リーバイスを買う | Room Style Store

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2025/09/16 10:13


リーバイスがアメリカ国内最後のバレンシア工場を閉鎖したのが2002年、月日の経つのがなんと早いことか。当時はついに来たか…と感じたものだ。1990年代後半はアメリカ製品が姿を消していった時代、バスのローファーやラルフのポロシャツ、LLビーンのフィールドコートなど次々とNIES製に置き換わった時代だ。

1998年、帰国直前の海外駐在先でアメリカのウェスタンショップから米国製ジーンズを取り寄せたのもアメリカ製があるうちに…という焦りからだった。勿論現地のリーバイスショップも覗いた。ある日、後のLVC(リーバイスビンテージクロージング)に連なるリーバイスビンテージの入荷を聞いて即買いしたのも懐かしい。

後で調べたら当時の日本国内価格より遥かに高値と知ったが不思議と後悔はしなかった。以来20年少しずつアメリカ製リーバイスを買い進めたが2017年のホワイトオーク工場廃業とリーバイスの代名詞コーンデニム終了で火が付いた。コロナ禍で窮地のジーンズショップからビンテージリーバイスをまとめ買いしたこともある。

ジーンズのオリジナルはリーバイス、日本製のデニムがいくら高品質と言われようがアメリカ製のリーバイスには元祖という強みがある。つい最近もフリマでアメリカ製リーバイスに出会い即決・即金、中一日で手元に届いたところだ。そこで今回は新着品を中心にリーバイスの魅力と我が家のストック状況を確認してみようと思う。

※写真は新着品のタグ

(1) リーバイスのストック
リーバイスのストックも今や12本、きりのいい1ダースある。一番古い1971年製造から最新の2019年製造まで全てセルビッジデニムを採用。生地は往年のコーンミルズからホワイトオーク産のコーンデニム、日本のカイハラまで様々だが自社工場時代も含め全てがアメリカ国内で生産されている。

(2) 新着リーバイス
ここで13本目のアメリカ製デニムが加わった。フラッシャーを見ると「プリシュランク」とある。洗いによる縮みを軽減したデニム地を採用していることから501ではない。14オンスとあるのでヘビーデニムではないにせよレギュラーオンスの中では結構ハリとコシのあるデニム生地のようだ。

(3) 551ZXX
新たに加わったのは復刻版の551ZXX。オリジナルは1961年に誕生、それ以前の1954年に発売した501ZXXはジッパーを初めて採用したが生地が洗濯によって縮むことでジッパーが不調をきたすなど問題が生じていた。そこでリーバイスが初の防縮加工を施した生地を採用した歴史的な一本にあたる。

(4) タグから探る
左は既に所有していたLVC551ZXXで2013年製造、右は新着のリーバイスビンテージ551ZXXで1998年製造。LVCは外部工場なのでトップボタン裏に4420の刻印が入る。一方右のリーバイスビンテージはリーバイスが自社工場を持っていた時代なのでトップボタン裏には三桁の555が打たれている。

(5) トップボタン裏
トップボタン裏の刻印を並べて撮影。4420は外部発注の為詳細は不明だがリーバイスマニア曰くカリフォルニアにある工場だとか…。一方新着品の555刻印は俄かリーバイスファンの自分でも知っているバレンシア工場。フランチャイズより直営という訳でもなかろうが外部発注より自社工場製の方が価値が高い。

(6) ジッパーの違い
551ZXXのZとはジッパーのこと。「前開きのジッパー」は当時新しもの好きな若者から熱烈な支持を集めたとか。LVC551ZXXはタロンのジッパーを採用、ただ当時はグリッパーやコンマ―のジッパーが多くタロンは少数派だったらしい。一方バレンシア工場製は無名だが形状は菱形グリッパーに近い。どちらも拘っているようだ。

(7) トップボタン
上がLVC版551ZXXのトップボタン。ややガンメタルに近い感じか。一方バレンシア工場製のトップボタンはブロンズ色が目立つ。60年代の551ZXXは銅ボタンを採用していたのでバレンシア工場製の方が再現度は高そうだ。トップボタン横のVステッチもバレンシア工場の方がオリジナルに近い。

(8) コインポケット比較
コインポケット周辺をLVC(上:2013年製)とバレンシア工場製(中:1998年)と60年代製リアルビンテージ551ZXXの3者で比べてみた図。ポケット縁のカーブやコインポケットの幅と大きさ、位置を比べてみると中央のバレンシア工場製の方が下のオリジナルに忠実なように見える。

(9) アーキュエットステッチ比較
バックポケットのアーキュエットステッチを比較してみた図。60年代のオリジナル551ZXXと比べる山が大き目?なのとバレンシア工場製(右側)は右肩上がりに見える。またデニムの色はLVCはやや白みがかっているのに対してバレンシア工場製の方はインディゴが濃く前面に出ている。

(10) ベルトループ
上のLVC版も下のバレンシア工場製も「オフセットループ」と呼ばれるセンターベルトループが中心からずれて縫われている。このあたりは両者とも目立つだけに忠実に再現したのだろう。ヒップの縫い合わせラインの上にベルトループを縫い付けるのは当時のミシンでは歩留まりが悪かったのかもしれない。

