いているせいか気品溢れる英国産ブーツよりラギットな米国産ブーツに心が動いてしまう。それにヘビーデューティーファッションを直に経験した世代、初めて履いたブーツはワークブーツだし初給料で買ったブーツもトニーラマとアメリカへの憧れが根底にある。鳥(確かカモだったか…)が初めて見た動くものを親と思う「刷り込み」に近い感覚かもしれない。
そこで今回は一大勢力となった米国製ブーツを中心に衣替えの様子や手入れ、コーディネートを交えつつ「衣替えの季節ブーツ篇」として書いてみようと思う。
(1) アイリッシュセッター#8166

最初に登場するのはブーツの中で最も使用頻度の高いレッドウィングの6インチプレーントゥブーツ。アイリッシュセッターの犬タグがついた時期もあるらしく単にアイリッシュセッター#8166でも通ずるようだ。オロラセットの革の色目も好みだがシャフト(筒)の長い8インチより脱ぎ履きが楽なことが大きい。アッパーの履き皺に反してソールはまるで新品のよう…オールソールした?と聞かれそうだ。
(2) ソールのケア

レッドウィング純正のトラクショントレッドソールは白さが命、野外を歩き回って汚れたら濡れたタオルで拭き取っているが段々汚れが目立ってくる。今まで砂消しゴムで擦ってみたりジッポーオイルを染み込ませた布で拭き取ってみたが今ひとつ。紙ヤスリで削るというのもあったがすり減ってしまわないか心配だ。ということで今回はマニキュアの除光液による汚れ落としに挑戦してみた。
(3) 効果(その1)

ソールに走る黒い線。ちょっとした汚れといえどソールが白いと目立つ…まずは乾いたタオルに除光液を含ませ拭いてみるとあっという間に汚れがおちるではないか。よく見ると汚れはタオルに付着している。さらに擦ると今度は一旦タオルに付着した汚れが再度ソール側に戻っていくようだ。ある程度落としたらタオルの綺麗な部分に指の位置を変え、除光液を含ませ再び磨いていく…。
(4) 効果(その2)

今度は靴の反対側半分を同じように磨いていく。ハケ目のように筋の付いたソールの断面に食い込んだ汚れは軽く拭くだけでは落ちない。親指を使って圧を加えながらゴシゴシ拭き取るとようやく綺麗になり始めた。これだけ効果的だと面白くて汚れ落としが病みつきになる。労力と時間はかかるが効果は抜群、ただしウェルトに除光液が付くとウェルトまで色落ちするので注意が必要だ。
(5) ケア終了後の#8179

こちらは1996年日本で大ヒットした黒アイリッシュセッター。ケア終了後は25年前と変わらない雰囲気がある。そういえばこの年はナイキのエアマックスも流行、エアマックス狩りなんて物騒な社会問題も起きた。靴が大ヒットそれも2連発なんて後にも先にもこの年だけだろう…当時日本では買えなかった人も多く後に復刻版が出たが、初期の方が品質が良かったという声も聞く。
(6) アイリッシュセッター#875

正式な名称はクラシックワーク 6" モックトゥ。ワークブーツの基本中の基本だ。アッパーの傷や皺は勲章だが真鍮のハト目に浮かんだ緑青がいただけない…爪楊枝で搔き出してブラシをかけたが靴紐に青錆が色移りしたようだ。昔は毒性があると言われた緑青だが、実はないそうで最後に手を洗って作業は終了。緑青が発生する原因は水分、多湿な日本で森の中の山小屋となればやむを得ないか…。
(7) 秋の気配

枯れ葉が落ち始め早くも秋景色の信州。長袖なしでは肌寒いのでパッチワークのシャツにデニムと定番の着こなしだ。1995年に購入したクラシックワークは既に26年物、ソールがあめ色になりかけている。除光液で汚れを拭き取って綺麗にしてから撮影、足元が引き締まるようだ。ドレスシューズ同様ワークブーツのコバも手入すると見栄えが良くなるという好例。
(8) ダナーのソールを磨く

こちらはマウンテンブーツの雄Danner(ダナー)。レッドウィングとは違ってビブラム社のソールは白というよりアイボリーに近い。材質も違うようで除光液で拭くとレッドウィングよりさらに簡単に汚れが落ちていく。作業が早めに終わったのでスェードのアッパーをケミカルたわしのスコッチブライトで軽くこする。こちらもすっかり綺麗になって正に新品のようだ。
(9) ダナーを履く

廃番となったダナーのマウンテンライトスェード。スェード素材のブーツにジーンズはインディゴ染料が色移りするのでご法度。カモ柄パンツのような色落ちしないものがお薦めだ。実際①クロケットのスエードチャッカにリジットデニムを履いていたら履き口にインディゴ色の輪ができたこと②オロラセットのブーツにジーンズを履いたら革の赤色がジーンズの裾裏に付いたことなど色移りは意外と厄介だ。
Boots : Danner Mountain Light Suede
Zip parka : Camber
Pants : Polo Ralph Lauren
(10) 新入りを迎える

1995年、8インチブーツの定番#877を赤茶(オロラセット)から薄茶に変更したレッドウィング本社に対し日本側から「以前の赤茶で」とリクエストして製造された#8877。新レザー(オロラセット・ポーテージ)を用いて1996年~2000年にかけて発売された後空白を経て2018年何と1回のみの限定復刻が行われた。既に発売から3年、ラストドロップの様相を呈してきたので思い切って買うことにした。
(11) レッドウィングの原点

