2025/05/21 10:58

当ブログ北の大地へ(帰京編)で紹介した北海道の友人が休暇を利用して旅行ついでに東京に立ち寄るという。昨年の十一月以来半年ぶりだが服飾仲間ということもあっていつも毎回楽しく過ごしている。彼は生粋の英国好き、中でもスコットランドのツイードとウィスキーをこよなく愛するスコッツファンだ。
待ち合わせ場所にギンザシックスを指定したら「行ったことがなくて…もと松坂屋のあった場所ですか?」と返信があった。久々に聞いた名前だ。松坂屋の閉店は2013年だから既に12年も経っている。銀座最古の百貨店が閉店ということで当時話題になったがこの間銀座自体も大きく様変わりしている。
そこで今回は北海道から旅を続け東京に立ち寄った友人との再会と会食、服飾談義の様子をお届けしようと思う。
※扉写真はギンザシックスの吹き抜けとオブジェ
(1) ブリティッシュメイド

待ち合わせ場所に早く着き過ぎたのでブリティッシュメイドという名のお店を訪問。英国好きの友に会う前にネタを仕込むような感じか。早速気になるものを発見、夏が近づき暑くなってくると帽子が欲しくなる。刺繍がお洒落なキャップはドレイクスのもの、製造はポルトガルらしいが色出しがいい。
(2) ランチを楽しむ

待ち合わせ場所のビストロオザミには友人の方が先に到着していた。写真は食事後にお店の前で撮影したものだが店の雰囲気は確かにパリのビストロといった感じだ。英国好きとアメトラ好きがフレンチレストランで会食というのも悪くない。店内にはインバウンド客も多くなんだか本当にパリにいる気分になってくる。
(3) 乾杯

まずはフランス産のスパークリングワインで乾杯。実はあまり知られていないがイギリスでもシャンパーニュと同じ製法でスパークリングワインが作られている。シャルドネやピノ・ノワールなど馴染みがあるブドウ品種を使いややライトボディで酸味が強いのが特徴らしい。イングランド南部のケント州やウェストサセックス州が主な産地。
(4) 本日の友の姿

本日の友の服装は気ままな旅行旅に相応しいカジュアルな装い。といっても自分のようにデニムにパーカといったアメカジとは雰囲気が違う。それもそのはず、シャツはロンドンのビスポークシャツメーカー「バド」だしアーガイルのベストも「コーギー」…どちらも英国の逸品をさりげなく身に着けている。
(5) 本日の腕時計

さて当方はというと久々にバブルバックを腕に巻いて家を出た。シャツは度々登場するガーランド。当ブログの「ガーランドシャツのその後」で既に閉業と書いたが続報は未着。他の米国内シャツメーカーがブルックスブラザーズのBDシャツを作るらしいがパターンなど現行と変わらず仕上がるか気になる。
(6) Vオープニング

歳を重ねたら暖色のアイテムを取り入れると良い…と聞いたことがある。ネイビーブレザーは大好物だが寒色なのでメリハリの効いた赤が欲しくなるのかもしれない。せっかくなのでシャツや時計のベルトにネクタイ、全て赤と青の組み合わせを意識してみた。そういえばピンバッジの星条旗も赤と青が入っている…。
(7) 足元

ブレザーと相性のいいグレンチェックパンツに黒の外羽根靴。GW中はスニーカーばかり履いていたせいかすっかり足が鈍ったらしい。革靴に戻った途端ガツンと来る。とはいえ30足も注文したジョージクレバリーの3足目、既に20年もののベテランだけにビンテージ感もそこはかとなく漂い良い面構えになってきた。
(8) 赤と青

赤と青のストライプ揃い踏み。ボーターハットのリボンとトートバッグにネクタイは意識して揃えたもの。本当は赤青リボンベルトも締めようか迷ったがやり過ぎは禁物と自制した。そもそも赤と青の相性が良いのは①暖色と寒色の対照的な色である②赤は生命の躍動で青は永遠の象徴とされる③補色関係にある…とのこと。
(9) 前菜

さてここからはせっかくなのでランチの紹介を…前菜はアトランティックサーモンのクリームチーズ添え。英国好きの友と味わうならスコティッシュサーモンと行きたいところだがアトランティックサーモンはタイセイヨウサケで一般的、スコティッシュサーモンはニジマスの一種サーモントラウト。輸入食料品店でも見つけるのが結構難しい。
(10) 自家製バゲット

オザミグループの店はどこもパンが美味しいが自家製とのこと。調べたら以前はオザミ工房というパンやケーキを提供する店も運営していたそうだ。残念ながら2018年に閉店している。パンはもとより店で馴染みのあるタルトやキッシュなども評判が高かっただけに残念。そういえば確かにデザートのタルトがいつの頃からか変わったなと思い出した。
(11) メインディッシュ

こちらは本日のメインディッシュ。追加料金で頼める「牛肉の赤ワイン煮込み」だ。赤身肉にじっくり煮込んだソースを絡めて口に入れると旨みが口いっぱいに広がる。付け合わせのマッシュポテトは定番、隣のマカロニサラダがお惣菜っぽくてこれはこれで悪くない。旅行先で美味しいものを食べてきた友達も喜んでくれたので一安心。
(12) 赤ワイン