(12) 赤タブの違い
どちらも赤タブはビッグE。それも1953年から1966年まで見られたという両面・均等Vを再現したものが付けられている。上に載せたバレンシア工場製の赤タブは字体が太くてやや幅広、一方下に敷いたLVCの方は自体が細めで縦長…どちらかといえばLVCの方がオリジナルに近い感じか。

(13) セルビッジ比較
上はLVCの赤耳、下はバレンシア工場製の赤耳。縫い代を割って左右に開いた状態を見比べるとバレンシア製の方がオリジナルに似ている。耳部分に走る赤い糸もバレンシア工場製の方は淡いピンク色で本物に近いのに対してLVCの方は赤が目立つ。縫い代は1cm残すのが目安とするとLVCはかなり少ない。

(14) 新旧比較
左のLVCと右のバレンシア工場製ではウエストが1㌅違う。ワタリやすそ幅は微妙に違うがどちらを選んでもかなりスマートだ。労働着からファッションアイテムとしての地位を確立したモデルと言われる551ZXX、AI曰くスリムストレートでややテーパードしているのが特徴だけに復刻版のシルエットもモダンだ。

〜ストックから〜
(15) 66前期リーバイス
さてここからはリーバイスの在庫確認。写真は久々に屋根裏から出して陰干しした1971年製502ビッグEと1972年製502スモールe。フラッシャーやギャランティーが全て揃ったデッドストック品だ。フラッシャーの©1966から66前期に相当する。詳しくは当ブログ過去記事を参照されたい。

(16) Eかeか…
上がビッグEで下がスモールeの502。ここが大文字か小文字かで古着の値段も変わってくる。珍しいものほど価値が上がるのは車や時計、どんな世界でも共通だ。しかも現存しているタマ数や状態によっても変動する。一番価値があるのがデッドストック、しかもゴールデンサイズがその頂点に立つ。

(17) 赤ミミ時代
こちらはグッと時代が下がって1983年のリーバイス501。通称「赤耳」と呼ばれるセルビッジデニム最終期のものだ。「ビンテージリーバイスは1970年以前のものを指す。赤耳はビンテージリーバイスに非ず」という意見もある。とはいえ既に製造から43年経過、あと7年で50年を迎えれば評価も変わろう。

(18) リーバイスジャパン発足
1982年設立のリーバイ・ストラウス・ジャパンによって輸入された初期の501。日本語表記のサイズパッチや小型のリーフレットが付属するなど日本らしいきめ細かさが感じられる。サイズは31㌅と34㌅のゴールデンサイズ、日本市場におけるリーバイスの歴史を知る貴重な資料としての価値もこの2本にはある。

(19) LVCアメリカ製①
リーバイス自前のバレンシア工場閉鎖後に作られたアメリカ製復刻ジーンズ。外部工場発注の4420刻印ものだ。奥が1933モデルでシンチバックやサスペンダーボタン付き、手前が1944年大戦モデルでポケットのペンキステッチが特徴。2017年廃業のホワイトオークコーンデニムを使用している点が価値を高めている。

(20) LVCアメリカ製②
こちらも外部発注4420刻印のLVC1947モデルと1978モデル。本物でいえばビッグEと66後期にあたる。自社工場ではなくなったがアメリカ縫製かつアメリカ最後のホワイトオーク工場製セルビッジデニムを使ったオールアメリカンリーバイスということで二度と手に入らない希少さがある。

(21) 最後のオールアメリカン
こちらが最後のオールアメリカンリーバイス。2015年末の製造だがその2年後にホワイトオーク工場が廃業したことでオールアメリカンリーバイスは終焉を迎えた。これ以降もアメリカ製のリーバイスプレミアムが発売されたが肝心のデニムが日本製やトルコ製に置き換えられたため希少性は今一つといったところか。

因みに日本でジーンズが盛んになったのは1970年代、当時はロールアップして履く発想などなく裾の直しが当たり前だった。日本製ジーンズの草分け「ボブソン」のサイトを見るとジーンズの裾上げについて①ロールアップしたくない②二折り以上しないとちょうどいい丈にならない③海外製の股下が長いデニムは裾のお直しをすべきと指摘している。

一方リーバイスマニアの間ではL36と長いレングスでも裾上げはしないという声が多い。ところがL30で丁度という人の場合は思い切って長めのL36を選んでL30付近で裾上げすると程よいテーパードになるらしい。あとは裾にアタリが出るようユニオンスペシャル、それも初期型の古いミシンで裾上げすると綺麗なうねりとアタリが出るそうだ。

最近はビスポークジーンズもあるが元々は労働着、既成を買って直して履くのがジーンズの醍醐味だと思う。1970年代ジーンズブームの頃は親に「不良が履くものだ」と反対され「ジーンズを履いている」と近所で噂された。そんな時代を知るだけにデニム地から仕立てる誂えジーンズよりも店に並ぶ出来合えのジーンズに心惹かれるのも無理はない。

By Jun@Room Style Store