アイリッシュセッターは#854として1950年に販売された8インチブーツが原点。その後#877へと移行、限定品の#8877が誕生した。2018年の復刻版は赤みの強い革や濃茶のハト目、にタグや白ダンボール箱などこだわり満載。以前のブログ記事満足度の高い靴にも書いたが①限定性(1回だけの限定)②特別感(昔の仕様を再現)③付加価値(箱など付属物への拘り)④将来性(長く履ける)の全てが揃っている。
(12) 試着

6インチプレーントゥ#8166と比べて同じ9-Dでもモックトゥのせいか大きく見える。全ハト目のブーツは上まで紐を通すのが面倒なので上何列かをスピードフックに付け替えてくれる靴屋もあるらしい。まぁ今回の限定復刻番#8877は拘り満載なので意を汲んでオリジナルのまま履いた方がいいだろう。それに今の田舎暮らしは時間がゆったりと流れている。「紐を結んで出かける」くらいの余裕を持ちたい。
Deinm : RRL
Shirt : Polo Country
(13) RRL 8インチブーツ

8インチブーツといえばRRLのBrunelブーツもあった。こちらは補強リベットや端がギンピング処理された革(フォルスタン)をタンに縫い付るなどタフな仕様が見どころ。ラルフローレン社では製造元を公表していないがアメリカ製とのこと。巷ではソログッドではないかと言われてるがペンシルバニア州キャロライナ(Carolina Shoe Company)の可能性もありそうだ。
(14) エンジニアブーツ

同じくファクトリーを公表していないRRLのエンジニアブーツMurdock。最初期はジュリアンブーツだったようだが第2弾のこちらはウェスタンブーツのリオスオブメルセデスが請け負っているらしい。アッパーは洒落たツートンカラー、写真を見ても分かるようにソールは最初から滑り止めのぶ厚いラバー付き、ヒールはキャッツポゥと耐久性は申し分ない。
(15) ブーツを脱ぐ(その1)

エンジニアブーツを履く人は持っている(はずの)ブーツジャック。これがないと脱ぐ時の大変さは容易に想像が付く。使い方は簡単…脱ぐ方の踵をブーツジャックのU字部分に入れ反対側の足でジャックを踏みつつ反対側の踵を上げるように脱いでいく。バイカーがツーリング先の宿でエンジニアブーツを脱ぐ時このブーツジャックがあればさぞ便利だろう…いやそれよりいっそ持参した方が良さそうか…。
(16) トニーラマ

こちらが初給料で買ったトニーラマ。当時ウェスタンバンドを組んでいた関係で足元はブーツカットのジーンズにウェスタンブーツがお約束だった。舶来の靴など高くて買えなかった時代だ。なんとマルイに並んでいたのを見て即決、分割払いで買った記憶がある。サイズも今考えるとジャストではなかったかもしれないがどんどん履いて無理やり足に馴染ませた…35年以上前のことだ。
(17) ブーツカットとの相性(その1)

久しぶりに履いたトニーラマ。両サイドのタブを引っ張って履くとストンと足が収まるのに感動…あれこんなに簡単だったかなと驚いた。レッドウィングの8インチブーツのように紐を上まで通して結ぶ面倒さや足の甲にあるストラップが足入れを邪魔するエンジニアブーツの履きにくさとは対照的だ。今度服仲間の飲み会が再開したらウェスタンスタイルで行ってみようか…。
Denim : RRL Boots Cut
Shirt : RRL
(18) ブーツカットとの相性(その2)

せっかくなのでウェスタンブーツを信州に持ち込んで履いてみた。馬でもいれば様になるがと思いリーのブーツカット用フラッシャーを見ていたらなんとも素敵なイラストを見つけた。なるほど馬は無理でも鉄馬があるではないか…ということで近いうちにハーレーとブーツカットにウェスタンブーツという組み合わせにチャレンジしてみようと思う。
(19) ブーツを脱ぐ(その2)

履くのは簡単だったがさて脱ぐのは…ということで再びブーツジャックの登場。ヒールが高いせいかエンジニアブーツよりも脱ぐのが楽だしすっと足が抜けてくれる。多分昔より足の筋肉が落ちてるからかシャフト(筒)部分もゆとりがあるようだ。奇しくもエンジニアブーツとの比較でウェスタンブーツの良さを再認識する結果となった。
Denim : RRL
Boots : Tony Lama
インスタグラムの靴関連ポストでは英国や欧州のブーツが優勢、ラギットなアメリカンブーツは今一つだ。トリッカーズやエドワードグリーン、あるいは同じアメリカ製のブーツでもオールデンのタンカーやインディーの方が人気がある。ワークブーツ系はファッションというより生活用具の一部のようなもの、華やかさが足りないのだろう。
一方田舎で着る服といえばツィードジャケットやオイルドコートよりマウンテンパーカやバッファローチェックのアウターが優勢。下に履くのもコーデュロイやモールスキンよりジーンズやチノパンツばかり。これではワークブーツ系が増えてしまうのも無理はない。しかもバイク乗りを再開したせいかドレスブーツとは縁がなくなりつつある。
人は歳をとると原点回帰するそうな…。アイビーでスタートし、アメトラやイタリアン、ブリティッシュにクラシコを経て誂えの世界も試した今、ブーツ選びも初心に返る時期なのかもしれない。
By Jun@Room Style Store