料理に合わせて赤ワインをグラスで追加。ローヌ地方産で100%カベルネ・ソーヴィニヨン、粘土石灰岩のテロワールから来ておりブラックベリーやカシスの香りにまろやかなタンニンが特徴とのこと。現地でボトル価格が6ユーロだからランクとしては気軽に飲めるテーブルワインだが中々美味しかった。
(13) デザート

昔はオザミ工房のタルトを選んだものだが今は写真のようなデザートの盛り合わせになっている。ランチコースはコーヒーも付いてくるが日本の喫茶店の様にケーキセットとしてコーヒーが一緒に来ることはない。これはケーキを楽しむのは甘さを、コーヒーを味わうのは口の中をさっぱりさせるためとそれぞれ役割があるかららしい。
(14) 友のキャップ

ここで友人のキャップを拝見。地厚なツイード生地で作られたキャップのようだ。聞いたところ生地から選んで頭のサイズを測りビスポークしたものだとか。目付けも700グラムはあるツィードらしい。しかもそのツイード生地はラルフローレンが好んで発注する生地商だとのこと。そんな話を聞くとオーダー欲がムクムクと湧いてくる。
(15) ビスポーク

因みにオーダーしたのはキャンベルオブビューリー。個人経営で家族により運営されているカントリーテーラーとのこと。インヴァネスから西へ10マイルの美しい村ビューリーに店舗があるそうだ。ロイヤルワラントホルダーでもありビスポークは全て現場で作られているとのこと。これは近いうちにぜひ訪れたいものだ。
(16) ボーターハット

一方こちらはイタリア製のボーターハット。風が強いとすぐに飛ばされそうになるので頭を押さえながら歩いた。調べてみたら顎紐があるそうな。なんだか幼稚園児を思い出してしまったが英国でもハット用ドローストリングスがちゃんと売られているのを発見。今度取り寄せて自分で付けてみようと思う。
(17) 鞄へのこだわり

ここで友の鞄を拝見。これまたいかにも英国風の鞄。カーキの帆布が良い感じだ。ランブラーバッグという名前でカーライルにファクトリーを構えるチャップマンが展開しているものとのこと。公式サイトを覗いてみたがシェルはネイビーで革部分も濃い茶色、聞いたところ日本国内のお店で買ったそうだ。中々センスのいいショップ別注だ。
(18) インナーポケット

外側に付いたフラップ付きのポケットがなんと蓋を開けると中にも装着されている。お陰で効率よくものを運べるとか。あれだけアメリカ製のBDシャツだブレザーだと言っていたのにこうして英国製品を見ているとブリトラが恋しくなってくる。ラザフォードの革鞄といいこのチャップマンの帆布鞄といい英国ものには伝統が息づいている。
(19) オザミの内装

自宅でもし壁をこんなローズピンクにしたら落ち着かないだろうか…だが店で過ごす分には素敵に思える。ということで調べてみたらAI曰く「ローズピンクの壁色は穏やかでリラックス効果がある。特に淡い色目だと精神的な安定をもたらす効果が高い」」そうだ。とはいうものの他のインテリアとのバランスが重要らしい。
(20) いただきもの①

友からの土産物。山形県限定流通の純米吟醸酒、坂田酒造の上喜元「なごみしずく」だ。アルコール度数は16%とやや高い。ほのかなガス感が活きたフレッシュさと旨味を堪能できる酒であり「食事とともに」をテーマに仕上げた一本とのこと。山形はコメどころとして有名、当然ながら酒蔵も多く日本酒も美味いそうだ。
(21) いただきもの②

こちらは奥羽本線の「峠駅」名物の力餅。駅全体が雪から守るスノーシェッドの中にある。昔はスイッチバック式の駅だったが山形新幹線の開業に合わせて廃止されている。列車が到着すると「ちから~もち~」という駅売りの声が聞こえる何とも魅力ある駅とのこと。写真のパッケージを見ても分かるようにレトロな感じがそそられる。
(22) 名物に美味いものあり…

甘さ控えめのこし餡が入った力餅。しっとりした餡と柔らかな餅とが織りなすハーモニーは大福より繊細。小ぶりなこともあって2つくらいすぐイケてしまう。口コミを見ても「これほどおいしいお餅は他所では中々お目にかかれない」とある。昔は「名物に美味いものなし」なんて格言もあったが今や「名物に美味いものあり」だ。
友人は力餅を販売している峠駅から送迎バスで約30分、標高1300㍍にある秘境の姥湯(うばゆ)温泉に泊まったとのこと。秘湯だけあって宿は一軒、桝形屋があるのみ。平日は一泊2食付きで15,950円とリーズナブル。クレジットカードは利用できないと公式サイトに載っており秘境感が良く分かる。
昔は駅弁やお茶、冷凍ミカンを長い停車時間に列車から降りて買うのが楽しみだった。ところが停車時間の短縮や売り子の高齢化に後継者不足もあって廃止・廃業が進み、今や駅売りを行っているのは全国でも峠駅のみだという。その峠駅も将来全長23㌖の新トンネルが開通すれば駅自体が消滅してしまう。
そんな話をしつつ英国好きの友とこの三十年で廃業した英国ブランドを挙げたらオースチンリードやチェスターバリーにアルフレッドサージェント、フォスター&サンやローラアシュレイにホワイトハウスコックスまで様々だ。人は当たり前だったものがなくなって初めて価値に気付くものだとつくづく思う。
By Jun@Room Style Store